質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第六一号

認知症問題の改善に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十二月十日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   認知症問題の改善に関する質問主意書

 平成二十八年度に実施された人口推移の調査によると、六十五歳以上の高齢者人口は三千四百五十九万人で、総人口に占める割合は二十七・三%となり、人口、割合共に過去最高となった。このように高齢化が進む日本において、認知症は近年深刻な社会問題となっている。認知症問題の具体例としては、認知症患者の介護等を行う家族の負担(金銭的・精神的負担、介護離職等)、徘徊等により自宅に戻れない行方不明者の増加、認知症を患う高齢者に対する虐待、認知症患者による自動車事故等が挙げられ、このような認知症問題を改善するため、平成二十九年七月に「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」が改定された。本計画には、「認知症の人の意思が尊重され、できる限り住み慣れた地域のよい環境で自分らしく暮らし続けることができる社会の実現を目指す」という考えのもと、認知症対策等の普及・啓発や、治療法等の研究開発の推進といった内容が盛り込まれている。
 厚生労働省は、認知症患者は二〇二五年にはおよそ七百万人に上るという見込みも公表しており、本計画では補いきれない問題が山積している。その結果として、前記のような社会問題が続発しているというのが現状である。いずれにしても、今後日本では、増え続ける高齢者を若年層が支えていかなくてはならず、その若年層を支えていくのは、行政の役割である。以上のことから、若年層への負担を減らすために有効な政策を早急に講じる必要があるといえる。
 このような現状を踏まえ、以下の通り質問する。

一 政府に、認知症問題の深刻さについての認識が足りないのではないかと懸念するが、認知症問題に対する政府の認識を説明されたい。

二 警察に届け出があった認知症の行方不明者数は昨年一年間で一万五千八百六十三人(男性八千八百五十一人、女性七千十二人)に上り、前年を四百三十一人上回った。統計を取り始めた二〇一二年以降、五年連続で増加している。
 認知症に伴う徘徊により所在がわからなくなった高齢者の早期発見は引き続き社会的な課題である。
 各地方自治体は身元確認ができるQRコードを印字したシールやGPS端末を無料で配布したりするなど、それぞれ工夫を凝らした対策をとっているが、政府としても各地方自治体の対策をより力強く支援すべきではないか。

三 六十五歳未満で認知症を発症する若年性認知症は、患者が働き盛りで休職や退職を余儀なくされることから、家庭における経済的負担や介護者となる家族の負担が大きく、社会的損失も大きいという特徴がある。その対策として、政府として、事業主に対し若年性認知症患者が働き続けやすい職場環境を整備するよう協力を求めることが必要と考えるが、政府の認識如何。

四 認知症に関する医薬品開発が重要なことは言うまでもない。医薬品開発を始めとする認知症に関する医療技術の開発について、国が支援や環境整備を行うべきと考えるが、政府の方針を説明されたい。

五 抗認知症薬の副作用や飲み忘れ・過剰摂取という問題も深刻である。抗認知症薬の副作用によって、強い興奮や歩行障害等を訴える患者もいる。そのため、患者は医師から十分な説明を受けて副作用のリスク等を理解したうえで、抗認知症薬の服用を始める必要がある。抗認知症薬の飲み忘れ・過剰摂取の問題に関しては、服薬の分量や服用のタイミングを管理する機器の普及等が有効だと考えられる。認知症治療の現場において、医師による抗認知症薬の処方に当たりインフォームドコンセントが十分になされているのか、また、抗認知症薬の飲み忘れ・過剰摂取の問題に関してどのような対策がなされているのか、政府の把握しているところを明らかにするとともに、これらの問題に対する政府としての取組状況及び今後の方針を示されたい。

  右質問する。