質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第三五号

北方領土の返還交渉に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十一月三十日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   北方領土の返還交渉に関する質問主意書

 安倍総理は本年十一月十四日、訪問先のシンガポールでロシアのプーチン大統領と会談し、一九五六年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約の交渉を加速させることで合意した(以下「今回の合意」という。)。
 クリミア問題を始めとするロシアを取り巻く様々な政治情勢や経済的状況を踏まえると、現在の国際情勢は北方領土の返還交渉を前進させる好機とも言えるが、歯舞群島及び色丹島の二島の先行返還も視野に入れた今回の合意が、我が国の交渉戦術として適切なものだったのかという疑義も残る。
 今回の合意を始めとする北方領土の返還交渉について、以下のとおり質問する。

一 日ソ共同宣言第九項には、日露間で平和条約の締結後、ロシアが「歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すこと」が明記されている。日ソ共同宣言第九項の「引き渡すこと」との文言は、主権の引き渡しを意味するのか。日ソ共同宣言の署名に至るまでの当時の交渉経緯も含め、説明されたい。

二 前記一の日ソ共同宣言第九項の「引き渡すこと」との文言の定義について、ロシアとの交渉の中で議論の対象となることはあるのか。

三 「領土問題を解決して平和条約を締結する」のが「我が国の方針」とのことであるが、今回の合意に基づく交渉の結果、北方四島の全てがロシアに帰属すると認めることで北方領土問題が決着したとしても、「我が国の方針と何ら矛盾するものでは」ないということになるのか。

四 前記三の「我が国の方針」と、我が国が北方領土の返還交渉の中で常に主張してきた北方四島の一括返還とはどのような関係にあるのか、政府の見解を示されたい。

五 本年九月十二日、ロシアのウラジオストクで開かれた東方経済フォーラムの全体会合で、プーチン大統領は安倍総理に対し、「一切の前提条件を抜きにして年末までに平和条約を結ぼう」と提案した(以下「プーチン大統領の提案」という。)。
 プーチン大統領の提案は、我が国の対露外交の基本路線を否定するものであったにもかかわらず、安倍総理はなぜその場で反論しなかったのか、説明されたい。

六 プーチン大統領の提案は、共同経済活動をてこに日露間の信頼関係を醸成し、北方領土問題の打開を目指そうとする安倍総理の新しいアプローチが思惑外れになっていることを示しているのではないか。政府の見解を明らかにされたい。

七 今回の合意に基づく交渉の結果、北方領土問題が歯舞群島及び色丹島の「二島の先行返還」ではなく、「二島のみの返還」で決着することとなった場合、当該二島の陸地の合計面積は北方四島全体の七%に過ぎないことも考え合わせると、我が国の国益に適う解決ではないと考えるが、政府の見解を示されたい。

八 歯舞群島及び色丹島の二島の日本への引き渡しが実施される場合、どのような手順や段取りが必要となるか。一般的な領土返還の事例に即し、回答されたい。

  右質問する。