質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一二号

「面従腹背」と「内部告発」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十月二十四日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   「面従腹背」と「内部告発」に関する質問主意書

 平成三十年十月十六日、藤原誠文部科学事務次官は、職員に向けた就任挨拶において、「ピンチをチャンスに変えていきたい」旨述べた。また、同月十七日付けの産経新聞によれば、この挨拶の中で、藤原事務次官は、大臣をはじめ上司が決めたことには従うこと、いったん決めた後は議論のプロセスをむやみに外に漏らさないことなどを職員に対して求め、「要約すれば、面従腹背やめましょう」と述べた(以下「藤原事務次官の要求」という。)という。
 「新明解四字熟語辞典」(三省堂)によれば、「面従腹背」とは、「うわべだけ上の者に従うふりをしているが、内心では従わないこと。「面従」は人の面前でだけ従うこと。「腹」は心の中のこと。「背」は背くこと」とされている。用例としては、「しかし、そんな本音をもちろん彼は表には出さない。「面従腹背」というのが今の彼の人生訓なのだ」(遠藤周作「深い河」)などと使われるようである。
 一方、同辞書によると、面従腹背の類義語に、「面従後言」があり、その意味するところは、「面と向かったときはこびへつらって従うが、陰ではあれこれと悪口を言うこと。「面従」は人の面前でだけ従うこと。「後言」は陰で悪口を言うこと」である。
 ところで、同月十八日付けの日本経済新聞によると、財務省は、学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る決裁文書の改ざん問題などを受け、再発防止に向けた省内改革案(以下「財務省改革案」という。)をまとめたという。同紙によれば、財務省改革案には、部下が上司を人事評価する仕組みの導入に加えて、内部通報制度の整備が盛り込まれており、「省内で不正防止のために通報した職員がその後に不利益を被らないしくみを整備」するとしている。
 また、政府は衆議院議員提出の「公務員の守秘義務と内部告発に関する質問主意書」(第百九十六回国会質問第一七二号)に対する答弁(内閣衆質一九六第一七二号)において、「公益通報者保護法は、国家公務員法第百条第一項の規定により課される守秘義務を解除するものではないが、公益通報者保護法第二条第三項に規定する通報対象事実(以下「通報対象事実」という。)は、犯罪行為などの反社会性が明白な行為の事実であり、国家公務員法第百条第一項に規定する「秘密」として保護するに値しないと考えられるため、そもそも、通報対象事実について、一般職の国家公務員が公益通報をしたとしても、同項の規定に違反するものではないと考えられる」としている。
 これらを踏まえると、藤原事務次官の要求は、内部通報制度についての過去の答弁や、内部通報制度の整備を行うとする財務省改革案とは、方向性が相反するように思われるので、以下の点を質問する。

一 藤原事務次官の要求は、「面従腹背」を止めるよう職員に求めているが、職員が決定された事項に対して批判を行ったり、陰口を叩くことを意味する「面従後言」については認めたものであるというのが政府の認識か。

二 藤原事務次官の要求は、「大臣をはじめ上司が決めたこと」が、公益通報者保護法第二条第三項に規定する通報対象事実に該当し、かつ、当該通報対象事実を認知した職員が、省内での不正防止の意図をもって公益通報しようとする場合であっても、「いったん決めた後は議論のプロセスをむやみに外に漏らさない」を尊重して当該公益通報を行ってはならないということを意味しているのか、政府の認識を明確に示されたい。

三 財務省改革案と同様の省内改革を他の省庁でも実施することを政府は検討しているか。

四 藤原事務次官の就任挨拶における「ピンチをチャンスに変えていきたい」旨の発言は、どういう意図を持ってなされたものなのか、政府の見解を示されたい。

  右質問する。