第200回国会(臨時会)
質問第五九号 気象庁以外の者による洪水等の予報業務に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和元年十一月十三日 熊谷 裕人
参議院議長 山東 昭子 殿 気象庁以外の者による洪水等の予報業務に関する質問主意書 気象業務法第十七条では「気象庁以外の者が気象、地象、津波、高潮、波浪又は洪水の予報の業務(中略)を行おうとする場合は、気象庁長官の許可を受けなければならない」とされている。 令和元年十月の台風十九号による大雨で、長野市の千曲川などで起きた堤防の決壊について、東京大学などの研究チーム(以下「研究チーム」という。)が約三十時間前に予測していたが、住民への情報提供は気象業務法第十七条により許可制とされているため、研究チームの予測が公表されなかったことが産経新聞(十一月十三日付)の報道で明らかにされた。 研究チームは、「安全な段階での早期避難に役立てるため、規制緩和を求めたい」と述べており、また、研究チームに所属する東京大学生産技術研究所の芳村圭教授は、「技術の進歩に応じた規制緩和が必要で、国や自治体と連携して活用を模索したい」との見解を示している。 一方、東京工業大学の屋井鉄雄教授は、「今回の予測が当たっても、常に的確な予測が可能とは限らない。最新技術の導入は必要だが、予報への利用は議論を重ね、国民の理解を深めた上で行うべきだ」との見解を示している。 右を踏まえて、以下質問する。 一 過去三年間において、気象業務法第十七条に基づく許可を求めた気象庁以外の者について、政府の把握している件数はどの程度か。 二 前記一の件数のうち、激甚災害に指定されるような災害において、気象業務法第十七条に基づく許可を求めた気象庁以外の者について、政府の把握している件数はどの程度か。 三 今次の台風十九号による千曲川での堤防の決壊などの被害において、研究チームの予測が周辺住民に周知されていたら、より迅速な避難、対応を行うことも可能であったと思われ、被害の程度が軽減されていたのではないか。 四 前記のように、研究者の見解には両論があるものの、技術の進歩に応じた規制緩和が必要であり、国は自治体や研究機関と連携し、気象庁以外の者による予報を活用していくべきであろう。現行制度の下では、今次の台風十九号による千曲川での堤防の決壊の予測など迅速な周知が必要な場合には、対応できないと考えられる。なぜならば、気象業務法第十八条では、「気象庁長官は」、「許可の申請書を受理したときは、次の基準によつて審査しなければならない」とされるとともに、審査基準が列挙されているため、迅速な判断がなされるとは言いがたいからである。政府は今後議論を進め、新たにガイドラインなどを策定し、先進的な「予報業務を適確に遂行するに足りる観測その他の予報資料の収集及び予報資料の解析の施設及び要員を有するもの」等には包括的な許可を与え、気象庁以外の者による予報を広く国民のために活用する制度を創設すべきではないか。 右質問する。 |