質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八〇号

韓国国会議長による徴用工問題の解決案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十一月二十九日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   韓国国会議長による徴用工問題の解決案に関する質問主意書

 本年十一月二十七日、韓国の中央日報の電子版は、文喜相韓国国会議長による、徴用工問題の解決のため日韓両国の企業と国民による寄付で基金を設立し、同基金が日本企業の徴用被害者に対する賠償金を肩代わりするとのいわゆる「文喜相案」(以下「文喜相案」という。)に安倍総理が共感を示し、秘書官らに韓国との情報共有を指示したことなど、毎日新聞の古賀攻専門編集委員が書いたコラム「日韓の二本のパイプ」の内容を報じた。
 右の中央日報の記事によると、同月二十日、安倍総理は、総理大臣官邸を訪問した日韓議員連盟幹事長の河村建夫衆議院議員から、文喜相案についての説明を聞いたとされる。文議長は同案を実現するための関連特別法を韓国の国会に提出する意向とのことである。文喜相案についての説明を聞いた安倍総理は「(差し押さえられた日本企業の資産の現金化である)強制執行以前に法整備があればよい」と述べ、秘書官らに駐日韓国大使館との情報共有を密にすることを指示したという。
 また、同月二十二日、河村議員は中央日報のインタビューで「南官杓駐日韓国大使と安倍総理の側近の今井尚哉補佐官兼首席秘書官が意思疎通を続けている」との旨を明らかにしたという。
 一方、毎日新聞のコラムはGSOMIA終了延期発表後の同月二十五日、河村議員と李洛淵韓国首相が行ったとされる電話会談において、「日本語の達者な李首相が「日本の言い方は冷たい」と言うので、河村議員は「もう少し配慮するよう伝えましょう」と応じた」ことを紹介しているという。
 右を踏まえて、以下質問する。

一 十一月二十日の報道各社の首相動静では、午後三時二十五分から河村議員と会った旨が報じられているが、安倍総理と河村議員が面談したことは事実か。また、そこでは右の中央日報の記事が指摘するように、文喜相案が説明されたのか。

二 前記一に関連して、安倍総理は「(差し押さえられた日本企業の資産の現金化である)強制執行以前に法整備(文喜相案を実現するための法案の成立)があればよい」との認識であるのか。

三 十一月二十七日、菅官房長官は記者会見で「他国の立法府における議論や動向についてはコメントを控える」と発言し、文喜相案について否定も肯定もしていないと解されるが、河村議員の「南官杓駐日韓国大使と安倍総理の側近の今井尚哉補佐官兼首席秘書官が意思疎通を続けている」との旨の発言に示されるように、安倍総理の意向は今井補佐官を通じて駐日韓国大使経由で韓国政府に伝えられているという理解でよいか。

四 文喜相案は日韓両国の企業と国民による寄付で基金を設立するもので、韓国国内の報道を見るに、日本企業や日本国民が自発的に寄付を行うものであると韓国国民には解されている。日本政府は同基金に対して一切の寄付を行わないという理解でよいか。また、日本企業や日本国民にも寄付を呼びかけることは一切ないという理解でよいか。

五 報道によると、十一月五日、来日した文議長は、東京都新宿区の早稲田大学で講演し、徴用工問題に関し、日韓両国の企業と国民による寄付と、慰安婦問題をめぐる日韓合意に基づいて日本政府が「和解・癒やし財団」に拠出した十億円のうち、使われなかった残金を財源に基金を設立し、徴用工訴訟の原告に「慰謝料」を払う法案をまとめたと表明した。日本政府が右の財団に拠出したものの、右の財団の解散により使われなかった残金があるなら、本来はいったん精算し、残金については返還を求めるべきではないか。また、日本政府が拠出した十億円のうち、使われなかった残金はどの程度か。

  右質問する。