質問主意書

第200回国会(臨時会)

答弁書


内閣参質二〇〇第一二一号
  令和元年十二月二十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 山東 昭子 殿

参議院議員小西洋之君提出安倍総理の「人種平等」に関する所信表明演説が歴史の曲解及び捏造であることに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員小西洋之君提出安倍総理の「人種平等」に関する所信表明演説が歴史の曲解及び捏造であることに関する質問に対する答弁書

一について

 御指摘のとおりである。

二から四までについて

 お尋ねの「日本の提案」については、大正八年二月十三日に牧野伸顕日本全権代表が、国際連盟規約に「The equality of nations being a basic principle of the League of Nations, the High Contracting Parties agree to accord, as soon as possible, to all alien nationals of States members of the League equal and just treatment in every respect, making no distinction, either in law or in fact, on account of their race or nationality」との文言の追加を提案し、また、同年四月十一日に同規約の前文に「by the endorsement of the principle of equality of nations and just treatment of their nationals」との文言の追加を提案したと認識しており、これらの提案の文言から、人種平等を掲げたと評価している。また、「「各国の強い反対にさらされ」た理由」に関するお尋ねについて、政府として断定的にお答えすることは困難である。

五及び六について

 安倍内閣の歴史認識については、平成二十七年八月十四日の内閣総理大臣談話において示されているとおりである。その上で、個別具体的な歴史的出来事に関する評価については、歴史家の議論に委ねるべきと考える。

七について

 お尋ねの「国際人権規約を始め国際社会の基本原則」とは、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第六号。以下「社会権規約」という。)、市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和五十四年条約第七号。以下「自由権規約」という。)等に含まれる人種平等に関する内容を指し、例えば、社会権規約第二条2においては「この規約の締約国は、この規約に規定する権利が人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位によるいかなる差別もなしに行使されることを保障することを約束する」と、自由権規約第二条1においては「この規約の各締約国は、その領域内にあり、かつ、その管轄の下にあるすべての個人に対し、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、出生又は他の地位等によるいかなる差別もなしにこの規約において認められる権利を尊重し及び確保することを約束する」と規定されている。

八について

 御指摘の「パリ講和会議」における提案の内容については二から四までについてでお答えしたとおりであり、また、「国際人権規約を始め国際社会の基本原則」については七についてでお答えしたとおりであるが、いずれについても、人種平等に関する内容を含んでいると考える。

九について

 お尋ねについて網羅的にお答えすることは困難であるが、昭和二十年に署名された国際連合憲章(昭和三十一年条約第二十六号)第一条3は、国際連合の目的の一つとして、「人種、性、言語又は宗教による差別なくすべての者のために人権及び基本的自由を尊重するように助長奨励することについて、国際協力を達成すること」と規定している。また、昭和二十三年に国際連合総会において採択された世界人権宣言では、「すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳及び権利について平等である」と宣明している。さらに、昭和四十年にあらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(平成七年条約第二十六号)が、昭和四十一年に社会権規約及び自由権規約が、同総会においてそれぞれ採択された。

十及び十二について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、「「国際人権規約を始め国際社会の基本原則」の形成」及び「当該条項の制定」に対し、御指摘の「日本が「人種平等」を掲げたこと」及び「「日本が掲げた大いなる理想」なるもの」が具体的にどのような影響を及ぼしたかについて、政府として断定的にお答えすることは困難である。

十一について

 お尋ねについては、安倍内閣総理大臣が、令和元年十月四日の所信表明演説において、「一千万人もの戦死者を出した悲惨な戦争を経て、どういう世界を創っていくのか。新しい時代に向けた理想、未来を見据えた新しい原則として、日本は「人種平等」を掲げました。」と述べたとおりである。

十三について

 お尋ねの趣旨が明らかではなく、お答えすることは困難である。なお、国際協調主義については、憲法前文第二段及び第三段がその立場に立つことを宣明したものであり、憲法第九十八条第二項が我が国が締結した条約及び確立された国際法規の遵守義務を規定しているのも、その現れの一つであると解している。

十四について

 お尋ねの趣旨が必ずしも明らかではないが、御指摘の「日本が提案した事項」は、二から四までについてでお答えしたとおりであり、当該提案の文言からは、「国際連盟加盟国内における日本人への差別の解消のみを企図したもの」とは必ずしも確認できないと考える。

十五について

 御指摘の「所信表明演説」は、内閣として閣議決定する過程で、文案が確定したものである。
 お尋ねの「このような内容を当該演説で行った目的や意図」については、安倍内閣総理大臣が、令和元年十月四日の所信表明演説において、「今を生きる私たちもまた、令和の新しい時代、その先の未来を見据えながら、この国の目指す形、その理想をしっかりと掲げるべき時です。現状に甘んずることなく、未来を見据えながら、教育、働き方、社会保障、我が国の社会システム全般を改革していく。令和の時代の新しい国創りを、皆さん、共に、進めていこうではありませんか。」と述べたとおりである。