質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第七〇号

審議会等の答申や報告書等の受領拒否に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年六月十二日

吉川 沙織   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   審議会等の答申や報告書等の受領拒否に関する質問主意書

 麻生金融担当大臣は、本年六月十一日の記者会見(以下「前記記者会見」という。)において、金融審議会「市場ワーキング・グループ」(以下「同ワーキング・グループ」という。)が同月三日に公表した報告書「高齢社会における資産形成・管理」(以下「本件報告書」という。)について、「正式な報告書としては受け取らない」と発言した。この件に関し、以下質問する。

一 法律に設置根拠を有する審議会や当該審議会に設置された部会、分科会、研究会、ワーキング・グループなどの下部組織(以下「審議会等」という。)が、自らに与えられた権限に基づいて調査審議を行い答申や報告書等を提出・公表したにもかかわらず、大臣等がこれを受け取らなかった事例は存在するか、政府の把握するところを明らかにされたい。当該事例が存在する場合、審議会等の名称、答申や報告書等の名称、大臣等が受け取らなかった理由を併せて示されたい。また、当該事例のうち、当該審議会等が、大臣等が受け取らなかった理由を踏まえて当該答申や報告書等に修正を加え、改めて提出・公表し直したものはあるか、政府の把握するところを明らかにされたい。

二 本件報告書は、同ワーキング・グループが昨年九月から計十二回行った議論の内容を取りまとめたものであるとされる。本件報告書の公表及びこれに至るまでの議論において、法令等に違背するなど何らかの手続的瑕疵があったか、明らかにされたい。

三 前記二において手続的瑕疵がない場合、本件報告書は、同ワーキング・グループの正式な報告書として公表されたものと評価できるはずである。しかし、麻生金融担当大臣は、前記記者会見において、本件報告書は「金融審議会の総会を経て正式に公文書になる前の文書」である旨発言している。
 一般に、金融庁は、金融審議会に置かれたワーキング・グループが報告書を公表したとしても、金融審議会の総会を経ていないうちは、これを正式な報告書としては取り扱わないこととしているのか、運用の実態を明らかにされたい。

四 一般に、金融担当大臣が金融審議会に諮問した事項について、金融審議会が答申を行ったり、同審議会の下部組織が報告書等を公表したりした場合、金融担当大臣が当該答申や報告書等の受取を拒否することは法令上可能であるのか明らかにされたい。

五 府省庁に審議会等を設置することの意義は、学識経験者や企業、市民の代表者などを審議会等の構成員に任命することにより、行政の意思形成に広く行政組織の外部にある人々の情報や提言を取り入れようとするところにあると考えられる。したがって、政府の見解・認識や現在行っている施策と必ずしも軌を一にしない内容が審議会等の答申や報告書等に盛り込まれることはあり得ることであり、むしろそういった内容を一つの見識として十分に勘案することが審議会等を設置する府省庁に望まれる姿勢ではないか。審議会等が法律に基づき設置される場合にはとりわけ、そのような姿勢が国民から期待されているものだと考えられる。法律に基づき府省庁に審議会等を設置することの意義について、政府の見解を示されたい。

六 麻生金融担当大臣は、前記記者会見において、「政府の政策スタンスと違うものは受け取れないという判断」をした旨発言している。この発言は、審議会等の構成員による自由闊達な議論を萎縮させ、政府の見解・認識や現在行っている施策とは異なる内容を答申や報告書等に盛り込むことを忌避させるものであり、法律に基づき府省庁に審議会等を設置する意義を著しく損ねるとともに、審議会等における議論やその結果である答申や報告書等に対する国民の信頼を失墜させるのではないか。政府の見解を示されたい。

  右質問する。