質問主意書

第196回国会(常会)

答弁書


答弁書第六三号

内閣参質一九六第六三号
  平成三十年四月十七日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員川田龍平君提出精神障害者の非自発的入院と障害者権利条約の趣旨に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員川田龍平君提出精神障害者の非自発的入院と障害者権利条約の趣旨に関する質問に対する答弁書

一から三までについて

 御指摘の「障害者の権利に関する条約・・・の趣旨」及び「障害者権利条約の趣旨」の意味するところが必ずしも明らかではないが、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和二十五年法律第百二十三号)では、同法第二十九条第一項の規定に基づく都道府県知事等による入院措置(以下「措置入院」という。)について、同法第二十七条の規定による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者(同法第五条に規定する精神障害者をいう。以下同じ。)であり、かつ、医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると都道府県知事等が認めた場合に行うことができるとされているほか、同法第三十三条第一項又は第三項の規定に基づく精神科病院(同法第十九条の五に規定する精神科病院をいう。)の管理者による入院措置(以下「医療保護入院」という。)について、精神保健指定医(同法第十八条第一項に規定する精神保健指定医をいう。)による診察の結果、その診察を受けた者が精神障害者であり、かつ、医療及び保護のため入院の必要がある者であって当該精神障害のために同法第二十条の規定による本人の同意に基づいた入院が行われる状態にないと判定されたものであること等の要件を満たした場合に行うことができるとされている。また、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(平成十五年法律第百十号)第四十二条第一項第一号に定める決定による入院(以下「入院処遇」という。)は、対象行為(同法第二条第一項各号に掲げるいずれかの行為をいう。以下同じ。)を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、入院をさせて同法による医療を受けさせる必要があると認められる場合に、同法第四十二条第一項第二号に定める決定による通院(以下「通院処遇」という。)は、同項第一号の場合を除き、対象行為を行った際の精神障害を改善し、これに伴って同様の行為を行うことなく、社会に復帰することを促進するため、同法による医療を受けさせる必要があると認められる場合に、いずれも裁判所の決定に基づき行われるものである。このように、措置入院及び医療保護入院並びに入院処遇及び通院処遇は、法律に規定された要件を満たした場合に、法律に規定された手続に従って行われるものであり、また、精神障害の存在のみを理由として行われるものではないことから、いずれも、不法に又は恣意的に自由を奪われないこと、いかなる自由の剥奪も法律に従って行われること及びいかなる場合においても自由の剥奪が障害の存在によって正当化されないこと等を規定する障害者の権利に関する条約(平成二十六年条約第一号。以下「障害者権利条約」という。)第十四条の規定に違反しないと考えている。

四について

 一から三までについてで述べたとおり、政府としては、措置入院及び医療保護入院並びに入院処遇及び通院処遇は、障害者権利条約第十四条の規定に違反しないと考えており、御指摘の「一般的意見第一号」又は「十四条ガイドライン」を受けてこの考え方を変更する予定はない。

五について

 御指摘のような仮定に基づくお尋ねについてお答えすることは差し控えたい。

六及び七について

 御指摘の参考人の御指摘の発言にあるような日本政府の提案は、障害者権利条約の交渉の過程において障害者権利条約第十四条に関連して行ったものであるが、当該交渉過程においては、御指摘の「拷問等の禁止(障害者権利条約第十五条)や不可侵性の保護(同第十七条)に結実した議論」に限らず、同意に基づかない強制治療及び強制入院が、ごく例外的な場合であって、また、障害の存在そのものを理由とするのではなく、自傷他害のおそれがある場合等には、適法に行われ得ることについて、おおむね意見が収れんしたものと認識している。このため、「障害者権利条約第十四条についての政府解釈は妥当ではない」との御指摘は当たらない。