質問主意書

第199回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の定期接種に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年八月二日

熊谷 裕人   


       参議院議長 山東 昭子 殿



   子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)の定期接種に関する質問主意書

 子宮頸がんは年間約一万人が罹患し、約二千九百人が死亡している。子宮頸がんの患者数、死亡者数はともに近年増加傾向にあると指摘されている。特に二十歳から四十歳台の若い世代での罹患の増加は著しいと承知している。
 子宮頸がんの多くは、ヒトパピローマウイルス(以下「HPV」という。)の感染が原因と考えられている。HPVの主な感染経路は性的接触で、性交渉の経験がある女性のうち、五十%から八十%はHPVの感染機会があると推計されている。
 もっとも、HPVに感染しても多くの人は無症状のまま一過性の感染に終わり、病気を発症することはないが、ごく少数の感染者において、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成・上皮内がんという前がん病変を経て、数年後、子宮頸がんが発生する。
 HPVワクチンは、HPVの感染を予防し、前がん病変、子宮頸がんを発生させないようにするものである。「現在使用可能なHPVワクチンは頸がんの約六~七割を予防できると考えられています」(日本産科婦人科学会ホームページ)との見解もある。また、世界保健機関(WHO)も、HPVワクチンは安全であるとの見解を示している。
 HPVワクチンは、平成二十五年四月に予防接種法により定期接種化されているものの、現在、自治体から接種対象者に接種時期を告知したり、個別に接種を奨めるような積極的勧奨は中断されている。HPVワクチンは筋肉注射であり、注射部位の一時的な痛み、腫れなどの局所症状が多くの接種者に生じることがある。若年女性で注射時の痛みや不安のために失神を起こした事例がいくつも報告されている。
 平成二十九年十一月の厚生労働省専門部会においては、慢性疼痛や運動障害などHPVワクチン接種後に報告された「多様な症状」とHPVワクチンとの因果関係を示す根拠は報告されず、これらは機能性身体症状と考えられるとの見解が示されたが、HPVワクチンの接種対象者の不安を払拭するには至っていない。
 HPVワクチンの定期接種については慎重な自治体が多い。背景には、HPVワクチンの接種についての正しい理解がなされていない現状があり、自治体によっては混乱が生じている。
 このような現状を踏まえ、政府の認識を確認したいので、以下質問する。

一 HPVワクチンの定期接種は、積極的勧奨の中断から六年が経過している。本来、予防接種法に基づいて定期接種されるべきであるものの、実際には接種が漏れている者はどの程度いると考えているのか。政府の把握するところを示されたい。

二 前記一に関連して、予防接種法でいうHPVワクチンの定期接種の積極的勧奨が差し控えられていた者は、具体的には平成何年何月生まれから平成何年何月生まれの者か。政府の把握するところを示されたい。また、その積極的勧奨が差し控えられていた者の概数を明らかにされたい。

三 HPVワクチンの定期接種と任意接種は、一人当たりの自己負担額ではどの程度の差があるのか。

四 HPVワクチンの定期接種と任意接種において、接種による健康被害があった場合、補償制度やその補償の内容に差は生じるのか。生じるとすれば、その差はどのようなものか。

五 HPVワクチンの定期接種漏れの者に対して、自治体が独自で費用の助成を行うことは可能か。また、その場合、国に何らかの財政的支援を求めることができる制度はあるのか。

  右質問する。