質問主意書

第198回国会(常会)

質問主意書


質問第二六号

厚生労働省関連の束ね法案に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十一年三月二十五日

吉川 沙織   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   厚生労働省関連の束ね法案に関する質問主意書

 複数の法律を改正等しようとするときにこれらを束ねて一本の法律案として国会に提出する「束ね法案」は、法律案を束ねることによって国会審議の形骸化を招来するとともに、国会議員の表決権を侵害しかねないものである。また、どの法律がどのように改正されるのか等が国民に分かりづらくなり、適切な情報公開とはならないおそれもある。束ね法案はこのような問題点を有するため、政府は、束ね法案の国会提出に当たっては、束ねる必要性等について説明責任を十全に果たすべきである。
 以上を踏まえ、政府が今国会に提出した法律案のうち、厚生労働省関連の「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るための健康保険法等の一部を改正する法律案」(閣法第二五号。以下「健康保険法等束ね法案」という。)、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律等の一部を改正する法律案」(閣法第三八号。以下「女性活躍推進法等束ね法案」という。)、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律案」(閣法第五四号。以下「薬機法等束ね法案」という。)の三本の束ね法案について、以下質問する。

一 政府は、私が提出した「束ね法案に関する質問主意書」(第百九十回国会質問第三三号)に対する答弁書(内閣参質一九〇第三三号)において、束ね法案を国会に提出する場合の基準を述べている。すなわち、「法案に盛られた政策が統一的なものであり、その結果として法案の趣旨・目的が一つであると認められるとき、あるいは内容的に法案の条項が相互に関連して一つの体系を形作っていると認められるときは、一つの改正法案として提案することができる」としている。この基準にある「法案に盛られた政策が統一的なもの」について、政府は「政策が統一的なもの」に当たるかどうかをどのように判断しているのか明らかにされたい。

二 健康保険法等束ね法案の主な内容は、(1)保険者間で被保険者資格の情報を一元的に管理する仕組みの創設及びその適切な実施等のために医療機関等へ支援を行う医療情報化支援基金の創設、(2)医療及び介護給付の費用の状況等に関する情報の連結解析及び提供に関する仕組みの創設、(3)市町村において高齢者の保健事業と介護予防を一体的に実施する枠組みの構築、(4)被扶養者の要件の適正化、(5)社会保険診療報酬支払基金の組織改革である。この(1)から(5)の各政策はそれぞれ背景が異なり、牽連性も弱いように考えるが、各政策が互いにどのような関係にあるため前記一の基準にいう「政策が統一的なもの」に当たると政府は判断しているのか、具体的に説明されたい。

三 健康保険法等束ね法案は題名及び理由に「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るため」と掲げているが、政府の政策は、通常、ある制度を現状より適正かつ効率的なものにするために企図されるはずであり、その政策を実現するための法案の趣旨・目的は、当然、その制度の適正かつ効率的な運営を図ることにあるはずである。健康保険法等束ね法案について、前記二の(1)から(5)の各政策内容の関係性ではなく、「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図る」という点をもって、「政策が統一的なもの」であり前記一の基準を満たすことになると政府が判断しているのであれば、医療保険制度に関わる政策を実現するための法案はどのような内容であっても「一つの改正法案として提案することができる」ことになってしまうのではないか。これでは「政策が統一的なもの」という基準は有名無実化し、適当ではないと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 健康保険法等束ね法案には、国民年金法の一部改正が含まれるが、同法改正の何が健康保険法等束ね法案の題名及び理由として掲げられた「医療保険制度の適正かつ効率的な運営を図るため」に当たるのか明らかにされたい。

五 女性活躍推進法等束ね法案は、「女性活躍の推進」と「ハラスメント対策の強化」という二つの政策の実現を内容としているが、前者を実現するための女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の一部改正にはハラスメント対策を強化する内容は含まれておらず、また、後者を実現するための各法律の一部改正は必ずしも女性へのハラスメントだけを対策強化の対象とするものではない。両政策が互いにどのような関係にあるため前記一の基準にいう「政策が統一的なもの」に当たると政府は判断しているのか、具体的に説明されたい。

六 女性活躍推進法等束ね法案の題名からは、その内容にハラスメント対策の強化が含まれることを知ることができない。改正内容の二つの柱のうちの一つが題名から分からないということは、国民の知る権利の保障や情報開示の観点から望ましいことではないと考えるが、政府の見解を示されたい。

七 薬機法等束ね法案の改正内容のほとんどは医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法)と薬剤師法の改正により実現されるように思われるが、両法律だけでなく覚せい剤取締法、麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)、安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律(血液法)についても薬機法等束ね法案で改正することとしている。覚せい剤取締法、麻薬取締法及び血液法の改正内容が薬機法や薬剤師法の改正内容とそれぞれどのような関係にあるため「一つの改正法案として提案することができる」と政府は判断しているのか、前記一の基準に則して説明されたい。

八 薬機法等束ね法案の理由には、「医薬品、医療機器等が安全かつ迅速に提供され、適正に使用される体制を構築するため、医療上特に必要性が高い医薬品及び医療機器について条件付きで承認申請資料の一部省略を認める仕組みの創設、虚偽・誇大広告による医薬品、医療機器等の販売に係る課徴金制度の創設、医薬品等行政評価・監視委員会の設置、薬剤師による継続的服薬指導の実施の義務化、承認等を受けない医薬品、医療機器等の輸入に係る確認制度の創設等の措置を講ずる必要がある。」とあるが、覚せい剤取締法、麻薬取締法及び血液法の改正内容はこの理由のどれに当たるのか、それぞれ明らかにされたい。

  右質問する。