質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第六四号

我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  令和元年五月二十九日

石橋 通宏   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   我が国における難民認定の状況に関する質問主意書

一 難民認定実務の実績について

1 難民認定申請者について
(1) 二〇一八年末時点で、難民認定申請中の人数、同時点での収容の有無、仮放免中の人数、申請年ごとの内訳及び国籍の内訳とその人数をそれぞれ示されたい。
(2) 二〇一八年の難民認定申請者の申請時の在留状況を、これまでの申請回数ごとに示されたい。
(3) 二〇一八年の難民認定申請者の数について、申請を受け付けた地方入国管理局(当時。以下同じ。)等別の内訳を示されたい。
(4) 二〇一八年の非正規在留者からの難民認定申請件数について、申請を受け付けた地方入国管理局等別の内訳を示されたい。
(5) 二〇一八年末時点で、審査請求(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)第六十一条の二の九第一項の規定による異議申立てを含む。以下同じ。)中の人数、同時点での収容の有無、仮放免中の人数、申請年ごとの内訳及び国籍の内訳とその人数をそれぞれ示されたい。
(6) 二〇一八年に難民認定申請の結果が出た者の数について、国籍別の内訳を示されたい。
(7) 二〇一八年に審査請求の結果が出た者の数について、国籍別の内訳を示されたい。
(8) 二〇一八年に難民認定申請又は審査請求を取り下げた者について、取下げ時点での在留資格の有無別の人数を、難民認定手続の一次審査(以下「一次審査」という。)、審査請求の段階別に示されたい。在留資格がある者の数については、在留資格の種別の内訳も、在留資格がない者の数については、難民認定申請をした時点での在留資格の有無も併せて示されたい。
2 難民認定・人道配慮による在留許可について
(1) 二〇一八年に難民として認定された者(審査請求手続における認定者を含む。以下同じ。)の性別、難民認定申請時(複数回申請の者は初回申請とする。)の在留資格の有無別、在留資格の種別及び申請回数別の人数をそれぞれ示されたい。
(2) 二〇一八年に難民として認定された者のうち、迫害理由として①宗教、②政治的意見、③特定の社会的集団の構成員であることを挙げていた者の数をそれぞれ示されたい。③については、同性愛、人権・人道支援、家族など、具体的な集団別の内訳も併せて示されたい。
(3) 二〇一八年に難民として認定された者のうち、いわゆる「新しい形態の迫害」に当たる者は含まれているか。含まれているのであれば、その人数及びどのような迫害を受けていたのかを明らかにされたい。
(4) 二〇一八年の難民認定申請における認定、不認定別の平均審査期間、最短審査期間及び最長審査期間をそれぞれ明らかにされたい。
(5) 二〇一八年に難民として認定された者全てについて、申請の処理に要した期間(申請日から認定の告知がなされた日までの日数)を示されたい。仮に二〇一六年以前には統計をとっていたのにもかかわらず、二〇一七年、二〇一八年において当該統計をとっていないのであれば、今後の難民問題に対する我が国の更なる効果的な取組を考える上で、是非ともそのような統計をとることを検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。
(6) 二〇一八年に人道配慮による在留許可を受けた者(入管法第六十一条の二の二第二項による在留特別許可を受けた者、人道上の配慮を理由に在留が認められ在留資格変更許可を受けた者を含む。以下同じ。)の性別、在留資格の有無別、在留資格の種別及び申請回数別の人数をそれぞれ示されたい。
