質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第一一号

派遣会社の無期派遣従業員の就業規則に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十月二十四日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   派遣会社の無期派遣従業員の就業規則に関する質問主意書

 平成三十年十月、大手人材派遣会社である株式会社パソナグループの傘下にある株式会社パソナジョブサポート(以下「同社」という。)が定めた派遣従業員の就業規則に、派遣従業員の労働契約が有期契約から無期契約に転換された場合でも、「派遣先を一カ月確保できなければ、本人に通知後、三十日後に」合意退職となるという労働契約法の趣旨から外れた規定があることが、労働組合等への取材で判明したと報道された(平成三十年十月九日付け、共同通信。以下「この報道」という。)。
 この報道において、脱法的な規定であるとして問題視されたのは、同社の平成二十九年十月一日施行の「無期派遣従業員就業規則」とされる就業規則のうち、派遣従業員の退職事由を定めた第四十六条第五号「第三条第一項乃至第三項又は第四条第一項乃至第三項に基づき会社がスタッフに指示すべき就業場所及び業務を一カ月間確保できず、会社がスタッフに指示できない旨を通知した日から暦日数三十日が経過したとき。」という規定(以下「当該規定」という。)のことであると思われる。
 一方、厚生労働省の作成したパンフレット「無期転換ルールのよくある質問(Q&A)」においては、「使用者が、定年によらず、無期労働契約に転換した労働者を解雇する場合には、労働契約法第十六条の解雇権濫用法理が適用され、当該解雇が「客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当であると認められない場合」には、権利濫用に該当するものとして無効となります」と説明されている。
 これらを踏まえると、同社の当該規定は「権利濫用に該当するものとして無効」であるように思われる。共同通信社の取材を受けたパソナグループの広報担当者も「誤解を招く表現だった。期間を削除するなど、修正する方向で進めている。派遣契約が終了した場合、新たな就業場所の確保を最優先に取り組んでいく」と述べたとされており、事実上不手際を認めた形となっている。
 この報道で判明した事実に関して、政府の見解を問うため、以下質問する。

一 同社の「無期派遣従業員就業規則」は、平成二十九年十月一日から施行されていたものであるが、厚生労働省は、なぜこの報道がなされるよりも前に問題点の指摘に至らなかったのか、具体的な事情を明らかにされたい。

二 政府は、同社以外に、同社と同様に「派遣先を一カ月確保できなければ、本人に通知後、三十日後に」合意退職となるというような、脱法的で派遣従業員の権利を侵害するような就業規則を定めている企業を把握しているか。

三 同社を傘下に置くパソナグループの取締役会長は竹中平蔵氏である。現在、竹中氏は、高齢者の継続雇用年齢延長等の雇用政策についても議論を行っている「未来投資会議」の議員を務めている。雇用政策を議論する同会議に人材派遣会社の会長が参加することは、そもそも利益相反行為に該当する疑いがあるが、これに加えて、脱法的な就業規則を定めた同社を傘下に置くパソナグループの会長の座にある竹中氏が同会議に参加することの適切性について、政府の見解を伺いたい。

  右質問する。