質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第五三号

日本郵便の要望する土曜郵便配達廃止などの郵便サービス低下につながる政策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十二月十日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   日本郵便の要望する土曜郵便配達廃止などの郵便サービス低下につながる政策に関する質問主意書

 日本郵便株式会社は、平成三十年十一月十六日に開催された総務省情報通信審議会郵政政策部会郵便局活性化委員会(以下「活性化委員会」という。)において、普通扱いの郵便物の土曜日配達の休止を求める「配達頻度の見直し」、「送達日数の見直し」などを要求したと聞くところである。
 しかしながら、平成十七年の郵政民営化法案の審議過程を振り返ってみれば、平成十七年六月二十九日の衆議院郵政民営化に関する特別委員会において、竹中平蔵国務大臣(当時)が「多様で良質なサービスを安い料金で提供することが可能になっていく」と答弁しており、今般、日本郵便が要望しているような実質的なサービス低下は想定されないことになっていたと考えられる。同様に、郵政民営化の旗手であった小泉純一郎内閣総理大臣(当時)も、平成十七年五月二十六日の衆議院本会議において、「郵政民営化は、市場原理のもとで自由な経営を行うことにより、公正な競争を通じて、国民に対してより高度化、多様化したサービスを提供することを可能とし、将来にわたって郵政事業を発展させるものであります」と答弁しており、郵便事業の根幹である信書その他の所定の物品の配達業務が、コスト削減・人材不足を理由に削減されることは想定などしていなかったと考えられる。
 日本郵便が活性化委員会において提示した資料「郵便事業の課題について」(以下「提示資料」という。)によれば、日本郵便は「働き方改革」や「週休二日制」を理由にして、土曜日配達休止を求めているが、公共交通機関及び医療機関などは、週休二日制を導入していても、土曜日及び日曜日の休業を求めたりせず、シフト制や交代制などにより上手に運用し、公共性の実現のために努力をしている事実と比較するに、日本郵便の主張は、あまりに自己に都合のよい理由付けであり、郵便事業の公共性に鑑みるに無責任極まりないと断じざるを得ない。
 また、提示資料によれば、日本郵便は郵便物の配達頻度に関するアンケート調査において、「値上げして土曜日に配達する」ことと「土曜配達を休止する」ことを選択させるという問いを立てており、土曜配達を継続する場合は「値上げ」が前提となる旨の質問だけをもって、多数が土曜配達を休止することを望んでいるという結論を示している。その不見識さは、論理破綻をきたしており、何故にこのような資料をもって説明する日本郵便の要望を総務省が傾聴するに及んでいるのか理解し難いものである。平成十七年の郵政民営化法案の審議時に、当時の竹中国務大臣や小泉総理は、郵政民営化によって料金は低下し、サービスは向上すると国会で説明しているにも関わらず、今般、日本郵便は、現行のサービスの継続は値上げありきであって、値上げがなければサービスは低下すると主張しており、郵政民営化法案の審議時に政府が約束した内容とは逆行する主張をしている。国会答弁の重要性に鑑みれば、政府は、日本郵便の今般の主張を簡単に受け入れるべきではないと考えるものである。そこで以下、政府に見解を求めるものである。

一 日本郵便の主張する「配達頻度の見直し」、「送達日数の見直し」などのサービス後退化の要望について、政府の見解を明らかにされたい。

二 提示資料では、土曜配達を継続する場合の値上げを前提としたアンケート調査しかなされていないと理解するが、このような偏った調査内容について活性化委員会で疑義は呈されなかったのか。また、呈されなかったとしても、土曜配達を継続する場合の値上げが前提とならないアンケート調査をするべきではないかと考えるが政府の見解如何。

三 日本郵便は、労働力不足を理由に、配達頻度や送達日数の変更を求めているが、労働力不足を唱える前に、労働力確保に努力するべきである。郵便サービスの現状を維持するために必要な労働力確保のため、労働力不足の原因が人件費不足に起因するというのであれば、郵便事業の公益性・公共性に鑑み、政府も補助金などを検討するなど、日本郵便が窮する現状を改善できる方策を政府として検討するべきと考えるが、政府の見解如何。

四 郵政民営化の原理は、「効率化、低料金化、サービス向上」であったが、日本郵便が窮する現状に鑑みるに、郵政民営化は失敗であったと総括するべきと考えるが、政府の見解如何。

五 郵政事業の公益性・公共性に鑑みるに、郵便事業の再公営化の議論を始めることも視野にいれるべきと考えるが政府の見解如何。

  右質問する。