(7) 二〇一八年に人道配慮による在留許可を受けた者のうち、本国の情勢等を踏まえて在留が認められた十六人以外の者について、許可理由別の内訳を示されたい。
3 案件振り分けについて
 難民認定事務取扱要領は、難民認定申請案件を「難民条約上の難民である可能性が高い案件、又は、本国が内戦状況にあることにより人道上の配慮を要する案件」(A案件)、「難民条約上の迫害事由に明らかに該当しない事情を主張している案件」(B案件)、「再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している案件」(C案件)及び「上記以外の案件」(D案件)の四類型(以下「四類型」という。)に振り分けている。
(1) 二〇一八年に難民として認定された者の数について、四類型別の内訳を明らかにするとともに、認定に要した平均日数、最短日数及び最長日数を四類型別にそれぞれ示されたい。また、D案件に振り分けられた者のうち、複数回申請者の数を示されたい。
(2) 二〇一八年にD案件に振り分けられた者のうち「本来の在留活動を行わなくなった後に難民認定申請した人、又は出国準備期間中に難民認定申請した人」(D1案件)の数と「D1以外の人」(D2案件)の数をそれぞれ示されたい。
(3) 二〇一八年にD案件に振り分けられた者のうち、一次審査の結果が出るまでに振り分け先の類型が変更された例はあるか。もしあれば、どの案件からどの案件に何人変更されたのかを明らかにされたい。
(4) 二〇一八年一月から二〇一九年三月末までに振り分けた難民認定申請案件について、四類型のそれぞれの件数を、四半期別及び月別に示されたい。
(5) 二〇一八年における国籍別難民認定申請者数の上位二十五か国(ネパール、スリランカ、カンボジア、フィリピン、パキスタン、ミャンマー、インドネシア、トルコ、インド、バングラデシュ、ベトナム、中国、カメルーン、ナイジェリア、ウガンダ、チュニジア、イラン、ガーナ、セネガル、タイ、モンゴル、コンゴ民主共和国、ギニア、スーダン、エチオピア)又はエジプトのそれぞれの国籍を有する者による難民認定申請案件について、四類型別の件数をそれぞれ示されたい。
(6) 二〇一八年に手続が終了した難民認定申請案件のうち、入国管理局長(当時)が請訓不要としてあらかじめ振り分け先の類型を指定した後に、地方入国管理局等の長が難民と認定することを自ら決定して、難民認定証明書を作成した例はあるか。あれば、その件数を四類型別に明らかにされたい。
4 一次審査について
(1) 二〇一八年の一次審査で、本人以外の者がインタビューに同席した例はあったか。あったとすれば、どのような属性の者が、どのような理由で同席したのか示されたい。
(2) 二〇一八年の一次審査の最長処理期間及び最短処理期間を示されたい。また、認定、不認定別の平均審査期間についても明らかにされたい。
(3) 二〇一八年になされた難民不認定処分のうち、インタビューが一度もなされなかった例はあるか。あれば、その件数と、四類型別の内訳をそれぞれ明らかにされたい。また、そのうち、難民認定申請者が迫害を受けるおそれのある者の家族として申請したものの、提出された資料等から独自に迫害を受けるおそれの根拠となる具体的事実に関する申立てがないために、面接による事情聴取を要しないとされた案件は何件あったか明らかにされたい。
5 訴訟について
 難民不認定処分取消請求訴訟及び難民不認定処分無効確認請求訴訟について、二〇一八年に提起された件数及び終局裁判がなされた件数をそれぞれ明らかにされたい。加えて、難民不認定処分の取消し若しくは無効が確定した後、又は、難民認定処分の義務付け訴訟で国側が敗訴した後、難民認定がなされず、在留資格が付与されなかったケースはあるか。あれば、その理由を併せて示されたい。仮に統計をとっていないのであれば、是非ともそのような統計をとることを検討すべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

