質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六七号

国務大臣のやじに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十一月二十一日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   国務大臣のやじに関する質問主意書

 昨今、国会審議で安倍総理が閣僚席から何度もやじを飛ばし、問題となっている。
 やじは議長の許可を得ない私語であって、議長が、不規則発言としてこれを制止するものとされている。他方、やじは議会の華とも言われ、良いやじは議会政治の活性化に寄与する一面もある。良いやじはユーモアの精神から生まれるとの指摘もあり、議院規則、典礼に通じていること、冷静でありつつ、決してやり過ぎないことなどが本来の意味のやじの要件とされる。議会やじ史に残る代表例としてしばしば引用されるのは、大正九年の衆議院本会議における三木武吉議員の「ダルマは九年」とのやじである。このやじは高橋是清大蔵大臣へのユーモアの精神に富んだ寸鉄人を刺すものであり、また、同議員が一議員として行ったものであった。
 日本国憲法第五十一条では、「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」と示されている。
 本条は、「国会における言論の自由を最大限に保障し、国会議員がその職務を行うに当ってその発言について少しでも制約されることないようにしようとの趣旨」の規定であるが、「本条の特典は、もっぱら両議院の議員に対してのみみとめられるもの」であり、「議員以外の者にはおよばないと見るを正当とする」(宮澤俊義著、芦部信喜補訂「全訂 日本国憲法」、日本評論社)と解されている。
 早稲田大学の長谷部恭男教授は、「国会議員の国会での発言については、憲法で免責特権が認められています。全国民の代表として幅広く自由に議論を展開する必要があるからです。しかし、国務大臣は免責されないというのが憲法学界の通説です。国務大臣は政策遂行について説明責任を果たすために国会で答弁するのであって、一議員と同じ立場で自由に発言することは到底認められません」(朝日新聞、平成二十七年三月二十九日)との認識を示している。
 右を踏まえて、以下質問する。

一 国務大臣には、日本国憲法第五十一条でいう国会での発言の免責特権は必ずしも認められていないという理解でよいか。

二 日本国憲法第五十一条の趣旨からしても、国務大臣は、国会において一議員と同じ立場で自由に発言することは到底認められないのではないか。

三 前記一に関連して、国務大臣には国会での発言の免責特権は必ずしも認められておらず、国務大臣が品格のないやじを飛ばすことは「不規則発言」に他ならず、議会政治の活性化に寄与するものでもなく、不適切ではないか。

四 閣僚席からのやじは本来行われるべきではなく、ましてや国会での国政全般について説明を行うべき政治的義務のある内閣総理大臣がやじを飛ばすことは、日本国憲法第七十二条および第五十一条の趣旨に反すると考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。