質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第七二号

系統利用者である発電側にキロワット単位で基本料金の負担を求める発電側基本料金に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年三月九日

小沼 巧


       参議院議長 山東 昭子 殿



   系統利用者である発電側にキロワット単位で基本料金の負担を求める発電側基本料金に関する質問主意書

 電力・ガス取引監視等委員会は、経済産業大臣に対し、平成三十年六月二十七日、電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第六十六条の十四第一項の規定に基づき、「送配電網の維持・運用費用の負担の在り方検討ワーキング・グループ」(以下「WG」という。)の中間とりまとめを踏まえた託送料金制度見直しに関する建議を行った。同建議では、託送料金制度の見直しに係る具体的な対応策の一つとして、送配電関連費用の利用者間の負担に関し、送配電関連費用の一部について、その費用に与える影響(受益)に応じ、系統利用者である発電側にもキロワット単位で基本料金の負担を求めること(発電側基本料金の導入)について方向性が提示されている。
 しかしながら、キロワット単位で基本料金の負担を求める仕組みは、従来型の電源を想定したものであり、設備利用率は低くとも、脱炭素性能に優れた新しい技術である再生可能エネルギー(以下「再エネ」という。)発電設備の特性に対応しておらず、再エネの主力電源化を目指す政府の方針とも異なるものである。さらには、発電側と需要側の双方に対して合理的なインセンティブを促すものであったとしても、電気の使用者(以下「需要家」という。)の視点を著しく欠いた制度である。
 こうした中、第五次エネルギー基本計画(平成三十年七月三日閣議決定)において、発電側基本料金の導入の決定がなされ、その後の検討において、二〇二三年度の導入を目指すとの方向性が示されている。導入に当たり、一般送配電事業者におけるシステム開発や発電事業者と小売電気事業者の間の既存契約の見直し等に要する期間等を考慮すると、二〇二〇年度にもシステム開発に着手することが見込まれていることから、その在り方等について、以下質問する。

一 発電側基本料金の導入は既定方針である旨の説明がなされているが、発電側基本料金の導入を決定した法的プロセスについて説明されたい。

二 発電側基本料金の検討を行ったWGに、需要家の意見を反映し得る消費者団体等は参加していない。WGが中間とりまとめを行うに当たり、需要家の意見はどのように反映されたのか明らかにされたい。

三 RE100に参加する企業(事業で使用する電力の全てを再エネにより発電された電力にする事に取り組んでいる企業)からは、太陽光や風力発電など変動性再エネは、発電出力あたり一律課金とされた場合には、他の電源種別との比較において価格競争力が大きく劣後すること、再エネを使いたいという企業の費用が増加する可能性があること、が指摘されているが、これらの指摘に対する政府の見解を明らかにされたい。

四 発電側基本料金の導入の時期や負担の在り方について、システム開発や既存契約の見直し等に要する期間も考慮しつつ、需要家の意見を反映する場を設けた上で、慎重に進める必要があると思料するが、政府の見解を明らかにされたい。

五 キロワット単位の基本料金として課金する論拠として、「電源起因による送配電関連費用の増大を抑制するためには、電源の設備利用率の向上等を通じて送配電網のより効率的な利用を促すこと」が挙げられているが、キロワット単位で課金することが、なぜ電源の設備利用率の向上につながるのか明らかにされたい。また、電源起因による送配電関連費用の抑制を図る手法として、発電側基本料金以外の手法を評価したのかどうか、評価した場合はその結果について、明らかにされたい。

六 キロワット単位での発電側基本料金の導入を決定するに際して、諸外国における送配電設備の利用に係る発電側の費用負担制度(料金体系)の現状と制度設計に係る考え方についてどのように把握し、どのような評価がなされたのかを明らかにされたい。

七 配電設備の利用に係る発電側の費用負担制度を設けている国の中には、キロワットアワー単位での料金体系としている国も存在することから、この制度を実施する上で、キロワット単位での費用負担は必ずしも不可避的な技術的要請ではないと思料するが、政府として、キロワット単位での費用負担があたかも制度設計上の前提であるかのように発電側基本料金を導入しようとしている理由と根拠について明らかにされたい。

八 キロワット単位での発電側基本料金の導入は、既存電源による発電事業者と再エネ発電事業者との間で設備利用率に大きな差がある現状では、再エネ発電事業者に不公平な制度となりかねないと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

九 二〇一七年三月、電力広域的運営推進機関により、全国大での広域連系系統の整備及び更新に関する方向性を整理した「広域系統長期方針」が公表されているところ、政府として、既存電力系統及び新規電力系統に係る運営費用及び資本的支出の額はそれぞれどの程度に及ぶものと認識しているかについて明らかにされたい。

十 近年の台風等の自然災害による停電の発生を受けて、電力系統に係るレジリエンス強化の要請は強まっていると考えるが、こうした観点から、電力系統の整備に対していかなる予算措置を講じているか、講じていない場合にはその理由について明らかにされたい。

十一 発電側基本料金の導入により、再エネが他の電源との比較で価格競争力が劣後することとなれば、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法(平成二十三年法律第百八号)に基づく買取期間の終了後に、再エネ発電事業者の事業継続や再投資にマイナスの影響が懸念されるが、政府の見解を明らかにされたい。

十二 再エネを含めた需要家側に置かれた分散型リソースを、予測技術、IoT、AI等を活用した高度なエネルギーマネジメント技術により遠隔・統合制御し、分散型リソースがあたかも一つの発電所のような働きをするバーチャルパワープラント(VPP)や、需要家のエネルギーリソースから得られた電力を別の需要家に受け渡す電力の個人取引を行うモデル(P2P)の事業展開が期待されている。第二百一回国会に内閣から提出されている「強靱かつ持続可能な電気供給体制の確立を図るための電気事業法等の一部を改正する法律案」(閣法第二六号)には、こうした新たなビジネスモデルに対応した改正内容が盛り込まれているものと承知している。VPPやP2Pについて、上位系統を介さず低圧部門から低圧部門へ託送が行われる場合の発電側基本料金の適用に関して政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。