質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一〇九号

学校歯科検診で指摘された歯列・咬合異常を費用負担の心配なく治療できるような保険診療・公費支援の充実に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十二月六日

田村 智子   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   学校歯科検診で指摘された歯列・咬合異常を費用負担の心配なく治療できるような保険診療・公費支援の充実に関する質問主意書

 歯列・咬合異常は小児によく見られる疾患で、学校保健調査の結果を見ると学校検診で要診断と指摘される割合は四%程度である。これはぜんそく、アトピー性皮膚炎より多い。一方で要診断、治療指示の文書を受けて歯科医療機関を受診しても、歯科矯正をはじめとして検査や治療法のほとんどが保険適用されておらず、自由診療となり高額の負担を強いられるケースが多い。また、高額の負担を懸念して受診しないケースも多く、実際、兵庫県保険医協会の調査では学校検診で要受診とされた方の受診割合を診療科別で見ると歯科が顕著に低く、歯列・咬合異常の場合はさらに受診割合が低い。
 厚生労働省は歯列・咬合異常の治療は審美目的の治療との区分が難しいことから、保険診療の範囲拡大に慎重な姿勢を示している。しかし、発達途上の子どもに限れば口腔機能の異常であり、摂食や発音の障害を伴うもので審美目的の治療とは考えにくい。永久歯にはえかわる時期に行うことがその後の口腔機能の発達にとって大切であり、永久歯がはえてくる時期に歯列・咬合異常を治療することは将来の虫歯や疾病を予防することにもつながるという研究もある。
 生涯にわたる健康の保持増進、また健康格差の是正という立場から、せめて子どもの歯列・咬合異常について保険診療で必要な治療ができるよう見直しをすべきである。この立場から以下質問する。

一 歯列・咬合異常は永久歯の萌出直後など咬合関係が確立していない時期であれば本格的な歯科矯正を行わなくても、口腔機能の訓練等によって改善するケースもあることを、多くの小児歯科医が認めている。先の診療報酬改定で歯列・咬合異常など小児の口腔機能発達不全症に対する医学的管理を行うために歯科疾患管理料の加算として小児口腔機能管理加算が創設された。しかし、算定回数が月に一回で点数も低く、加算であるために算定日が限られ、口腔機能の検査や訓練、指導の評価は事実上行われていないなど必要な治療を行うためには不十分と指摘されている。歯列・咬合異常など小児の口腔機能発達不全症の治療を促進するために、前記の指摘を踏まえた見直しを検討する必要があると思うがどうか。

二 小児口腔機能管理加算の要件である提供文書に記載する「歯の萌出に遅れがある」などの文言は口腔機能の発達の遅れが強調されているため、歯科医師が患者や保護者の気持ちを傷つけることを懸念して文書を提供することを躊躇し、その結果、算定することが難しくなっているとの声がある。これらの声に応えて提供文書の様式の見直しや、同趣旨であれば違う文言を認めるなど柔軟化が必要ではないか。

三 口腔機能の訓練等によっても歯列・咬合異常が十分に改善をせず、子どもが歯列矯正を目的として受診する場合、現状では保険診療で歯列矯正治療ができる疾患の範囲が狭いことから、初診から保険診療ではなく自費診療を余儀なくされる。学校検診で歯列・咬合異常と指摘された場合に、費用の心配が無く治療を受けられるように保険適用の範囲の拡大をすべきではないか。少なくとも歯列矯正が必要かどうか方針を立てる段階から自費診療を余儀なくされる現状について、学校歯科検診で異常を指摘された場合には公費支援を行うようにするなど、改善が必要と考えるがどうか。

  右質問する。