質問主意書

第196回国会(常会)

答弁書


答弁書第一七四号

内閣参質一九六第一七四号
  平成三十年七月二十四日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院副議長 郡司 彰 殿

参議院議員石上俊雄君提出IoTやビッグデータ解析、人工知能、ロボット等の活用拡大による我が国電機産業の発展に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員石上俊雄君提出IoTやビッグデータ解析、人工知能、ロボット等の活用拡大による我が国電機産業の発展に関する質問に対する答弁書

一の1について

 人工知能に係る技術等を習得する環境の整備については、独立行政法人情報処理推進機構において、人工知能が広く普及する社会において求められる実務能力の明確化及び体系化を行うとともに、平成二十九年七月に社会人が人工知能に係る技術等を習得するための教育訓練講座を経済産業大臣が認定する「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を創設したところである。

一の2について

 内閣府の「人工知能と人間社会に関する懇談会」が平成二十九年三月二十四日に取りまとめた報告書において、人工知能技術による事故等の責任の所在等についての今後取り組むべき論点を整理したところである。
 また、総務省においては、平成二十九年七月二十八日に「国際的な議論のためのAI開発ガイドライン案」を、本年七月十七日に「AI利活用原則案」を取りまとめたところであり、経済産業省においては、本年六月十五日に「AI・データの利用に関する契約ガイドライン」を取りまとめたところである。
 さらに、これら関係府省、産業界、学会等の議論を参考に、人工知能に係る技術及び人工知能の中長期的な研究開発、利活用等に当たって考慮すべき倫理等に関する産学民官の共通の基本原則について、内閣府が関係府省と合同で、本年四月二十五日に「人間中心のAI社会原則検討会議」を設置し、議論を始めたところであり、今後、本年度中に基本原則を策定すべく、議論を進めてまいりたい。

二の1について

 総務省の「二〇二〇年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会」が平成二十七年七月二十七日に取りまとめた「二〇二〇年に向けた社会全体のICT化推進に関する懇談会報告書アクションプラン第一版」において、御指摘の「都市サービス」について、その高度化の推進を図ることとしており、総務省において、平成二十八年度及び平成二十九年度にそのための実証事業を行ったところである。

二の2について

 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催年に、多くの国民が4K・8K放送を視聴できる環境を整備することが重要であると認識しており、総務省において、本年十二月一日から開始される新4K8K衛星放送に関して、平成二十九年一月二十四日に十一事業者十九番組について衛星基幹放送の業務の認定を行ったところである。
 また、総務省、放送事業者、メーカー、家電販売店等の関係者が参加した「4K・8K放送推進連絡協議会」(同年四月設置)において、「4K・8K放送に関する周知・広報計画」を取りまとめ、4K・8K放送の魅力、視聴方法等に関する周知・広報に取り組むとともに、受信環境の整備に関する支援措置を講じているところである。

二の3について

 政府としては、「未来投資戦略二〇一八」(本年六月十五日閣議決定)等に沿って、周波数有効利用のための研究開発を引き続き推進するほか、「Society 5.0」の基盤となる5G、Wi-Fi等を地域において利用できるように通信環境の高度化の推進に取り組んでいるところである。

三の1について

 政府としては、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(本年六月十五日閣議決定)に沿って、関係府省等において、データを活用したビジネスに係る事例に関して、技術的観点及び制度的観点からの助言等を踏まえて整理した事例集を策定し、公開する等の取組を進めているところである。

三の2について

 政府としては、個人情報を保護しつつ、企業がデータ利活用を円滑に行えるよう、EU、米国等との対話を進めるとともに、様々な広報活動に取り組んでいるところである。

三の3について

 データに係る不正競争行為の明確化を図ることは重要であると認識しており、現在、経済産業省において、不正競争防止法等の一部を改正する法律(平成三十年法律第三十三号)の施行に向け、「不正競争防止に関するガイドライン素案策定WG」を開催し、保護対象となるデータの範囲等の明確化に向けた検討を行っているところである。

