質問主意書

第199回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一四号

企業主導型保育事業を巡る詐欺事件等の検証と事業の抜本的見直しに関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年八月二日

田村 智子   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   企業主導型保育事業を巡る詐欺事件等の検証と事業の抜本的見直しに関する質問主意書

 東京地検は、企業主導型保育事業の助成決定を受けたWINカンパニーの社長らを本年七月三日に詐欺容疑で逮捕し、二十三日に起訴した。また、同二十三日に別の企業主導型保育事業の施設を巡る詐欺容疑でも同社社長らを逮捕した。
 内閣府は前記詐欺事件に関連するWINカンパニーなどが受けた助成決定の取消などの対応をとっている。前記のWINカンパニーの社長である被告人(以下「当該被告人」という。)らが運営する企業主導型保育事業所の保育者から私の事務所に寄せられた声などをもとに内閣府や内閣府を通じて実施機関である児童育成協会に適切な対応を求めたが、未だに当該保育者にきちんとした対応がなされないなど、その両者の対応には多くの問題があると言わざるを得ない。
 昨年来、企業主導型保育事業については様々な問題が指摘され、内閣府において企業主導型保育事業の円滑な実施に向けた検討委員会が開催され、新たな実施機関の公募など見直しの方向が打ち出されている。しかし、前記案件を巡る内閣府や児童育成協会の対応を見ていると、これらの案件の総括抜きには、新しい実施機関の公募や、企業主導型保育事業の募集などはとうてい許されない。
 これらをふまえ以下質問する。

一 1 企業主導型保育事業を行う保育施設で設置事業者の経営状況の悪化などによって、保育者の給料の不払いや遅延が生じ、保育の実施に困難が生じた場合、保育の混乱を招かないように内閣府や実施機関である児童育成協会は、利用者や保育者の相談や問い合わせに適切かつ誠実に対応し、利用者や保育者の希望に添って保育の継続等のために担当者を継続的に現地に派遣する、窓口を設けるなどの積極的な対応が求められると思うがいかがか。

2 保育者や利用者が設置事業者の状況に関わらず保育の継続を求め、実際に努力している場合には、内閣府や児童育成協会は漫然と設置事業者に運営費の助成を行うのではなく、保育現場に運営費が確実に行き渡るような施策を講ずる、保育体制を維持したまま事業譲渡の先を探すなどの丁寧な支援が求められると思うがどうか。

二 WINカンパニーが経営する福岡市に所在する企業主導型保育事業の保育施設の保育士など、当該施設の職員六名の連名で、保育を継続するための相談に児童育成協会が応じず、「無視されている状況」、「担当者が不在とか明日も出張などといって取り合ってくれない」などの実態が記された手紙が私の事務所に寄せられた。七月二十五日に私が内閣府に対して、その手紙を情報提供した上で、児童育成協会へただちに連絡を取り、保育現場の不安や疑問に答える相談支援を行うように求めたところ、内閣府の担当者は保育現場の相談に乗るように児童育成協会を指導する旨、明言した。ところが、七月三十日時点でも児童育成協会は保育士らに連絡を取っていない。

1 内閣府は児童育成協会に対して、私の要請を受けてどのような指導を行ったのか。なぜ児童育成協会は当該保育施設の保育士などに連絡を取ろうとしないのか。
2 福岡市の当該施設など当該被告人らが関わる保育施設の一部では、設置会社や保育受託会社が資金繰りなどのため保育に必要な什器などを換金のため持ち出すことを保育士に打診するなどの動きもある。児童育成協会や内閣府として、専任の担当者を決め、そのような動きについて毅然と対応するとともに、実際に保育の継続のために保育士の相談に乗り必要な支援を行うことが求められると思うがどうか。また、保育に支障が出ている施設に対しては当該被告人らの関連する事業者以外への事業譲渡の支援など、安定的に保育を行う体制を作るよう支援することが内閣府や児童育成協会としても求められると思うがどうか。

