質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第八〇号

コンセッション事業の特徴と課題に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年三月十九日

吉田 忠智


       参議院議長 山東 昭子 殿



   コンセッション事業の特徴と課題に関する質問主意書

 私が令和元年十月二十九日に提出した「コンセッション事業の特徴と課題に関する質問主意書」(第二百回国会質問第四三号)に対する答弁(内閣参質二〇〇第四三号。以下「前回答弁書」という。)について、コンセッション方式によるPFI事業(以下「コンセッション事業」という。)が、これまでの日本の行政のあり方を大きく変えるものだという認識と視点に立てば、「公共施設等運営権及び公共施設等運営事業に関するガイドライン」(以下「同ガイドライン」という。)及びこれまでの地域プラットフォーム、シンポジウムには、多くの問題があると考えるため、以下改めて質問する。

一 前回答弁書における同ガイドラインには、「住民、地方公共団体の職員等に対し、コンセッション事業の概要、特徴等を説明・周知する」旨の記載はあるが、実態としては、これまでのシンポジウムあるいはセミナーでは、政府や関係知事、コンサルタント事業者の一方的な説明にとどまっている。
 どういうことが現場で起きるのか、いくつかの自治体において調査したところ、コンセッション事業の提案前後において、関係住民の意見や要望はそもそも聞かれておらず、従って関係住民の意見や要望がコンセッション事業に反映されているとは到底言えないことが分かった。
 また、コンセッション事業に従事する(例えばマーケットサウンディングを行っている)職員(公務員)に聞いても、その職員ですら、コンセッション事業の特徴と基礎的知識について理解していないことが多いことが判明した。
 また、従来のインフラ事業とコンセッション事業との関係で今後どのように変わるのか、あるいは従来のアウトソーシング(外注化)、委託化一般とコンセッション事業とは、どのように違うのか、どのように共通しているのかについて、コンセッション事業に従事する職員ですら、関係当局・管理職から十分に知らされていない。
 同ガイドラインで強調している「住民、地方公共団体の職員等に対し・・・・周知する」ことと、その実態とはかけ離れており、はなはだ問題があると思われるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 「コンセッション事業の導入に伴う労働者の労働条件の変化に関する質問主意書」(第二百回国会質問第五三号)においても指摘したが、コンセッション事業に従事する職員の雇用問題について全く触れられないまま計画が進められている。職員労働組合への対応にも関係するが、当該職員に対してこれまでの事業とどのように異なるのかその特徴と課題についての説明と誠実さが欠けていないか、政府の見解を明らかにされたい。

三 全体的に言えることは、これまでのアウトソーシングは、主に「管理部門」が「委託される」というものであったが、コンセッション事業の場合、たとえ公会計で同じ「委託費」の中であっても、その性格と目的は大きく異なる。
 従来の「委託」とは、損益勘定の範囲の費用であるのに対し、コンセッション事業の場合、資本勘定の範囲の費用となる。「当初に行った投資の回収という動機付けで民間企業に基本的に責任を持たせ、金融機関からの経営監視を活用する」ことが特徴の一つとなる。
 また、このため、従来、公務員が従事していた事業に「退職派遣」という形で非公務員となって継続して従事することになる。
 その他、コンセッション事業が直接、「投資」として位置付けられていることを裏付けるものとしては、国土交通省が発表した「日本再興戦略二〇一六」がある。その中で、「第二 具体的施策」の「Ⅱ 生産性革命を実現する規制・制度改革」の中の「2―3.公的サービス・資産の民間開放(PPP/PFIの活用拡大等)」において、「十年間(二〇一三年度~二〇二二年度)でPPP/PFIの事業規模を二十一兆円に拡大する」とあり、「新たに講ずべき具体的施策」として、「大阪市の水道事業、・・・北海道の複数空港などの先行案件が克服すべき課題に着実に対処する」などと具体的に明記されており、その後施行される予定となっている。
 このように、コンセッション事業あるいは公共の資産・税金が「投資」のために直接的に利用されることについて、本来の公共サービスのあり方として課題があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。