第199回国会(臨時会)
質問第六号 公職選挙法上の期日前投票の解釈に関する質問主意書 右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。 令和元年八月二日 熊谷 裕人
参議院議長 山東 昭子 殿 公職選挙法上の期日前投票の解釈に関する質問主意書 公職選挙法第百二十九条は、「選挙運動は、各選挙につき、それぞれ第八十六条第一項から第三項まで若しくは第八項の規定による候補者の届出、第八十六条の二第一項の規定による衆議院名簿の届出、第八十六条の三第一項の規定による参議院名簿の届出(同条第二項において準用する第八十六条の二第九項の規定による届出に係る候補者については、当該届出)又は第八十六条の四第一項、第二項、第五項、第六項若しくは第八項の規定による公職の候補者の届出のあつた日から当該選挙の期日の前日まででなければ、することができない」と規定している。これは、総務省ホームページによれば、「選挙の公正、候補者間の平等を確保するため、選挙運動期間中に行われる文書図画の頒布・掲示その他の選挙運動について一定の規制を行って」いるものである。当該規制違反に対する罰則は、公職選挙法第二百三十九条で「一年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する」と規定されている。 公職選挙法第四十四条では「選挙人は、選挙の当日、自ら投票所に行き、投票をしなければならない」とされているものの、公職選挙法第四十八条の二で、「選挙の当日に次の各号に掲げる事由のいずれかに該当すると見込まれる選挙人の投票については、第四十四条第一項の規定にかかわらず、当該選挙の期日の公示又は告示があつた日の翌日から選挙の期日の前日までの間、期日前投票所において、行わせることができる」と規定されている。 すなわち、公職選挙法第四十四条でいう「選挙の当日」では、「選挙の公正、候補者間の平等を確保するため、選挙運動期間中に行われる文書図画の頒布・掲示その他の選挙運動について一定の規制を行」い、当該規制違反に対する罰則も規定しているものの、公職選挙法第四十八条の二でいう「選挙の期日の公示又は告示があつた日の翌日から選挙の期日の前日までの間」、いわゆる期日前投票の期間中には、公職選挙法第百二十九条でいう「選挙運動」が行われていることになる。このため、「選挙の当日」に「選挙運動」をすれば「選挙の公正、候補者間の平等を確保するため」に罰則が適用されることになるが、期日前投票の期間中には「選挙運動」が行われても罰則は適用されないという矛盾が生じる。 このような観点から、以下質問する。 一 前記のように、「選挙の当日」も「期日前投票の期間中」も選挙人が投票をすることができる期間であることは同じであるのに、「選挙運動」をした者に対する罰則の適用の有無が分かれることは、矛盾するのではないか。政府の見解如何。 二 公職選挙法第四十四条でいう「選挙の当日」では一切の「選挙運動」ができないが、公職選挙法第四十八条の二でいう「期日前投票所」の置かれる建物の前や周辺で「選挙運動」をしても公職選挙法に違反しないという理解でよいか。 三 前記二に関連して、公職選挙法第四十八条の二でいう「期日前投票所」の置かれる建物の前や周辺で「選挙運動」をしても公職選挙法に違反しない理由は何か。また、どのような理由から「選挙の公正、候補者間の平等を確保する」ことに反しないと解することができるのか。政府の見解如何。 四 公職選挙法第四十八条の二では「選挙の当日に次の各号に掲げる事由のいずれかに該当すると見込まれる選挙人の投票については、第四十四条第一項の規定にかかわらず、当該選挙の期日の公示又は告示があつた日の翌日から選挙の期日の前日までの間、期日前投票所において、行わせることができる」と規定されるとともに、第一号から第六号まで具体的な事由が列挙されている。期日前投票は、公職選挙法第四十四条でいう「選挙の当日」に投票できない者のために例外的に許されるものであるという理解でよいか。 五 期日前投票は制度として定着しており、広く国民に認知されているものであるといえる。また、投票率の向上のために重要な制度であり、国民の選挙権行使にはもはや欠かせないものになっているが、期日前投票に対する政府の見解如何。 六 前記四及び五に関連して、期日前投票は制度として定着しており、広く国民に認知され、投票率の向上のために重要な制度であって、国民の選挙権行使にはもはや欠かせないものであることを踏まえれば、期日前投票が「選挙の当日」に投票できない者のために例外的に許されるものであるとする公職選挙法第四十八条の二の規定は、国民の積極的な選挙権行使を阻害するものであり、当該規定を見直すべきではないか。政府の見解如何。 右質問する。 |