質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第四〇号

平成「過ち」の財政史を教訓とする「令和」のあるべき財政運営の構想に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十一年四月十五日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   平成「過ち」の財政史を教訓とする「令和」のあるべき財政運営の構想に関する質問主意書

 財政制度等審議会(以下「財政審」という。)が昨年十一月、麻生財務大臣に提出した「平成三十一年度予算の編成等に関する建議」(以下「平成最後の建議書」という。)には、平成の財政運営を総括した、「平成という時代は、こうした厳しい財政状況を後世に押し付けてしまう格好となっている。かつて昭和の政治家は戦後初めて継続的な特例公債の発行に至った際に「万死に値する」と述べたとされるが、その後先人達が苦労の末に達成した特例公債からの脱却はバブルとともに潰えた一時の夢であったかのようである。より見過ごせないことは、平成十四年(二〇〇二年)から財政健全化に向けた出発点となる指標として掲げている国・地方合わせたプライマリーバランスの黒字化という目標すら、十五年を超える歳月を経てもいまだ達成されていないことである」との記載がある。
 さらに同建議書では、この「万死に値する」財政運営を政府に行わせた主因が「受益の拡大と負担の軽減・先送りを求めるフリーライダーの圧力」、すなわち「歪んだ圧力」にあると断罪し、「新たな時代においては、財政健全化どころか一段と財政を悪化させてしまった平成という時代における過ちを二度と繰り返すことがあってはならず、手をこまねくことは許されない」と、政府に猛省を促している。平成「過ち」の財政史を教訓とする「令和」のあるべき財政運営の構想が、今ほど強く求められている時代はないと考え、以下のとおり質問する。

一 平成最後の建議書において、財政審は「平成三十一年度(二〇一九年度)予算は、平成最後の予算編成であると同時に、次の新たな時代に向けた最初の予算編成でもあり、その幕開けにふさわしい予算となることを期待したい」としているが、当初予算として初めて百兆円を超えた本年度の予算全体や、特に、「臨時・特別の措置」により膨張した歳出は、平成最後の建議書の精神に則ったものと言えるのか、政府の見解を明らかにされたい。

二 国・地方合わせたプライマリーバランスの黒字化(以下「PB黒字化」という。)について、例えば、平成二十四年七月十八日の参議院社会保障と税の一体改革に関する特別委員会における安住財務大臣(当時)の答弁で確認できるように、二〇二〇年度のPB黒字化はこれまで我が国の国際公約とされてきたが、昨年の「経済財政運営と改革の基本方針二〇一八~少子高齢化の克服による持続的な成長経路の実現~」でその目標年度が五年先送りされた。現在も引き続き、政府は二〇二五年度のPB黒字化を国際公約としているのか、政府の見解を明らかにされたい。国際公約としての扱いを変更した場合には、その理由及び、その結果として弱まるPB黒字化目標年度への信頼性をどのように担保するのか明らかにされたい。

三 財政審のみならず会計検査院からも指摘されている課題に、補正予算で膨らむ予算規模の問題がある。この問題の主な原因は、度重なる自然災害への緊急対応にあるというより、翌年度の当初予算の規模を抑えるために補正予算で前倒し計上する、いわゆる「補正回し」の頻度・規模の増大にあると考える。例えば、TPP等関連予算について、平成二十七年度以降、当初予算を超える規模で補正予算が恒常的に計上されているが、こうした「補正回し」は財政法の趣旨にかなうものなのか、政府の見解を明らかにされたい。

四 平成最後の建議書において、財政審は「持続可能な社会保障制度を確立する観点から、消費税率の引上げは予定どおり確実に行うことが必要」としているが、消費税率の引上げは今年十月に間違いなく行われるか、政府の見解を明らかにされたい。もしも延期の可能性がある場合、何を基準に延期を判断するかについてつまびらかにされたい。併せて、社会保障制度を今後も持続可能とするためには、消費税率を十パーセントとした後、さらなる引上げを目指すのか、それとも、当面は十パーセントで十分か、また、さらなる消費税率の引上げを目指すとすれば、何パーセントまで引き上げるのか等、消費税率を十パーセントとした後の政府の展望も明らかにされたい。

五 財政審が平成最後の建議書で痛烈に批判した、いわば平成「過ち」の財政史を教訓として、政府は新しい元号「令和」の時代におけるあるべき財政運営について、いかなる全体構想をもっているのか、忌憚なく明らかにされたい。

  右質問する。