質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五二号

コンセッション事業の推進がもたらす自治行政のあり方の変化に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十一月七日

吉田 忠智   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   コンセッション事業の推進がもたらす自治行政のあり方の変化に関する質問主意書

 今後、コンセッション方式によるPFI事業(以下「コンセッション事業」という。)は、効率化と収益性の追求のために、自治体をまたがるケースが多くなると思われる。その結果、自治行政のあり方を大きく変えると思われるが、その結果発生する課題についてどのように対応するのか、以下質問する。

一 コンセッション事業が優先して導入される対象とされる道路や河川等の事業は、複数の自治体をまたぐことが多いことから、広域行政や市町村合併が更に進むことが予想される。その中で、各自治体の自律性を損なうことがないようにするため、各自治体の住民をはじめ職員、職員労働組合などの意向が各自治体に反映されるような態勢を確立するためのマニュアル等を作成する必要があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

二 各自治体では、主な収益事業において、人口減少などにより収入が減少しているが、これまでのコンセッション事業による有料施設の運営の収支は、どのような状況か。一般会計からの繰り入れも含めて明らかにされたい。

三 水道分野におけるコンセッション事業の導入に対応し、すでに水道法が改正されたが、今後、他の分野においても、コンセッション事業に対応するため、関係法の改正が必要になると思われる。政府はどのような分野において関係法の改正が必要になると想定しているか明らかにされたい。

四 今日、日本では多くの公共施設が老朽化しており、地震や台風等の災害への対策が急がれている。公共施設の運営にコンセッション事業が導入される場合、「効率化」とは別に「安全性」という観点から住民が参加し、その意見や要望が反映されるようなパブリックミーティング等の設置を制度化・義務化すべきと考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

五 コンセッション事業により行われている事業の技術やノウハウを有する各自治体の技術者の定年退職が進んでいる。三十年前と比べて、当該技術者はどれくらい減少しているのか。また、十年後及び三十年後には当該技術者がどれくらい減少すると予想しているのか。当該技術者の減少は、技術やノウハウの伝承に支障をきたしていないのか。技術やノウハウの伝承に支障が生じると、行政側がコンセッション事業をモニタリングする能力を失うことにならないか。政府の見解を明らかにされたい。

六 有料の高速道路の管理については、すでに愛知県においてコンセッション事業が導入され、収益事業が行われている一方、無料の一般道路においては、一部で近隣の農家等と連携した「道の駅」などの収益事業が行われているにとどまる。
 今後、一般道路においても、全国で全面的にその管理をコンセッション事業に置き換える方針はあるのか明らかにされたい。

七 一般道路を建設するため、新たに用地を買収する、または、すでに買収した用地において、道路使用が開始されるまでの間、路上でのパラソルカフェ、コンビニエンスストア、カフェ、有料駐車(駐輪)場、仮設保育所等の収益事業施設を設置するなどの「短期的」な事業をコンセッション事業の一環として実施することも可能だとする見解もある。政府はこうした「短期的」なコンセッション事業の実施も検討をしているのか明らかにされたい。

八 全国的に、多くの高架、橋げた、トンネルなどは、耐久性が限界にきており、その限界となる時期は今後十年間に集中している。こういった高架、橋げた、トンネルなどの維持や更新がコンセッション事業として取り組まれようとしているが、関係台帳の整備、財政的な支援態勢などは、万全なのか。政府の見解を明らかにされたい。

九 今後、東京オリンピック・パラリンピックの各競技会場をはじめとして、全国的に文化・体育施設(水泳場、バレーボール会場、スケート場等)を、イベント会場を兼ねられるような構造にすることが多くなると予想される。また、MICE(国際会議、イベント等)のための多目的会場の建設が全国各地で進められている。これらの施設の建設におけるコンセッション事業の導入に関し、今後の方針、計画はどのようになっているか明らかにされたい。

十 今日、日本の動物園は、国際標準に対応したスペースの確保と施設の見直しが求められている。また、慢性的な赤字を解消するために、開園時間(夜間開園を含む。)や収益施設の見直し、あるいは動物園の統合、整理等も切実な課題になっている。これらの問題をコンセッション事業と結びつけて解決していく方針はあるのか。政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。