質問主意書

第201回国会(常会)

質問主意書


質問第三九号

ケアラー支援についての国の方針に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和二年二月十日

牧山 ひろえ


       参議院議長 山東 昭子 殿



   ケアラー支援についての国の方針に関する質問主意書

 我が国の介護において、介護を受ける人の身近にいて無償でケアを行っている家族等の介護者「ケアラー」の果たす役割は大きい。それにもかかわらず、ケアラーに対する支援は不十分であり、一般社団法人日本ケアラー連盟の調査によると、ケアラーの約六割は週に二十時間以上、四人に一人は五十時間以上介護に時間を費やしている。そのため約三割の人は、自分のために自由に使える時間が一日に三時間もない。またケアラーの半数以上が身体の不調を訴え、四人に一人以上が心の不調をかかえているとの調査結果も出ている。
 この負担が背景となって生じた、介護殺人、介護自殺、介護心中、高齢者虐待等は、枚挙にいとまがなく、今や社会問題とさえなっている。
 以上の状況を前提に以下、質問する。

一 介護保険は「介護の社会化」をその目的の一つとして導入された。しかし、介護保険サービスが家族介護者の負担を軽減する効果は現状では限定的と言わざるを得ない。現状では、公的な介護保険サービスの不十分さのために、多くの介護家族が自身の健康や就業を犠牲にしながら、介護を継続せざるを得ない。
 このような状況を抜本的に改善するためには、家族介護を代替するサービスが、家庭の外側に十分整備されなければならないと考えるが、この認識に対する政府の見解を明らかにされたい。

二 ケアラー支援の必要性は国際的にも共有されており、支援の必要性に対応するために、ケアラー支援の先進国といわれるイギリスやオーストラリアだけではなく、アメリカ、ドイツ、北欧諸国、台湾などでも、ケアラー支援の法律が施行されている。
 このような国際的な趨勢や、日本におけるケアラーの状況に鑑み、ケアラーの権利の擁護や強化を明文化することの必要性について、政府はどのように考えているか。

三 ケアによって仕事を辞めざるを得なかったり、社会とのかかわりが減り、社会的・心理的孤立を深めているケアラーも少なくない。解決の前提として、ケアラー及び家族介護の実態を把握する公的な全国調査を実施すべきではないか。

四 今後、ケアラー関係の施策を実施する場合、ケアラーの実態と希望に即したものにするため、制度設計の立案過程へのケアラー自身の参加を積極的に進めるべきと考えるが、政府の見解は如何か。

五 現在のケアラーを取り巻く問題の根幹として、多様なケアラーへの支援の必要性についての社会の理解が不十分なのではないかと思われる。

1 ケアラー支援の必要性についての理解と周知は十分であると、政府は認識しているか。

2 ケアラー支援についての地域や職場の理解、行政や専門職の理解を深め、支え合う地域社会の再構築のために、より充実した周知や広報を展開すべきと考えるが、政府の見解は如何か。

  右質問する。