第199回国会(臨時会)
質問第七号 公職選挙法施行令第百十条の四でいう特定ポスターへの公費負担に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和元年八月二日 熊谷 裕人
参議院議長 山東 昭子 殿 公職選挙法施行令第百十条の四でいう特定ポスターへの公費負担に関する質問主意書 公職選挙法では、「国又は地方公共団体がその費用を負担して候補者の選挙運動を行い若しくは選挙を行うに当たり便宜を供与し、又は候補者の選挙運動の費用を負担する制度」(選挙制度研究会編「実務と研修のためのわかりやすい公職選挙法」)を設けている。これは日本の選挙法制の特徴であり、いわゆる「選挙公営」と呼ばれるものである。 もっとも、「選挙公営は、選挙の平等化をはかるものであるが、この平等は自由に対するなんらかの制限なしには実現されえない性質を有している」(上条末夫「選挙公営化論」一九八五年)との指摘がある。 公職選挙法施行令第百十条の四では、「法第百四十三条第十四項の規定の適用を受けようとする者は、ポスターの作成を業とする者との間において特定ポスターの作成に関し有償契約を締結し、総務省令で定めるところにより、その旨を当該選挙に関する事務を管理する選挙管理委員会に届け出なければならない」とされ、「衆議院小選挙区選出議員又は参議院議員の選挙における公職の候補者が前項の契約に基づき当該契約の相手方であるポスターの作成を業とする者に支払うべき金額のうち、当該契約に基づき作成された特定ポスターの一枚当たりの作成単価に当該特定ポスターの作成枚数を乗じて得た金額については、法第百四十三条第十四項後段において準用する法第百四十一条第七項ただし書に規定する要件に該当する場合に限り、衆議院小選挙区選出議員又は参議院選挙区選出議員の選挙にあつては都道府県が、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては国が、当該ポスターの作成を業とする者からの請求に基づき、当該ポスターの作成を業とする者に対し支払う」と規定されている。 このうち、「衆議院小選挙区選出議員又は参議院選挙区選出議員の選挙の場合」においては、「当該選挙区におけるポスター掲示場の数が五百以下である場合」には「五百二十五円六銭に当該ポスター掲示場の数を乗じて得た金額」に「三十一万五百円を加えた金額を当該選挙区におけるポスター掲示場の数で除して得た金額」を、「当該選挙区におけるポスター掲示場の数が五百を超える場合」には「二十六万二千五百三十円と二十七円五十銭にその五百を超える数を乗じて得た金額との合計金額」に「三十一万五百円を加えた金額を当該選挙区におけるポスター掲示場の数で除して得た金額」を支払うこととされているが、現行の計算方法に拠ると、「ポスター掲示場の数が五百を超える」場合、特定ポスターの作成に関する一枚当たりの公費負担額は急激に低下する。選挙公営は、選挙の平等化をはかるものであると解されるが、選挙区の掲示場の数によって、不公平が生じるとの懸念がある。 これについて、政府の見解を確認したいので、以下質問する。 一 政府はいわゆる選挙公営についてどのような方針で臨んでいるのか。政府の選挙公営の定義を示されたい。 二 選挙公営は、「選挙の平等化をはかるもの」であるが、「この平等は自由に対するなんらかの制限なしには実現されえない」ものであるとの理解でよいか。 三 公職選挙法施行令第百十条の四でいうところの、特定ポスターへの公費負担額の計算式では、ポスター掲示場の数が五百を超えるか否かで取り扱いが異なる。この五百という数はどのような根拠で定められたのか。政府の見解如何。 四 公職選挙法施行令第百十条の四でいうところの、特定ポスターへの公費負担額は、ポスター掲示場の数が三百ならば一枚千五百六十円、五百ならば一枚千百四十六円で、五百を超えると一枚あたりの公費負担額は急減し、千ならば五百八十七円、五千ならば百三十九円、一万二千ならば七十四円となる。この特定ポスターへの公費負担の趣旨はどのようなものか。選挙の平等化を図るものであれば、選挙区が大きくなり、ポスター掲示場の数が増えるほど一枚あたりの公費負担額が急減するのは合理性に欠けるのではないか。政府の見解如何。 五 選挙公営が候補者になろうとする者の資力に関わらず公職に関する選挙に立候補する機会を担保し、選挙の平等化を図ることを目的とするならば、公職選挙法施行令第百十条の四の規定は、大きな面積を持つ選挙区に立候補する場合、特定ポスターへの一枚あたりの公費負担額が低くなることから、公職選挙法の趣旨に反するのではないか。公職選挙法第一条でいう「その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする」ことと合致しないのではないか。政府の見解如何。 六 前記三から五に関連して、公職選挙法施行令第百十条の四の規定は合理性に欠け、改正すべきではないか。政府の見解如何。 右質問する。 |