第200回国会(臨時会)
質問第八号 無人機による戦略爆撃に対するわが国の石油備蓄施設の抗堪性に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和元年十月四日 熊谷 裕人
参議院議長 山東 昭子 殿 無人機による戦略爆撃に対するわが国の石油備蓄施設の抗堪性に関する質問主意書 本年九月十四日、サウジアラビアで国営石油会社サウジアラムコの施設二カ所が、イエメンの反政府武装組織フーシ派の無人機(ドローン)による攻撃を受けて炎上した。この攻撃の影響で、サウジアラビアの原油生産の半分以上、世界全体の五%相当の原油生産が停止したと報じられている。 サウジアラビアはこれまで数十億ドルの予算を費やし、国防を目的とした最新鋭の防空システムを導入してきた。この防空システムはアメリカ製のものが中心の高高度からの攻撃に備えたシステムであり、今回のような低高度からの無人機と巡航ミサイルを組み合わせることによって行われる攻撃は想定していなかったため、レーダーによる無人機などの検知やミサイルでの迎撃ができなかったことで、被害が拡大したと推測されている。 無人機は、その多くが安価で操縦が容易であり、誰もが簡単に触れることのできるものであるが、同時に多くの軍事用無人機が開発され、中東などの紛争地では実戦に投入されている。今回のように、石油生産施設を破壊し、一時的にでもサウジアラビアの原油生産の半分以上を停止させるような戦略爆撃が無人機で可能となったことは、政策の転換点となるとも考えられる。 わが国は、国の直轄事業として実施している国家備蓄、民間石油会社等が法律により義務付けられて実施している民間備蓄、産油国と連携して行っている産油国共同備蓄を合わせて約八千百四万キロリットルの石油を国民の共通財産として備蓄しており、その量は備蓄日数に換算して約二百八日分(平成二十九年三月末現在)と承知している。 以上のことを踏まえ、以下質問する。 一 わが国の石油の国家備蓄、民間備蓄、産油国共同備蓄の施設(以下「石油備蓄施設」という。)には、高高度からの攻撃に備えた防空システムを保有しているものは存在しているのか。政府の把握するところを示されたい。 二 前記一に関して、わが国の石油備蓄施設が防空システムを保有していないとすれば、その理由は、石油備蓄施設の上空の防衛も航空自衛隊の任務に包含されているからという理解でよいか。 三 わが国の石油備蓄施設には、低高度からの無人機もしくは巡航ミサイルなどによる攻撃に備えた防空システムを保有しているものは存在しているのか。政府の把握するところを示されたい。 四 一つ又は複数のわが国の石油備蓄施設に低高度からの無人機もしくは巡航ミサイルなどによる戦略爆撃が加えられた場合、当該施設の防空体制、抗堪性はどのように担保されるのか。政府の見解如何。また、そのようなシミュレーションを行ったことはあるのか、明らかにされたい。 五 例えば、わが国の石油の国家備蓄の施設のうち、苫小牧東部、むつ小川原、秋田、福井、志布志の各施設は、地上・地中タンク方式であると承知しているが、当該タンクは十分な対爆性能を備えているのか。また、低高度からの無人機もしくは巡航ミサイルなどによる攻撃を受けた場合、抗堪性はどのように担保されるのか。政府の見解如何。 六 今次のサウジアラビアの原油施設への無人機による戦略爆撃の成功は、テロリストが安価な複数の無人機を組み合わせることなどにより、数百億、数千億円をかけた最新鋭の防空システムでも撃破できることを明らかにした。政府はこれを政策の転換点と捉え、わが国の石油備蓄施設への無人機による攻撃のみならず、その機能喪失が日本の政治・経済の中枢に甚大な影響を与える株式市場、主要銀行のデータセンターなどへの無人機による攻撃も想定し、対策指針を策定すべきではないか。政府の見解如何。 右質問する。 |