質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五八号

日EU・EPAが日本の農林水産分野に与える影響に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十二月十日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   日EU・EPAが日本の農林水産分野に与える影響に関する質問主意書

一 日EU経済連携協定(日EU・EPA)によりEU産ソフト系チーズの関税割当枠が拡大し、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11)によりオーストラリア産チーズやニュージーランド産チーズの関税削減が進むことで、今後、チーズの輸入は拡大すると考えられる。特に、EUは高品質で高いブランド力をもつチーズを生産しており、EU産チーズが国内に多く出回れば、徐々に育ちつつある国内のチーズ産業にとって大打撃となりかねない。
 チーズを始めとする乳製品は、生乳の需給調整を担う加工品で、国内で生産される乳製品のほとんどには北海道の生乳が使用されている。国内の乳製品の生産量が減れば、北海道の生乳は飲用牛乳に仕向けられることとなり、飲用牛乳を生産する都府県酪農に大きな影響が出るおそれがある。
 このように、日EU・EPAは、我が国の酪農や乳業に大きな影響を与える懸念がある。酪農は施設・機械の大規模な投資を必要とし、乳牛の飼養にも大変な時間・労力がかかるため、早急な生産コストの削減は現実的でない。
 以上を前提に、以下の通り質問する。
1 日EU・EPAが我が国の酪農や乳業に与える影響について、政府はどのように想定しているのか。
2 平成二十九年度補正予算で「国産チーズ競争力強化対策」が措置されていたが、緊急的・一時的な対策では不十分ではないか、政府の見解を示されたい。
3 日EU・EPAの影響により我が国の生乳の乳価が低落した場合、現在の加工原料乳生産者補給金では対応が難しいのではないか、政府の見解を示されたい。

二 我が国に輸入されるEU産の構造用集成材は、輸入品の八十六%、SPF製材は、同四十九%を占めるなど、EUは我が国の大きな木材輸入先となっている。日EU・EPAでは、これらの林産物について、段階的に関税撤廃が行われることになる。本格的な利用期を迎えた我が国の森林資源の有効利用に向けて様々な取組が行われている中、国内林業・木材産業への大きな影響が懸念されるが、政府の見解を伺う。

三 政府は、EUの対日関税について、ほとんどの品目で即時撤廃を勝ち取ったとしている。しかし、輸出重点品目である豚肉、鶏肉、鶏卵、牛乳・乳製品(以下「輸出重点品目」という。)については、EUの第三国リスト(輸出許可国のリスト)に我が国が掲載されていないため、実際には当面輸出することができない。また、第三国リストに我が国が掲載された品目についても、EUが求める水準の施設を整備し、認定を受ける必要がある。
 政府は、日EU・EPAとは別に、輸出重点品目の輸出解禁に向けた協議をEUと継続中としている。しかし、日EU・EPAの効果をいかし、農林水産物・食品の輸出拡大を推進するためには、日EU・EPAの交渉と同時並行して解決を図るべきであったと考えられる。
 以上を前提に、以下の通り質問する。
1 EUとの輸出重点品目の輸出解禁に向けた協議及びEUが求める水準の施設の整備について、現状を説明されたい。
2 輸出重点品目の輸出が解禁された場合、どの程度の経済効果があると政府は見込んでいるのか。

  右質問する。