質問主意書

第197回国会(臨時会)

質問主意書


質問第八号

日米通商交渉に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年十月二十四日

山本 太郎   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   日米通商交渉に関する質問主意書

 平成三十年九月二十六日、日米首脳会談後に日米共同声明(以下「共同声明」という。)が発表された。外務省のウェブサイトにおいて公表されている、共同声明の英文のうち「3. Japan and the United States will enter into negotiations, following the completion of necessary domestic procedures, for a Japan-United States Trade Agreement on goods, as well as on other key areas including services, that can produce early achievements.」の部分(以下「当該部分」という。)について、外務省は同省のウェブサイトに「3 日米両国は、所要の国内調整を経た後に、日米物品貿易協定(TAG)について、また、他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るものについても、交渉を開始する。」との訳文(以下「日本側和訳」という。)を掲載している。
 一方、在日米国大使館・領事館のウェブサイトにおいて、当該部分は「3.米国と日本は、必要な国内手続が完了した後、早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定の交渉を開始する。」と和訳(以下「米側和訳」という。)されており、「下記の日本語文書は参考のための仮翻訳で、正文は英文です」との注意書きが付されている。
 安倍首相は同月二十六日の記者会見において、「日米の物品貿易に関するTAG交渉は、これまで日本が結んできた包括的なFTAとは、全く異なるもの」であると述べている(以下「安倍首相の発言」という。)が、米側和訳では「物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定」とされており、今回の日米間の貿易協定に関する交渉(以下「当該交渉」という。)は「包括的なFTA」交渉であるということが示唆されている。また、共同声明には当該部分に続けて「4 日米両国はまた、上記の協定の議論の完了の後に、他の貿易・投資の事項についても交渉を行うこととする」(外務省ウェブサイト)とあり、共同声明に基づく一連の交渉が、段階的な手順を踏んで行われることを示唆してはいるものの、当該交渉が最終的には日米FTA協定を実現するための交渉であることを否定するものではないことは明確である。
 以上を踏まえて、共同声明ならびに当該交渉に関する安倍政権の認識を確認すべく、以下質問する。

一 日本政府は、共同声明の正文は英文のみであり、日本側和訳及び米側和訳双方ともに正文ではないという点において、米国政府と意見を同一にしているか、明確に示されたい。

二 日本側和訳及び安倍首相の発言において、共同声明の当該部分には存在しない「TAG」との略称が用いられている理由を明確に示されたい。

三 一般論として、日本政府が日本国民向けに正文ではない仮翻訳を公表する場合、正文には存在しない略称を日本政府として独自に考案して記載するなど、表現上の加工を行うことが認められると考えているか、安倍政権の認識を明確に示されたい。

四 当該部分のうち、「a Japan-United States Trade Agreement on goods, as well as on other key areas including services, that can produce early achievements」に関して、「a Japan-United States Trade Agreement on goods」と「a Japan-United States Trade Agreement on other key areas including services, that can produce early achievements」は、各々独立した個別の協定として認識しているのか、あるいは「a Japan-United States Trade Agreement on goods, as well as on other key areas including services, that can produce early achievements」という一本の協定として認識しているのか、安倍政権の認識を明確に示されたい。

五 前記四に関して、当該部分を読む限り、日本側和訳及び安倍首相の発言における「日米物品貿易協定(TAG)」や「他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るもの」に関する協定は、各々独立した協定ではなく、「as well as」という接続句によって「物品」と「他の重要な分野(サービスを含む)で早期に結果を生じ得るもの」とが並列で結ばれた一本の協定であり、米側和訳のように、「早期に成果が生じる可能性のある物品、またサービスを含むその他重要分野における日米貿易協定」との和訳が正しいと考えられる。安倍政権は、日本政府としての認識を米国政府の認識と完全に一致させるために、日本側和訳を訂正するとの意向を持っているか、明確に示されたい。

六 平成三十年十月三日付けの産経新聞では、ハガティ駐日米国大使の「われわれはTAGという用語を使っていない」、「共同声明には物品と同様にサービスを含む主要領域となっている」との発言が報じられた。また、ロイター通信の報道によれば、ライトハイザー米通商代表部代表は「日本に対し完全な自由貿易協定(FTA)締結を目指す考え」を表明するとともに、協定の締結には米国議会の承認が必要なため、「大統領貿易促進権限(TPA、通称ファストトラック)法に基づき作業に着手する方針」を示したとされる。さらに、ペンス米国副大統領も十月四日の演説において「FTA(free trade agreement)」という語句は用いていないものの、「日本と歴史的な自由貿易交渉(free trade deal)を間もなく始める」と発言したことが伝えられている。以上を踏まえて、以下質問する。

1 一般論として「free trade agreement」と「free trade deal」とは同義であるか。仮に同義ではないとするならば、両者には如何なる相違があるのか。安倍政権の認識を明確に示されたい。
2 安倍首相の発言は、安倍政権における当該交渉に対する認識を示しており、日本政府は「包括的ではないFTA」の締結を目指しているとの理解でよいか。

  右質問する。