第200回国会(臨時会)
質問第一三号 キャッシュレス支払いに関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和元年十月七日 熊谷 裕人
参議院議長 山東 昭子 殿 キャッシュレス支払いに関する質問主意書 日本銀行法第四十六条では、日本銀行券が法貨として無制限に強制通用力を有することが示されている。また、通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第七条では、貨幣については「額面価格の二十倍まで」に限り、法貨として強制通用力を有することが示されている。 近年、日本でも現金を使わないキャッシュレス化が進んでいる。キャッシュレス支払いには、店にとって、釣り銭を準備する必要がなく、レジ打ち作業を省力化でき、売上額とレジ内の現金を照合する「レジ締め」も不要になることで、客へのサービスに専念できるという利点がある。 他方、客にとっては、電子マネーの残高が足りないとき等、現金で払いたい場合もあり、キャッシュレス化することには一長一短がある。法貨には、日本銀行法第四十六条及び通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第七条に担保された強制通用力が存在するが、キャッシュレス化が進むと、店が現金での支払いを拒否する場面が出てくることも想定され、現状ではこれに対処する法整備はなされていない。 一般に、契約成立前であれば、当事者同士の合意で支払方法を決めることは、法貨の強制通用力とは関係なく行うことができると解される。しかし、支払方法に関する事前の特別の合意がない場合、法貨の強制通用力により、現金での支払いも有効であり、店側は受け取りを拒めない。 このような観点から、以下質問する。 一 日本銀行券が無制限に通用する根拠は、日本銀行法第四十六条であるという理解でよいか。他に日本銀行券の通用に関して定めた法令上の規定は存在するのか。 二 店が「現金不可(電子マネーのみ)」と支払いの条件を店頭に表示している場合、客はその店に入店するなどの行為により、その条件に同意したと見なされるのか。消費者保護の観点から、政府の見解如何。 三 日本ではまだキャッシュレス支払いのみという店は少ないが、今後のキャッシュレス技術の普及により、ほぼ現金が流通しなくなることも想定される。そうなった場合、携帯電話や電子マネーのカードを紛失したり、盗難されたりした場合、買い物ができなくなり非常に不便となる。また、災害等の緊急時にキャッシュレス支払いができなくなった場合、食料品、医薬品の購入などができなくなり、身体の安全にも関わる懸念が生じる。このような災害等の緊急時に「現金不可(電子マネーのみ)」と店頭に表示している店でも、法貨の通用を担保する法制度は存在しているのか。存在していないとすれば、政府は法整備に向け、検討を進めるべきではないか。政府の見解如何。 四 キャッシュレス支払いの普及は意義あることと考えるが、そもそも食料品、医薬品などの生活必需品については、店の事前の取り決めにかかわらず、一定の要件の下では法貨の通用を義務づけるべきではないか。 右質問する。 |