三 二〇一七年度までに助成決定を受けた事業者についてはその一覧が公表されている。一方で、昨年度に助成決定を受けた事業者については、助成決定数は公表されているものの未だに公表が行われていない。二〇一七年度の助成決定は最終的に昨年五月十七日に全ての一覧が公表されている。また、年度途中であっても助成決定が行われるたびにその一覧が公表されている。

1 二〇一八年度の助成決定の一覧の公表が遅れているのは何故か。
2 二〇一八年度の助成決定の一覧を、いつまでに公表するつもりか。また、二〇一八年度に限って年度途中の公表をしなかったのは何故か。
3 当該被告人らが事業者、保育受託者、申請者、コンサルタントなどとして関わっていて申請通りに事業が開始していない事業者に対して、児童育成協会が申請の取り下げを求めているとの情報が寄せられている。公表が遅れているのは、申請を取り下げさせることによって助成決定の一覧からこれらの事業者を除き、児童育成協会や内閣府の責任を小さく見せようとする意図があるのではないか。
4 今後公表される二〇一八年度の助成決定の一覧からは、事業者の申請の取り下げや助成決定の取消がなされた事案を除くべきではないと思うがどうか。

四 公表された二〇一七年度以前の助成決定施設のうち、当該被告人が実質的に支配するジャングルフードサービス、当該被告人とともに逮捕・起訴された者が代表取締役を務めるJ-ALIVEの二社が助成決定を受けた二施設について、当該被告人らの逮捕後に助成取消となっている。また現在事業が継続しているものでも、公表分に含まれる前記二の福岡市の保育施設は二〇一七年度以前に助成決定を受けた施設だが、事業者の経営危機によって保育に様々な影響が出ている。同様に二〇一八年度に助成決定を受けた施設についても保育への影響が懸念される。

1 利用者保護の観点から、二〇一八年度に助成決定されたもののうち、WINカンパニー、ジャングルフードサービス及びJ-ALIVEが関わる施設の一覧の公表を私が求めたのに対して、内閣府は「捜査機関において捜査中であり、内閣府・児童育成協会の今後の対応に支障を来たす恐れもあることから、お答えは差し控えます」との回答をメールで行った。本来公表することになっている助成決定の一覧の一部を利用者保護の観点から先に公表することが、どうして「内閣府・児童育成協会の今後の対応に支障を来たす恐れ」につながるのか、その恐れについて具体的に説明されたい。また、今後起こるかもしれない事態に対応するよりも、現に生じている問題に新たな利用者を巻き込まないという対応こそ優先されるべきではないのか。
2 しんぶん赤旗日曜版の調査によると、公表されていない二〇一八年度に助成決定された事案について、当該被告人らに児童育成協会が申請の取り下げを求めていた最中に、当該被告人が当初の助成決定をもとにある地方銀行から融資を受けたことを関係者が証言している。児童育成協会や内閣府が水面下で事態を収めようとしている最中に、実際に被害が発生していると言わざるをえない。また詐欺事件の関係者が関係する事案であることを公開しなければ、水面下で土地や事業を転売するなど様々な問題が起こりかねないと考えるが政府の見解はいかがか。
3 児童育成協会の担当者は、しんぶん赤旗日曜版の当該被告人らが申請または申請を代行した助成決定施設を公表しなければ被害が拡大するのではとの指摘に対して「公表しなくても今さら被害は拡大しない。必要なら報道機関が調べればいい」と答えているが、政府も同じ見解か。
4 利用者保護の観点から、まだ公表されていない二〇一八年度の施設について全体が公表できなくても、前記四の1に挙げた事業者に関わる助成決定施設を公表すべきではないか。

五 1 当該被告人が関わる企業主導型保育事業を巡る詐欺事件や、現在、松山地裁において係争中の別の企業主導型保育事業を巡る詐欺事件についての政府や児童育成協会の責任を、政府はどのように認識しているか。

2 このような公費を巡る詐欺事件を発生させた企業主導型保育事業は廃止し、現在運営中の保育施設については認可施設への移行を図るなど抜本的な見直しを行うべきではないか。
3 少なくともこれらの事案の解明と発生した混乱や被害の問題が解決するまで、新しい企業主導型保育事業の実施機関の公募や企業主導型保育事業の募集は行うべきではないと考えているが、政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。