質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三三号

政府における国会議員の質問通告の取り扱いに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十月十八日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   政府における国会議員の質問通告の取り扱いに関する質問主意書

 いわゆる質問通告は、国会における政府の正確な答弁や建設的な議論のため、国会での質疑に先立ち、議員が政府側へ質疑内容を通知するもので、慣習として行われている。質問通告の内容は様々であり、題名や項目だけのものもあれば、詳細に及ぶものもある。質問通告の内容は議員の判断により、政府職員との信頼関係に基づいて決定される。
 質問通告の内容は、質疑を行う前に、政党や議員が事前にSNSで公表したり、メディアに配布したりすることもあるが、その前提に当該議員の同意があることは言うまでもない。
 令和元年十月十五日の参議院予算委員会での質疑に先立ち、国民民主党所属の参議院議員(以下「本議員」という。)が政府側に通告した質疑内容が外部に漏洩していた(以下「本事案」という。)として、国民民主党は記者会見を開き、国民民主党と立憲民主党等による両院の会派として本事案を追及する旨述べた。同会見において本議員は、「国会議員の発言の自由、それを守る憲法そのものに対する挑戦である。重大な民主主義への挑戦である」旨発言した。また、本事案における漏洩の具体例として、前日の十四日に放映されたインターネット番組で、大学教授が「私も(本議員の質問通告の内容を)見た。私の関連も入っていた」、「私の方に役所の方から(情報が)来た」などと発言したことをあげたほか、別の大学教授が、十五日の参議院予算委員会で質疑に立った議員ごとに、省庁が質疑内容を把握した日時などを記した資料をツイッターに掲載したことも、漏洩の例として示した。
 本事案は由々しき事態として、同月十六日の参議院予算委員会理事懇談会でも対応が協議された。
 本事案のように、質問通告として政府側が議員から受け取った質疑内容を記した文書(以下「通告文書」という。)の内容が外部に漏洩することは、国家公務員の守秘義務違反であり、日本国憲法に由来する国会議員の質問権の侵害にあたるのではないかとの疑念を持つ。
 このような観点から、以下質問する。

一 通告文書は、各省庁職員のいわゆる「国会待機」にかかわることを踏まえると、通告文書は、「行政機関の職員が職務上」「取得した文書」であって、「当該行政機関の職員が組織的に用いるものとして、当該行政機関が保有しているもの」、すなわち、公文書等の管理に関する法律(以下「公文書管理法」という。)第二条第四項でいう「行政文書」にあたるのではないか。

二 前記一に関連して、政府側が受け取った通告文書は、公文書管理法上の「公文書」ではないのか。

三 通告文書は議員と政府職員との信頼関係の上に提供されるものであるが、同時に「行政文書」であると考えられることから、その内容を関係省庁の職員が漏洩することは国家公務員法第百条第一項でいう「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない」との守秘義務に違反するのではないか。

四 政府職員が議員の同意を得ず、通告文書を第三者である関係省庁の職員ではない大学教授などに渡すことは、質疑の前後にかかわらず、前記三の国家公務員法上の守秘義務に違反するのではないか。

五 政府職員が通告文書の内容を漏洩すると、議員の質疑の概要が事前に不特定多数の者に知られるところとなり、その質疑への事前の批判、妨害が生じ得る。政府職員による通告文書の内容の漏洩は、日本国憲法に由来する国会議員の質問権の侵害にあたるのではないか。

六 本事案のような通告文書の内容の漏洩が再発することを防止するため、政府は何らかの対策を講じるべきはないか。政府の見解如何。

  右質問する。