質問主意書

第196回国会(常会)

答弁書


答弁書第四八号

内閣参質一九六第四八号
  平成三十年三月三十日
内閣総理大臣 安倍 晋三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿

参議院議員藤末健三君提出奨学金返還者の負担軽減に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。



   参議院議員藤末健三君提出奨学金返還者の負担軽減に関する質問に対する答弁書

一について

 お尋ねの「奨学金の返還負担の重さを理由とする」の具体的に意味するところが明らかではないため、お答えすることは困難である。

二について

 独立行政法人日本学生支援機構(以下「機構」という。)においては、返還期限猶予制度等について、ホームページのほか、奨学金の貸与期間の終了時に貸与を受けた者全員に配布する「返還のてびき」や返還の開始日の直前に奨学金の返還を要する者に配布する文書等に掲載したり、各高等学校等が生徒、保護者及び教員等を対象として開催する奨学金の説明会等に、奨学金制度の理解を促進するためのスカラシップ・アドバイザーを派遣して奨学金の返還等の資金計画を含めた適正な奨学金制度の利用等について説明する等して、奨学金の貸与を受けた者等に対し周知を図っていると承知している。
 政府としては、今後とも、機構において、返還期限猶予制度等が奨学金の貸与を受けた者等に対して適切に周知されるよう、文部科学省において促してまいりたい。

三について

 平成二十九年四月から導入された所得連動返還方式(以下「本方式」という。)は、文部科学省の「所得連動返還型奨学金制度有識者会議」において平成二十八年九月に取りまとめられた「新たな所得連動返還型奨学金制度の創設について(審議まとめ)」(以下「審議まとめ」という。)を踏まえて設けられたものであるところ、審議まとめの「四.新たな所得連動返還型奨学金制度の設計」の「(九)返還期間」において「返還期間については、・・・返還完了又は返還不能となるまでとした場合の方が、・・・三十五年間又は・・・六十五歳まででその後の返還を免除するとした場合と比較して、回収額が多く確保されることが予測された。現行制度においても、年限や年齢によって返還途中で返還を免除する仕組みは設けられておらず、返還免除を行うためには法律改正が必要となることから、平成二十九年度からの導入は困難である。このため、新所得連動返還型奨学金制度においても、現行と同様に、返還期間は返還完了まで又は本人が死亡又は障害等により返還不能となるまでとすることが適当である。」との指摘がなされたこと等を踏まえ、本方式については、お尋ねの「最長返還期間を定め、これを超えたら債務残高が全額免除される仕組み」とはしていない。
 また、御指摘の「既に返還を開始した者」については、審議まとめの「四.新たな所得連動返還型奨学金制度の設計」の「(二十)既に返還を開始している者等への適用」において「新所得連動返還型の適用を認める場合の課題を踏まえると、当面は減額返還制度等の柔軟な活用により負担軽減を図ることが望ましい。」との指摘がなされたこと等を踏まえ、減額返還制度の充実を行い、本方式を適用しなかったところであり、また、御指摘の「有利子奨学金」については、審議まとめの「四.新たな所得連動返還型奨学金制度の設計」の「(二)奨学金の種類」において「有利子奨学金については、返還期間が長期化した場合に利子負担が大きくなるといった課題があり、より慎重な検討が必要である。このため、まずは無利子奨学金から先行的に導入することとし、有利子奨学金については、無利子奨学金の運用状況を見つつ、将来的に導入を検討することが適当である。」との指摘がなされたこと等を踏まえ、現時点においては本方式を導入していないところであって、お尋ねの本方式の「適用対象の拡充」については、今後必要に応じて検討してまいりたい。

四について

 税額控除の措置については、奨学金の返還が特に困難となりやすいと考えられる低所得者層にとってその効果は限定的である等の課題があり、現時点においては、お尋ねのような制度を導入することは考えていない。