質問主意書

第200回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三二号

サイバー攻撃に対処するための自律型兵器システムの活用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年十月十八日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   サイバー攻撃に対処するための自律型兵器システムの活用に関する質問主意書

 政府は、「衆議院議員緒方林太郎君提出サイバー攻撃と自衛権との関係に関する質問に対する答弁書」(内閣衆質一八九第七一号)において、「一般論として申し上げれば、武力攻撃の一環としてサイバー攻撃が行われた場合には、自衛権を発動して対処することは可能と考えられる」とした上で、「その対処の方法については、当該武力攻撃の状況に応じて個別具体的に判断する必要があり、一概に申し上げることは困難である」と答弁している。
 兵器の進歩は日進月歩であり、技術革新とともに様々な兵器が開発されている。その中で注目すべきは、人工知能(AI)の技術を活用した自律型兵器システムであり、高度なAI技術に支えられたものは、完全自律型兵器システムとして運用可能となる。
 自律型兵器システムのうち、自律型致死兵器について防衛大臣は、令和元年五月二十日の参議院決算委員会で「判断、選択、決定というような人間の関与というものがしっかりある形での自律型の装備については、これは開発又は運用していっていいと思っておりますが、完全自律型致死兵器と言われるものについてはやはりネガティブな考え方」を持っていると答弁している。
 以上のことを踏まえ、以下質問する。

一 我が国が他国から武力攻撃の一環としてサイバー攻撃を受けた場合、これに対し自動的にサイバー攻撃又は武力で反撃するシステム(以下「自動反撃システム」という。)は完全自律型兵器システムにあたるのではないか。政府の見解如何。

二 自動反撃システムは、政府が「判断、選択、決定というような人間の関与というものがしっかりある形での自律型の装備」ではないと思われる。しかし、「武力攻撃の一環としてサイバー攻撃が行われた場合には、自衛権を発動して対処することは可能と考えられる」と答弁しているように、自動反撃システムによる反撃が自衛権の発動にあたるのであれば、現在の政府の憲法解釈上、他国から武力攻撃の一環として受けたサイバー攻撃に対する自動反撃システムによる反撃は可能であると思われるが、政府の見解如何。

三 前述のとおり、防衛大臣は、「完全自律型致死兵器と言われるものについてはやはりネガティブな考え方」を持っているとし、人間の関与がしっかりあることが必要であると述べている。我が国が他国から武力攻撃の一環としてサイバー攻撃を受けた場合、攻撃を行ってきた敵に対し、致死性がない範囲において、自動反撃システムを運用することは可能であるとの理解でよいか。

四 サイバー攻撃であるか否かに関わらず、人間の関与を必要としない完全自律型兵器システムを他国が使用し、我が国に攻撃を与える場合、人間の関与が必要なシステムでは、反撃のための速度の観点から我が国が非常に不利になる場面が出てくる可能性がある。数千分の一秒で判断を行う高速のアルゴリズムで意思決定を行う完全自律型兵器システムにおいては、極めて短時間で「戦闘」の雌雄が決せられる可能性が高い。政府は、相手国の武力攻撃の一環としてのサイバー攻撃により我が国が有効な対応ができない状況になり、自衛官の身体、生命を危険にさらすことになっても、なお完全自律型兵器システムの開発、運用を行わないのか。政府の見解如何。

  右質問する。