二 審査請求手続及び難民審査参与員制度について

1 二〇一八年に審査請求手続で裁決(行政不服審査法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律による改正前の入管法第六十一条の二の九第三項の規定による決定を含む。以下同じ。)が出された事案について、審査請求人の国籍別の件数を示されたい。
2 二〇一六年四月から二〇一八年十二月までに審査請求手続で裁決が出された事案のうち、処分庁等が口頭意見陳述に立ち会った件数と処分庁等に質問をした件数を、裁決が出された年別にそれぞれ示されたい。
3 二〇一八年に審査請求手続で裁決が出された事案について、「理由あり」とされた事案と「理由なし」とされた事案それぞれの平均処理期間を示されたい。
4 前記二の3の「理由なし」とされた事案の中で、法務大臣が意見を聴いた三人の難民審査参与員のうち二人以上が審査請求に理由があり、難民の認定をすべきである旨の意見を提出したにもかかわらず、法務大臣が不認定とした事案全てについて、審査請求人の国籍と不認定とした理由を明らかにされたい。
5 前記二の3の「理由あり」とされた事案の中で、法務大臣が意見を聴いた三人の難民審査参与員のうち二人以上が難民該当性を否定する旨の意見を提出したにもかかわらず、法務大臣が難民として認定した事案の件数を示されたい。また、その全ての事案について、審査請求人の国籍と難民として認定した理由を明らかにされたい。
6 二〇一八年に行われた審査請求手続において、難民審査参与員による口頭意見陳述・審尋は総計何回行われたか。また、前記二の3の「理由なし」とされた事案の中に、口頭意見陳述・審尋が一度もなされなかった例があるならば、その件数も明らかにされたい。

三 仮滞在について

1 仮滞在について、難民認定申請から仮滞在の許可の判断までの二〇一八年における平均審査期間を示されたい。また、許可、不許可別の平均審査期間についても示されたい。
2 二〇一八年末時点で仮滞在中の者の数を示されたい。
3 二〇一八年に仮滞在が取り消された者の数を、取消し理由別に示されたい。
4 二〇一八年に仮滞在中に逃亡した者はいるか。いれば、その人数を示されたい。

四 空港等での庇護申請関係の統計について

1 二〇一八年に一時庇護上陸許可を申請した者の数、許可状況及び申請の処理に要した期間を国籍別に示されたい。
2 二〇一八年の我が国の国際空港における難民認定申請件数を、申請が行われた国際空港別に示されたい。その件数に二〇一七年以前と比べて大きな変化がある場合には、その背景をどのように分析しているか、政府の見解を示されたい。
3 前記四の2に関し、二〇一八年に我が国の国際空港にて難民認定申請をした者について、仮滞在の許可、不許可別の人数を示されたい。また、仮滞在が不許可となった者について、不許可理由別の人数を明らかにされたい。
4 二〇一八年の我が国の国際空港における上陸拒否件数を、上陸拒否者数の上位三十か国の国籍別及び空港別にそれぞれ示されたい。

五 収容について

1 出入国在留管理庁(改組前の入国管理局を含む。以下同じ。)の収容施設への被収容者の最新の数、そのうち難民認定申請中、審査請求中及び難民不認定処分の取消しを求める訴訟係属中の者の数をそれぞれ明らかにされたい。加えて、それらの者のうち、収容期間(収容施設を移送された者については合計期間とする。)が最も長い者の日数を、収容された年別に明らかにされたい。
2 出入国在留管理庁の収容施設への被収容者について、収容回数の最新の内訳を明らかにされたい。
3 出入国在留管理庁の収容施設への被収容者のうち、国際空港等の出入国港から入国者収容所に移送された者の最新の数を示されたい。また、そのうち出入国港にて難民認定申請をした者について、その数と平均収容期間及び最長収容期間を示されたい。

