質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第二一二号

カジノ解禁の必要性とIR実施法案の制度設計に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月十九日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   カジノ解禁の必要性とIR実施法案の制度設計に関する質問主意書

 平成二十八年十二月、第百九十二回国会において「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(以下「IR推進法」という。)が成立した。政府はIR推進法の規定に基づき、特定複合観光施設区域整備法案(以下「IR実施法案」という。)を提出しているが、カジノ解禁の必要性や是非を始めとして、導入に際する制度設計に関し、多くの疑義が指摘されている。
 これに関連し、以下の通り質問する。

一 入場料の水準について、政府の有識者会議における昨年七月の「取りまとめ」では、IR推進法の国会審議を踏まえ、安易な入場抑止を図りつつ、日本人利用客等に過剰な負担とならないよう、金額を定めるべきとされていた。
 当初、国内居住者のカジノ入場料を二千円にするとの政府案が報道されていたが、最終的に六千円となった経緯、また、六千円という額の根拠を示されたい。

二 カジノ施設の面積制限について、IR推進法の発議者は、「カジノ単体を認めるのではない」という説明をしている。この説明からすれば、カジノはIRのごく一部である、という位置付けになるのが自然ではないかと考える。一方、IR実施法案におけるカジノ面積制限は、「ゲーミング区域」をIR施設の延床面積の三%とすることのみで、絶対値による上限規制は設けないこととされている。この「ゲーミング区域」を基準とするのは、シンガポールの例を参考にしていると承知しているが、なぜ、カジノ施設の延床面積を規制しないのか。この規制方法は、大規模なカジノが設置されることを可能にするものであり、規制が不十分であると考えるが、政府の見解を示されたい。

三 政府は現在、「EBPM」というエビデンスに基づいた政策立案を進めようとしている。IR推進法では、カジノ解禁の目的として、「観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資する」ことが掲げられているが、これらの目的がカジノ解禁で達成されることを、エビデンスに基づき説明できることが必要と考える。
 カジノ解禁を目指すに当たり、エビデンスとして示すべきものの一つとして経済効果が挙げられると考えられるが、衆議院での議論において、経済効果の試算を行っていないことが明らかとなった。経済効果が明らかでない中で、シンガポールでうまくいったからといって、前提条件が異なる日本でもIRをつくれば観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資する、と断定することはできないのではないか。一定のモデルに基づくなどして経済効果を試算し、エビデンスを示す必要があると考えるが、政府の見解を明らかにされたい。

四 日本政府観光局の推計によれば、平成二十九年の海外からの訪日外客数は二千八百六十九万人に達し、過去最高となっている。航空路線の拡充や査証要件の緩和などにより、順調に外国人観光客が増えているのであれば、今、ギャンブル依存症などの弊害が発生するおそれがあり、多くの国民が反対しているカジノを設置しなくてもよいのではないか、と考える。
 外国人観光客数が着実に伸びている中で、副作用の大きいカジノ解禁を行う必要性について、政府の考えを示されたい。

  右質問する。