質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三九号

健康診断等の受診者本人による診断情報の入手の容易化及びその利活用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十二月五日

平山 佐知子   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   健康診断等の受診者本人による診断情報の入手の容易化及びその利活用に関する質問主意書

 我が国において労働安全衛生法、健康保険法、国民健康保険法、母子保健法、学校保健安全法、高齢者の医療の確保に関する法律等の各法に基づいて実施されている健康診断、健康診査及び特定健康診査(以下「健康診断等」という。)は、多くの国民が自身の健康状態を毎年把握することができるという点で世界に誇るべき制度である。今後、「人生百年時代」を迎えるに当たり、健康診断等によって得られた情報(以下「診断情報」という。)を健康診断等の受診者本人が有効に利活用し、健康の増進や日常生活の改善に役立てていくことができる環境を更に整えていく必要がある。
 しかしながら、現状では、転居や転職によって健康診断等の実施主体が変わったり、健康診断等の受託機関が変更されたりすることにより、受診者本人が診断情報を連続する経年データとして把握することが困難となるケースが生じている。また、紙で受領した診断情報を紛失することにより、過去のデータを確認することができなくなることも多い。特定健康診査等の記録については、行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の改正等により、これを保険者間で引き継ぐことができることとされたとはいえ、診断情報を受診者本人が連続する経年データとして扱うことができる取組はまだ十分とは言えない。加えて、健康増進事業実施者が複雑化しており、診断情報の再入手の手続が複雑でその手間から受診者本人も諦めざるを得ない現状がある。
 また、受診者本人が健康診断等を実施した医療機関に診断情報の開示を求めても、医療機関は開示できる立場かどうか曖昧であり自身でその判断がしにくいとされる。この一因は、医療機関と受診者本人との関係より健康診断等に係る業務委託契約の関係が優先され、健康診断等が受診者本位でなく健康増進事業実施者本位となっていることにあると思われる。
 そもそも健康診断等の制度は受診者本人に対して健康の増進や疾病の予防促進、日常生活改善の機会を提供するための制度であり、受診者本人が診断情報を容易に入手して利活用できることが前提となっている。そして、診断情報の利活用を最大限に行うためには、パソコンやスマートフォン等の情報通信機器の技術の進化に即した電子化を図ることを通じて、健康診断等の受診者本人が主体的に診断情報を連続する経年データとして把握することのできる仕組みを構築する必要がある。
 このような観点から、以下質問する。

一 健康診断等における診断情報は受診者本人の個人情報であり、受診者は自らの診断情報を取り扱う健康増進事業実施者及び健診センターや病院等の医療機関を把握し、必要に応じて当該健康増進事業実施者及び健診センターや病院等の医療機関から自らの診断情報を取得し、保有する権利を有することについて、政府の見解を明らかにされたい。

二 健康診断等を実施する健診センターや病院等の医療機関も健康診断等の実施者として、健康診断等に係る業務委託契約の内容の如何にかかわらず、受診者本人の求めに応じ診断情報を開示できる立場にあると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

三 健康診断等の実施に当たってのガイドラインとして、現在、「健康増進事業実施者に対する健康診査の実施等に関する指針」(平成十六年厚生労働省告示第二百四十二号)が定められている。本指針は、健康診断等の各制度間において、「法令上、健康診査の結果の写しの提供が予定されている場合には、健康診査の結果を標準的な電磁的記録の形式により提供するよう努めること」等を規定しているが、受診者本人が、近年進化が目覚ましい情報通信機器の技術を生かして、診断情報の電子データを取得して管理するようになることは必ずしも想定されていない。一方で、本指針は「将来的には統一された生涯にわたる健康手帳の交付等により、健診結果等情報を継続することが望まれること」と言及している。今後、本指針の見直し等により、現状に即した形で、受診者本人による診断情報の入手の容易化及びその利活用を進めるべきと考えるが、本指針の見直し等の予定を含め、政府の見解を伺う。

  右質問する。