六 仮放免について

 二〇一八年に仮放免取扱要領の別記第二十九号様式及び別記第三十号様式に基づいて手配に関する協力依頼をした件数をそれぞれ示されたい。

七 送還について

 二〇一八年に国費で送還した者のうち、過去に難民認定申請をしたことのある者の数とその国籍を明らかにされたい。

八 保護費の支給状況について

1 二〇一八年度(全期間の統計がとれていない場合はとれている期間。以下八の8まで同じ。)について、保護費を申請した者の数、保護費を受給していた者の数をそれぞれ明らかにされたい。
2 二〇一八年度に保護費を受給していた者の申請から受給決定までの平均待機期間、平均受給期間をそれぞれ示されたい。
3 二〇一八年度に保護費を受給していた者の数について、在留資格の有無別及び性別の内訳をそれぞれ示されたい。
4 二〇一八年に保護費を申請したが受給できなかった者の数、国籍の内訳、申請から結果が出るまでの平均待機期間を明示されたい。
5 二〇一八年度の難民認定申請者緊急宿泊施設(以下「ESFRA」という。)の利用者数を性別、国籍別に示されたい。また、保護費の申請からESFRAの利用開始までの平均日数、最短日数及び最長日数をそれぞれ示されたい。
6 参議院議員石橋通宏君提出我が国における難民認定の状況に関する質問に対する答弁書(内閣参質一九六第一四〇号。以下「先の答弁書」という。)の「七の5について」で、政府は「緊急宿泊施設は施設の入居に係る申請に基づき入居させるものではないため」ESFRAの申請者数は答えられないとしているが、難民認定申請者保護実施要領には別記第十六号様式として「入居申請書」が掲載されている。「入居申請書」があるのにもかかわらず、ESFRAは「申請に基づき入居させるものではない」としているのはなぜか。また、「入居申請書」はどのような場合に用いられるものなのか、明らかにされたい。
7 二〇一八年度について、①保護費、②生活費、③住居費、④医療費のそれぞれの支給額を示されたい。また、二〇一七年度及び二〇一八年度のESFRAの予算額及び執行額をそれぞれ示されたい。
8 二〇一七年度及び二〇一八年度において、ESFRAをどの都道府県で提供したかそれぞれ示されたい。

九 難民認定制度の運用の見直しの実務について

1 法務省が二〇一五年九月十五日に公表した「難民認定制度の運用の見直しの概要」の5の(1)において構築するとされていた、いわゆる「新しい形態の迫害」を申し立てる者が難民条約の適用を受ける難民の要件を満たすか否かの判断に関して「難民審査参与員が法務大臣に提言をし、法務大臣がその後の難民審査の判断に用いるようにするための仕組み」について、先の答弁書の「八の1及び2について」で「現在においても検討中」とされていたが、現在の状況を明らかにされたい。
2 二〇一八年の難民認定制度の「濫用」の件数を示されたい。
3 前記九の1の「難民認定制度の運用の見直しの概要」では、「真の難民」の迅速かつ確実な庇護を推進するとしているが、「真の難民」の庇護の実現は、現時点でどの程度達成されていると考えているか、特に当該資料の5の「保護対象、認定判断及び手続の明確化」、6の「難民認定行政に係る体制・基盤の強化」についてどのような取組がなされているか、明らかにされたい。また、政府が考える今後の取組の課題についても明らかにされたい。
4 二〇一八年一月十五日より、「真の難民」の迅速な保護に支障が生じている事態を改善するため、難民認定制度の更なる運用の見直しが行われたが、その効果はあったか説明されたい。

十 難民認定制度運用の見直し状況検証のための有識者会議について

1 二〇一八年に難民認定制度運用の見直し状況検証のための有識者会議(以下「有識者会議」という。)による検証対象となった案件数と、検証対象となった案件に係る難民認定申請者の国籍の内訳を明らかにされたい。また、同年において有識者会議委員により実際に検証された案件数と、実際に検証された案件に係る難民認定申請者の国籍の内訳も明らかにされたい。
2 二〇一八年度の有識者会議の開催回数を明らかにされたい。
3 二〇一九年度以降の有識者会議の開催実績及び開催予定を明らかにされたい。

十一 在留特別許可について

1 二〇一八年の在留特別許可件数と不許可件数を明らかにされたい。
2 二〇一五年から二〇一八年までの各年の在留特別許可件数について、性別と国籍別の内訳をそれぞれ明らかにされたい。
3 二〇一五年から二〇一八年までに在留特別許可が出た者のうち、日本人の配偶者がいた者の数を年別に明らかにされたい。
4 二〇一一年以降、在留特別許可件数は減少傾向にあるが、その理由を説明されたい。

  右質問する。