質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三六号

「ガスシステム改革」新時代における我が国ガス産業の飛躍的発展に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十二月三日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   「ガスシステム改革」新時代における我が国ガス産業の飛躍的発展に関する質問主意書

一 ガスシステム改革について

1 健全な競争環境の整備
(1) 既存ガス事業者に課される料金規制の経過措置
 ガスの小売全面自由化後は、ガス事業者による小売料金の設定は自由であることが原則である。他のエネルギー事業者との競合が激しい中、既存ガス事業者だけに課される料金規制の経過措置については、対象事業者の指定を慎重に検討するとともに、仮に対象事業者に指定した場合でも、競争状況等を加味して指定が適当でなくなったときは、速やかに解除することが基本と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) ガス導管網やLNG基地関連の規制緩和・規制強化
 公共財である既存のガス導管網を効率的に活用することが、託送料金の上昇抑制と効率的な導管整備に重要であり、二重導管等を認めるような過度の規制緩和は行うべきでない。また、競争財であるLNG基地の第三者利用制度における受託製造ルール等に関する過度の規制強化は、ガスの安定供給やガス事業者のLNG基地に対する投資判断に影響を与える可能性があることから、慎重に検討すべきと考える。これらの規制緩和・規制強化についての政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 「ガスシステム改革」の丁寧な検証の実施
 ガスシステム改革の最終的な目的は、「お客さま・社会の総合的な利益増大」であり、スケジュールありきでなく、同改革の各段階で丁寧な検証を実施する必要があると考える。特に、導管部門の法的分離における行為規制の検討にあたっては、導管や設備機器等の点検・保安、災害時対応、導管網整備に不可欠な小売部門と導管部門との連携、必要な人員の確保・育成、関連技術・技能等の継承、労働者の職業選択等に影響が及ぶことのないよう、慎重に検討するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
3 ガスシステム改革の成否を握る「人材」についての基本認識
 ガスシステム改革は、二〇一五年六月に成立した電気事業法等の一部を改正する等の法律(平成二十七年法律第四十七号)の国会審議や衆参の経済産業委員会における附帯決議に基づいて、また、ガス産業の特性である「大半が中小事業者で地域密着型」、「他のエネルギーも含めた競合が激しい」、「導管網が整備途上」、「導管や設備機器等の保安の重要性が高い」等の現場の実態も踏まえつつ、同改革の成否を握る「人材」の確保・育成について、「現場力の維持・継承」、「雇用の安定」等の視点を十分考慮して進めるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

二 地球温暖化対策・低炭素社会の実現について

1 天然ガス・LPガスそれぞれの特性を活かした普及促進
 天然ガスについては、化石エネルギーの中では、環境性と供給安定性に特に優れた特性があることから、国のエネルギー政策の柱の一つとして「天然ガスシフト」を着実に推進するべきと考える。また、LPガスについては、天然ガスと同様に、クリーンなエネルギーであるとともに災害時に強い分散型のエネルギーであることから、災害発生時の避難場所となる公共施設や病院等において、移動式ガス発生装置やLPガス設備の導入を図ると同時に、エネルギーセキュリティの観点からも、LPガスの国家備蓄体制の推進を図る必要があると考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 ガス体エネルギーの高度利用や分散型システムの普及促進
 家庭からの二酸化炭素排出の多くが、給湯・暖房等由来であることを踏まえ、地球温暖化対策・低炭素社会の実現のためには、潜熱回収型給湯器「エコジョーズ」、家庭用燃料電池「エネファーム」等の普及促進のための支援が効果的と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
3 次世代エネルギー・社会システムの構築・海外展開
 将来の水素エネルギー社会の構築に向けて、水蒸気改質、輸送、利用、CCS(二酸化炭素分離・回収技術)に関する技術開発に対する十分な支援を行うべきである。また、我が国の経済成長と世界全体の二酸化炭素削減のために、事業者によるコージェネレーションシステム(燃料電池を含む)、スマートエネルギーネットワーク等の海外展開に向けて、政策金融や貿易保険等の環境整備等も必須と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

三 原料調達やインフラ整備等のガス産業の基盤強化について

1 原料調達手段の多様化に向けた様々な取組みに対する政策的支援
 世界的な資源調達競争が激化する中、エネルギーセキュリティ向上の観点から、経済協力等を通じた資源外交の強化や海上輸送ルートの治安改善に向けた国際連携に努めると同時に、日本近海における石油・天然ガスの資源調査、メタンハイドレートの商業化、LNGの洋上生産技術の向上、シェールガスの権益確保等、原料調達手段の多様化に向けた様々な取組みに対し、政策的支援が重要と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 インフラの整備・拡充に対する支援
 「天然ガスシフト」の推進には、導管敷設やLNG基地建設に関する各種規制の緩和、税制・金融制度の活用による投資インセンティブの付与、新技術・新工法開発への支援、産業用需要家に対する継続利用インセンティブの付与等、インフラの整備・拡充に対する支援が必要不可欠と考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

  右質問する。