質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第四二号

不発弾処理の費用負担に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十月二十九日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   不発弾処理の費用負担に関する質問主意書

 平成三十年二月、戦時中に投下されたとみられる不発弾の処理にかかる費用は行政機関が全額負担すべきだとして、費用の一部を支払った土地所有者三人が大阪市と国に約五百七十万円の返還を求めた訴訟の判決が大阪地方裁判所であり、大阪地裁は請求を棄却した。
 大阪地裁は不発弾処理の費用について「国民が等しく受忍すべき戦争損害」と指摘し、自治体や国には特定の個人の利益を保護する役割はなく、「費用を負担しなかったのは裁量権の逸脱とは言えない」と判示した。
 不発弾処理の費用を巡っては、高崎市や西東京市などが全額を負担しているが、川崎市や神戸市などは土地所有者らに支払いを求めており、自治体によって対応が分かれている。
 この訴訟は、被告の国と大阪市が互いに責任を押しつけ合う展開となっていたと承知している。国は、一次的な責任は自治体と都道府県警察にあり、「自衛隊は求めに応じ専門的な作業をしただけ」と主張したのに対し、大阪市は、原因は「国策としての戦争」にあるとし、国に責任があると主張した。なお、両者とも明確には「土地所有者が負担すべきだ」という主張はしていなかったと承知している。
 慶應義塾大学の大屋雄裕教授は「国と市に支払いを強制する法的根拠がない以上、この結論になるしかない。裁判で問うには適さない難しい問題だった」と指摘している。この訴訟では、不発弾処理の費用にかかる責任の所在はあいまいなままとなり、不発弾の撤去作業をした国(自衛隊)、関連経費を一部負担した大阪市、約五百七十万円の自己負担をした土地所有者らの三者が負担を分担しあう状況は司法の場で是正されなかった。大屋教授は「不発弾処理負担については、裁判で白黒つけるよりも何が社会的に公正なのか、立法や世論のなかで考えるべきだ」とも指摘している。
 右を踏まえて、以下質問する。

一 現在、不発弾処理の費用負担についての国の制度は存在しているのか。存在しているとすればどの法令で定められているのか。

二 政府も、不発弾処理の費用は、「国民が等しく受忍すべき戦争損害」であり、自治体や国には特定の個人の利益を保護する役割はなく、「費用を負担しなかったのは裁量権の逸脱とは言えない」と認識しているのか。

三 過去の不発弾処理において、不適切な処理が行われ、物的、人的被害などが生じた事例を政府は把握しているのか。

四 不発弾処理は、専門的な知識を持った自衛隊員がまさに命がけで行うものと承知している。しかしながら、万が一、事故が生じた場合、周囲の家屋への物的被害や人的被害などが生じることも否定できない。このような観点からは不発弾処理の費用は「国民が等しく受忍すべき戦争損害」にとどまらないというべきであり、土地所有者の負担に帰すという現状は妥当なものとはいえないのではないか。政府の見解如何。

五 大屋教授の指摘するように、土地所有者が不発弾処理の費用負担をするのは、「国と市に支払いを強制する法的根拠がない」ことに尽きるもので、「裁判で白黒つけるよりも何が社会的に公正なのか、立法や世論のなかで考えるべき」ではないのか。政府の見解如何。

六 前記五に関連して、不発弾処理の費用については、政府は公的負担ができるように法制度を見直し、対策指針を策定すべきではないか。政府の見解如何。

  右質問する。