質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第三九号

我が国の高レベル放射性廃棄物の地層処分と「オンカロのパラドックス」、「ユッカマウンテンの正論」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十一年四月十五日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   我が国の高レベル放射性廃棄物の地層処分と「オンカロのパラドックス」、「ユッカマウンテンの正論」に関する質問主意書

 原子力発電所等から発生する高レベル放射性廃棄物、いわゆる「核のゴミ」の地層処分(以下「地層処分」という。)の例として、世界的に有名な場所に、米国のユッカマウンテンとフィンランドのオンカロがある。前者は、ラスベガスの北西約百六十キロに広がる砂漠の真ん中に、日本円にして約一兆円を投じて巨大な地下トンネルを建設していたにもかかわらず、建設反対を掲げるオバマ政権により中止となった処分場予定地で、後者は、フィンランド政府が世界に先駆けて、処分場の建設許可を与え、現在、処分場の操業に向けて最終段階にある地下特性調査施設である。
 オンカロは、フィンランド語で「洞穴」を意味し、施設のある地下約五百メートル付近は、十八億年もの昔に形成された分厚い大陸性の岩盤で、十万年の安定性が求められる地層処分の厳しい地質要件に極めて合致しているといわれている。そのため、原子力全般には批判的だが、オンカロには肯定的という人も比較的数多い。そして、オンカロが処分場としての操業開始に向けて順調に進めば進むほどかえって、「あんな理想の場所が自分の国で見つかるか」と、自国の地層処分に否定的になる「オンカロのパラドックス」と呼ばれる状況があるという。一方、建設中止となっている米国のユッカマウンテンを訪れると、行けども行けども荒涼・無人の砂漠地帯という、自国にない地理・気象環境に驚かされ、「こんな場所でも難しいならば、国内で「核のゴミ」を処分できないのも当然。諦めるのが正しい」と考える「ユッカマウンテンの正論」という認知現象に陥る場合もあると聞く。以上を踏まえ、我が国における地層処分について、以下のとおり質問する。

一 我が国の地理・気象環境はユッカマウンテンとは大きく異なり、温暖湿潤であり、また、オンカロの地質環境とも大きく異なり、俗に「ちょっと地下を掘ると温泉が出る」といわれる地震・火山大国である。我が国国内での地層処分は、「オンカロのパラドックス」、「ユッカマウンテンの正論」が示唆するように、困難もしくは不可能なのか、政府の見解を明らかにされたい。

二 経済産業省は平成二十九年七月、国が前面に立って地層処分の取組を進めるとの方針の下、最終処分地選定に関係する科学的特性を一定の要件・基準に従って客観的に整理した「科学的特性マップ」を公表し、原子力発電環境整備機構(NUMO)は平成三十年十一月、「包括的技術報告:わが国における安全な地層処分の実現」を公表した。それらの中で、我が国国内で地層処分を行う場合、オンカロと同一又は同程度の地質環境やユッカマウンテンと同一又は同程度の地理・気象環境は必ずしも必要でない、とのわかりやすい説明や科学的根拠は示されているか。示されている場合はその箇所や要旨を、示されていない場合はその理由を明らかにされたい。

  右質問する。