三の4について

 医療機関等の間での医療データの交換及び共有方法の統一等については、医療の質の向上や医療機関等における患者の医療情報を取り扱うシステムの相互運用性の確保を図るため、「保健医療情報分野の標準規格として認めるべき規格について」(平成二十二年三月三十一日付け医政発〇三三一第一号厚生労働省医政局長通知)において、「厚生労働省標準規格」を定め、当該システムへの実装を促進するなど、その普及に努めているところである。

三の5について

 政府としては、これからのIoT及び人工知能に係る技術等の進展を見据え、情報通信システム及びデータ利活用に関する個人情報保護等についての国民の理解の増進に向け、地域で子供、学生、社会人、高齢者等が情報通信技術を楽しく学ぶ仕組みや、高齢者等が情報通信技術に係る機器について相談できる仕組みの構築について検討を行うこととしているところである。

四について

 防災・減災対応の強化の必要性については、政府としても十分に認識しており、「統合イノベーション戦略」(本年六月十五日閣議決定)において、防災・減災分野では、「衛星、AI、ビッグデータ等を活用した最新の技術開発と社会実装を進める」とともに、インフラ・マネジメント分野でも、「インフラデータのオープン化、ITベンチャー企業等も含めたオープンイノベーションを加速」することとされたところである。

五の1について

 サイバーセキュリティ対策の強化の必要性については、政府としても十分認識しており、官民の多様な主体がサイバーセキュリティに関する施策の推進に係る協議を行うための協議会を創設する等の措置を講ずることを内容とするサイバーセキュリティ基本法の一部を改正する法律案について本年三月九日に閣議決定し、今国会に提出したところである。

五の2について

 サイバーセキュリティに係る人材の育成については、政府としても重要な課題であると認識しており、サイバーセキュリティ対策を担う専門人材の育成を抜本的に強化するため、サイバーセキュリティ基本法及び情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律(平成二十八年法律第三十一号)により、新たな登録制の国家資格として情報処理安全確保支援士制度を創設し、現在、経済産業省及び独立行政法人情報処理推進機構が、その周知と普及拡大に努めているところである。

五の3について

 政府としては、民間事業者によるサイバーセキュリティ対策への投資を促進することが重要であると認識しており、一定のサイバーセキュリティ対策を講じたデータ連携及び利活用による生産性向上の取組を支援する税制を今年度に導入したところであり、同税制において、サイバーセキュリティ対策への設備投資も一定の要件の下で対象とすること等、サイバーセキュリティ対策の支援に取り組んでいるところである。

六の1について

 ロボットに関しては、経済産業省と国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構が主催する「World Robot Summit」において、ロボットの競技会や展示会を開催することとしており、世界中からロボットに関わる関係者を集め、それにより研究開発を加速させるような取組を進めているところである。
 また、IT関連については、経済産業省、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構並びにIoT、AI及びビッグデータを用いた先進的なビジネスの創出を加速する目的で設立された官民連携組織である「IoT推進ラボ」の三者が連携して共同研究開発、取引等を活性化させるためのイベントを開催しており、企業、団体等の交流を通じてビジネスの創出を促進する取組を進めているところである。

六の2について

 政府においては、介護保険施設等への介護ロボットの導入支援にも利用可能な都道府県が設置する地域医療介護総合確保基金に対し、当該基金の財源に充てるために必要な資金の交付を行うこと等により、介護ロボットの導入を支援しているところである。

六の3について

 政府としては、平成二十五年度から五か年の事業として「ロボット介護機器開発・導入促進事業」を実施し、介護現場のニーズに基づいて、介護現場の負担軽減等につながるロボットの研究開発を支援してきたところである。
 その際には、厚生労働省及び経済産業省が、平成二十四年十一月二十二日に「ロボット技術の介護利用における重点分野」を公表することにより、重点的に開発を支援する分野を特定するとともに、その後の現場のニーズを踏まえて、重点を置くべき分野について改訂し、平成二十六年二月三日及び平成二十九年十月十二日に公表を行ったところである。

