質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第一一七号

新型コロナウイルスが出入国管理行政及び「収容・送還に関する専門部会」に与える影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年五月十九日

打越 さく良


       参議院議長 山東 昭子 殿



   新型コロナウイルスが出入国管理行政及び「収容・送還に関する専門部会」に与える影響に関する質問主意書

 「第七次出入国管理政策懇談会における「収容・送還に関する専門部会」の開催について」(令和元年十月。出入国在留管理庁。)において、「収容・送還に関する専門部会」設置の趣旨について、次のように書かれている。
 「かねてより退去強制令書の発付を受けたにもかかわらず、様々な理由により、送還を忌避する者が相当数存在しており、実務上、迅速な送還の実現に対する大きな障害となっている。(中略)送還忌避者の増加は、我が国にとって好ましからざる外国人を強制的に国外に退去させるという退去強制制度の趣旨を没却するばかりか、退去強制を受ける者の収容の長期化の主要な要因ともなっている。そして、送還忌避者の増加や収容の長期化が適正な出入国管理行政を害するものであることは明らかであることから、これらを防止する方策やその間の収容の在り方を検討することは、出入国管理行政にとって喫緊の課題である。」
 しかし、新型コロナウイルス禍を迎えたことにより、我が国の出入国管理行政を取り巻く情勢は、大きく変わっている。そこで、前述の専門部会設置の趣旨に鑑み、以下、質問する。

一 現在、多くの国際航空便が停止されていることから、退去強制令書の発付を受けた者の意思にかかわらず、退去強制令書に基づく送還執行は、困難となっている。現時点で退去強制令書に基づく送還執行は不可能として停止すべきと考えるが政府の見解は如何か。

二 新型コロナウイルス禍が収束し、各国に対する送還執行が可能となる時期について、政府の予測はあるか。あれば明らかにされたい。

三 出入国在留管理庁の収容施設は、職員、被収容者を問わず、ひとたび新型コロナウイルス感染者が発生すると、集団感染の防止が困難な環境であることから、必要性の低い収容をすべきでなく、被収容者数を最低限に抑制するべき状況にあると考えるが、政府の見解は如何か。

四 入管収容施設被収容者の合計人数及び収容施設別人数について、令和元年十月末日時点と、令和二年四月末日時点の数値を明らかにされたい。

五 収容施設別の、令和二年三月及び四月の新規収容者数(移収を受け入れた者を含む人数と含まない人数といずれでもよいが、いずれかに統一した上、いずれであるかを明示されたい。)をそれぞれ明らかにされたい。

六 「入管施設における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル」(令和二年五月一日。出入国在留管理庁。以下「対策マニュアル」という。)は、収容施設内における密集等の回避及び、感染発生時の収容余力の確保のための方策の一つとして、特に仮放免をすることが適当でないと認められる場合(既に感染が確認されている場合及び感染が疑われる場合を含む。)でない限り、仮放免を積極的に活用することとしている。

1 収容施設別(統計がない場合は総計)の、令和二年三月及び四月の新規被退令仮放免者数(即日仮放免を除く。即日仮放免数を除いた許可数の統計がない場合は、除かない人数を示されたい。)をそれぞれ明らかにされたい。また、そのうち、職権仮放免の数と、更に職権仮放免を受けた者のうち過去に有罪判決を受けたことがある者の数も明らかにされたい。

2 「収容・送還に関する専門部会」の議論は、対策マニュアルを踏まえていないと考えるがどうか。

七 「収容・送還に関する専門部会」第一回会合の資料とされた「送還忌避者の実態について」(令和元年十月一日付)の二ページに「我が国で罪を犯し刑事罰を科された者や退去強制処分歴又は仮放免取消歴を有する者を仮放免することは、我が国の安全・安心を確保する観点から認めるべきでなく」との記載があったところ、「送還忌避者の実態について」(令和二年三月二十七日付)では削除され、さらに、令和二年四月、五月に、我が国で刑事罰を科された者や仮放免取消歴を有する者が複数、仮放免許可されている。現時点で政府は「我が国で罪を犯し刑事罰を科された者や退去強制処分歴又は仮放免取消歴を有する者を仮放免することは、我が国の安全・安心を確保する観点から認めるべきでな」いとの見解を取っているか、明らかにされたい。

八 国際的な人の移動の減少に伴って、難民認定申請数は減少していると推測される。昨年と今年の、三月及び四月の難民認定申請数をそれぞれ明らかにされたい。全国総計未集計の場合は、各地方局で把握されている受理数だけでも明らかにされたい。

九 出入国在留管理庁が「収容・送還に関する専門部会」の議論に供した統計や資料は令和元年十二月末日以前の状況に関するものであって現状に齟齬するのではないか。

十 そもそも前述の「収容・送還に関する専門部会」の設置の趣旨が前提としていた環境は、現在では既に存在しないと考えるが、政府の見解は如何か。

  右質問する。