第200回国会(臨時会)
質問第八七号 肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和元年十二月三日 熊谷 裕人
参議院議長 山東 昭子 殿 肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業に関する質問主意書 平成三十年十二月から、B型・C型肝炎ウイルスに起因する肝がん・重度肝硬変患者の特徴を踏まえ、患者の医療費の負担の軽減を図り、患者からの臨床データを収集し、肝がん・重度肝硬変の予後の改善や生活の質の向上、肝がんの再発の抑制などを目指した、肝がん・重度肝硬変治療にかかるガイドラインの作成など、肝がん・重度肝硬変の治療研究を促進するための事業(以下「研究促進事業」という。)が行われている。 厚生労働省のホームページでは、研究促進事業の目的は「B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスによる肝がん・重度肝硬変の患者の医療費の自己負担軽減を図りつつ、最適な治療を選択できるようにするための研究を促進する仕組みを構築すること」であると示されており、過去一年間で自己負担額が一定額を超えた入院について、四回目以降は入院費の自己負担額が最大で月額一万円となり、超過分は国と都道府県が半分ずつ負担する制度となっている。 国は平成二十八年度に、高額な医療費の負担額の上限を減らす別の制度を参考に研究促進事業の制度設計を行い、平成三十年度に約十億円、平成三十一年度に約十四億円の予算をそれぞれ計上したと承知している。 しかしながら、朝日新聞の報じるところでは、実際の助成の申請件数は想定を大きく下回っており、平成三十年十二月から令和元年八月までの助成の申請件数は三百二十件と、国の想定の一%に満たないとの指摘がなされている。 帝京大学の田中篤教授は「治療方法が大きく変わり、制度を設計した際と現状と合わなくなっている。今は年に四回以上も入院する人はそういない」と指摘する。研究促進事業の制度設計をした当時は、体内の肝炎ウイルスを排除するインターフェロンの注射が肝炎治療の中心で、入院治療する場合も多く、また、インターフェロンでは肝炎ウイルスを十分に排除できないこともあり、改めて注射したり、症状が進行し入退院を繰り返したりする事例が見られたという。 現在、肝炎治療の主流は飲み薬であり、インターフェロンよりも効果が高いとの指摘がある。このため、研究促進事業の制度設計が実際の医療とかい離しているとの疑念を持たざるを得ない。 右を踏まえて、以下質問する。 一 研究促進事業において、過去五年間の想定された助成の申請件数、実際の助成の申請件数をそれぞれ示されたい。 二 前記一に関連して、想定された申請件数に対する実際の申請件数の割合はどの程度か。 三 現在、研究促進事業の助成対象になる疾病の患者数は概算でどの程度なのか。政府の把握しているところを示されたい。 四 前記のとおり専門家も指摘するように、研究促進事業の制度設計をした当時から肝炎ウイルスの治療方法が変化していることを踏まえると、現行の制度は不適当であり、早急に改善すべきではないか。また、現行の制度を改善するとすれば、いつ頃までに行うべきだと考えているのか。 五 現在、過去一年間で自己負担額が一定額を超えた入院について、四回目以降は入院費の自己負担額は最大で月額一万円とされているが、インターフェロンの注射が肝炎ウイルスの主たる治療方法ではなくなっている現状を踏まえると、この「四回目以降」という条件を緩和し、「一回目以降」ないしは「二回目以降」にすべきではないか。 六 研究促進事業では、助成を受けるためには全国に約一千三百ある都道府県の指定する医療機関で入院する必要があると承知しているが、指定外の医療機関で治療を行った場合にも助成を受けられるようにすべきではないか。 右質問する。 |