六の4について

 高齢者等を支援する人工知能及びロボットに係る技術の研究開発については、政府としても重要であると認識しており、本年度から三か年の事業として「ロボット介護機器開発・標準化事業」を通じた、高齢者等の自立支援等に資するロボット介護機器の開発の支援等に取り組んでいるところである。

六の5について

 政府としては、ドローン、ロボット等の有用な新技術の実証実験が行いやすい環境を整備することは重要であると認識しており、ロボット及びドローンの研究開発、実証実験等が可能な施設として「福島ロボットテストフィールド」の整備を進めるとともに、同施設内には上面や周囲をネットで覆うことで航空法の規定の適用が除外される飛行場を設けることにより、同法の規定による事前の申請を行うことなく実証実験を可能とする等、手続の簡素化を含めた環境整備を進めているところである。

六の6について

 ロボット開発の推進については、政府としては、「ロボット活用型市場化適用技術開発プロジェクト」により、異なる機種等の間で共通で使うことができるソフトウェアの整備に向けた研究開発を進めているところである。
 また、ロボットの住空間での活用に関するガイドラインについては、官民の関係者が参加する「ロボット革命イニシアティブ協議会」が平成二十八年六月に「生活支援ロボット及びロボットシステムの安全性確保に関するガイドライン」を策定したところであり、政府としてはこの活用を支援している。

七の1について

 自動運転システムの早期の社会実装については、平成二十五年九月十三日の総合科学技術会議(当時)において、「戦略的イノベーション創造プログラム」の対象課題の一つとして「自動走行システム」が選定されたところであり、政府としては、同プログラム等により、公道における実証実験を含む自動走行システムの研究開発を推進している。
 また、警察庁が平成二十八年五月二十六日に策定した「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」、国土交通省が平成二十九年二月九日に講じた車両内の運転者による操作等を必要としない自動運転システムの公道実証実験を可能とする措置等により、自動運転システムの公道における実証実験を一定の安全性を確保しながら円滑に実施することを可能とするための制度整備を行ったところである。
 本年三月二十九日の総合科学技術・イノベーション会議において、「戦略的イノベーション創造プログラム第二期」の対象課題の一つとして「自動運転」が選定されたところであり、政府としては、今後も、関係府省間で連携を図りながら、公道における実証実験を実施する等、自動運転の早期の社会実装に向けて取り組んでまいりたい。

七の2について

 自動運転システムの普及に向けて、可能な限り自動運転システムの共通化及び標準化を進めることが重要であると認識しており、政府としては、「官民ITS構想・ロードマップ二〇一八」(本年六月十五日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)において、「協調領域の取組推進の基盤となる国際的なルール(基準・標準)づくりに戦略的に対応する体制の整備が重要」であるとして、「我が国としての自動運転の将来像を踏まえ、国際的な活動をリードできる戦略づくりを進めていく」としており、官民一体となって国際標準化活動に取り組んでいるところである。

七の3について

 自動運転システム利用中の事故時の責任の所在、交通ルール等の在り方については、「自動運転に係る制度整備大綱」(本年四月十七日高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議決定)において、その方向性が示されたところである。
 例えば、事故時の責任の所在に関しては、自動運転システム利用中の事故により生じた損害についても、従来の運行供用者責任を維持することとしている。
 また、交通ルールに関しては、警察庁において、本年五月に、「技術開発の方向性に即した自動運転の実現に向けた調査検討委員会」を設置し、道路交通法(昭和三十五年法律第百五号)に関連する課題の検討を行っているところである。

八について

 行政分野におけるIT化の推進による効率化等については、「世界最先端デジタル国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」(本年六月十五日閣議決定)において、政府一体となって業務改革を徹底し、手続オンライン化の徹底、添付書類の撤廃、ワンストップサービスの推進に取り組み、国民・企業の時間・労力の無駄を削減するとともに、行政運営の効率化を進めることとしているところである。