質問主意書

第196回国会(常会)

答弁書


答弁書第一三七号

内閣参質一九六第一三七号
  平成三十年六月二十二日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員川田龍平君提出ニホンウナギの生息地保全、資源回復のための河川環境保全と再生に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出ニホンウナギの生息地保全、資源回復のための河川環境保全と再生に関する質問に対する答弁書

一について

 河川管理は、御指摘の「ニホンウナギの生息地の保全・再生」のみを目的として実施されているものではないが、国土交通省において、全ての河川における川づくりの基本として、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観を保全又は創出するために河川管理を行う「多自然川づくり」を推進しており、ニホンウナギを含む水辺の生態系の保全を目指して行われている事例がある。平成三十年度の国土交通省の予算においても引き続きこの「多自然川づくり」に取り組んでいるところである。

二について

 御指摘の「河川法改正二〇年 多自然川づくり推進委員会」は、ニホンウナギのみならず、河川が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境等の保全又は創出のために河川管理を行う「多自然川づくり」の成果のレビュー及び今後の重点化の方向の検討を目的として設置され、平成二十九年六月に提言を行ったところであり、「不適切」との御指摘は当たらないものと考えている。

三について

 平成二十九年三月に環境省が公表した「ニホンウナギの生息地保全の考え方」(以下「考え方」という。)において、「今後の課題」として、「ニホンウナギの生息環境の保全と回復を進めようとするとき、必要とされる知見は必ずしも十分とはいえない。しかし、このような不確実な状況においても、予防原則と順応的管理の考え方に沿って、それぞれの取組を実地での実験に位置づけながら、対策を進めることは可能である。これらの取組によって新しく得られた知見は、国内外を問わず幅広く集積・共有する必要があり、また、そのための仕組みを構築することが求められる」とされており、これに基づき対応することとしている。

四及び五について

 御指摘の「ニホンウナギの遡上に影響を与えている河川横断構造物」については、その定義が明らかではなく、お答えすることは困難である。

六について

 御指摘の「利用の実態のない水利権」の意味するところが必ずしも明らかではないが、いわゆる慣行水利権(以下「慣行水利権」という。)を有する者は、河川管理者に対し、必要な事項を届け出なければならないこととされており、河川管理者において慣行水利権について把握しているところである。この届出がなされた慣行水利権については、その権利内容が明確ではないものも含むことから、取水施設の改築や治水事業の施行等の機会を捉えて、この慣行水利権を有する者に対し、権利内容の明確な河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第二十三条に規定する許可に基づく水利権への切替えを指導してきたところであり、引き続きこの取組を進めてまいりたい。

七について

 考え方については、環境省から関係省庁及び地方公共団体に対し送付するとともに、報道発表を行っており、その周知に努めているところである。
 また、「ニホンウナギの暮らせる川づくりという視点」の意味するところが必ずしも明らかではないが、国の補助金等の交付対象となる事業は、それぞれの事業目的や事業内容に応じて、必要な要件が定められているところであり、ニホンウナギの生息地保全について、一律に国が補助金等を交付する際の要件とすることは適当ではないと考えている。一方で、「生物多様性国家戦略二〇一二-二〇二〇」(平成二十四年九月二十八日閣議決定)において、「安全・安心と環境が調和した多様な河川空間の保全・再生、豊かな水量の確保と河川本来の変動性の回復、河川の上下流や流域をつなぐことなどで、海域とのつながりも念頭に置きつつ、多様な生物の生息・生育環境を流域の視点から保全・再生する」とされており、その実現に向けた取組を進めていく必要があると考えている。

八について

 独立行政法人水資源機構(以下「機構」という。)は、独立行政法人水資源機構法(平成十四年法律第百八十二号)第二十条の規定において、同法第十二条に規定する業務の実施に当たっては、環境の保全について配慮しなければならないこととされている。また、独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二十九条第一項の規定に基づき、主務大臣が平成三十年二月二十八日に指示した「独立行政法人水資源機構第四期中期目標」において環境の保全について記載するとともに、同法第三十条第一項の規定に基づき機構が同年三月三十日に認可を受けた「独立行政法人水資源機構第四期中期計画」において、「環境保全への取組を着実に実施することにより、事業実施区域及びその周辺の自然環境の適切な保全を図る」とされているところである。