質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第二〇四号

文部科学省の動物実験基本指針の運用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月十九日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   文部科学省の動物実験基本指針の運用に関する質問主意書

 大学及び文部科学省の所管する研究機関等が行う動物実験に関しては、文部科学省が「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」(文部科学省告示第七十一号。以下「基本指針」という。)を定めている。しかし、あらゆる判断を各研究機関にゆだねる自主規制の形がとられているため、実験動物福祉への配慮に関する状況及び動物実験委員会の審査能力等について、研究実施機関のあいだでばらつきがあるのではないかとの声がある。動物実験委員会に関し、いわゆる質の担保が必要と考えられるが、その前提として国が基本指針の各項目について、どう運用することが適切と考えているのかが明らかになっていない問題もあると考えられる。基本指針の運用に際し、機関間で解釈や運用に大きなばらつきがあってはならず、最低限の質は担保されるべきとの観点から、以下質問する。なお、見解を問う質問について、見解が文書により明文化されている場合には、その文書名を併せて示されたい。

一 各研究機関等における基本指針の運用について、国としての詳細な見解を明文化した文書(いわゆるQ&Aや解説等の通知、ガイダンス文書等に該当するもの)は存在するか。

二 動物実験計画書にどのような内容を記載すべきか、また、動物実験委員会は動物実験計画書に書かれた各項目の内容をどのように審査すべきか、基本指針には詳細が書き込まれていない。委員長及び委員の動物福祉に関する見識や意識が低ければ十分な審査が行われるはずはなく、動物の愛護及び管理に関する法律における「3Rの原則」に則って審査すべきとの一般原則を示すだけでは明らかに不十分である。動物実験委員会の審査では、具体的に動物実験計画のどの部分をどのように審査すべきと国は考えているか。

三 3Rの原則から考えて、動物実験計画書の審査ではまず、動物を用いることが妥当なのか、つまり、インビトロ試験や人由来材料を用いた研究等、動物を用いない方法で研究することはできないのかをまず審査するべきと考えるが、政府の見解を示されたい。

四 動物を用いる研究に至ることが妥当なのかどうかを判断するために、動物実験計画書では先行研究やインビトロ試験の結果等、科学的根拠をまず示す必要があるのではないかと考えられるが、現状ではそうなっていない。この点について、国として方向性を示していないのか。

五 動物実験委員会の質の担保は、動物実験委員会の委員の能力や意識に大きく依存するものと思われるが、基本指針が定めているのは委員の要件だけである。動物実験計画書の審査をどう行うべきかについて、動物実験委員会委員向けの具体的な教育・訓練を国として行っているか。

六 基本指針の「第2 研究機関等の長の責務」の「4 動物実験計画の実施の結果の把握」に定められている「動物実験計画の実施の結果」について、(1)報告を行う主体に、動物実験責任者は含まれているか、(2)具体的にどういった項目を報告すべきと国は考えているのか、(3)項目の詳細について、国はこれまでに見解を示しているか、それぞれ明らかにされたい。

七 複数の研究機関等の研究者によって行われる共同研究の場合や、動物実験のみを委託するような場合、動物実験計画書の審査はどうあるべきか。共同研究のあり方や委託先の選択または委託自体が妥当なものであるかどうか等を含め、動物実験を実施する機関のみで動物実験委員会の審査が行われるのでは不十分なのではないか。共同実験や動物実験のみの委託の際の動物実験計画書の審査はどうあるべきかについて国として見解を明らかにしているか。

八 動物実験実施者もしくは責任者の利益相反について、基本指針には何ら記載がない。企業等との利益相反の申告や研究費の出所について各機関はどのように対応するべきと国は考えているのか。また、これまで文書等にて見解は示しているか。

九 研究機関等の長もしくは動物実験委員会の委員長又は委員が自ら動物実験実施者もしくは責任者である場合や、研究に強く関与する立場である場合の動物実験計画書の審査について、どう扱うべきと国は考えているのか。中立公平な審査のためには、自らの動物実験計画を自ら審査し承認するようなことがあってはならないのではないか。この点について、これまで国は文書等にて見解を示しているか。

十 最低限どういった内容を情報公開するべきかについて、国が詳細を示した文書等は存在するか。例えば、実際に使用された動物数を算出できない延べ日数換算で公表をしている機関等が存在するが、これは国立大学法人動物実験施設協議会及び公私立大学実験動物施設協議会の「動物実験に関する情報公開に関する更なる取組について」において、動物数を「毎年の特定日の飼養数あるいは一日当たりの平均飼養数。マウスとラットでは二桁の概数」としていることに起因する問題である。一般市民がまず知りたいと考えるのは、実際にどれだけの動物が犠牲となっているのかであり、諸外国では使用数ベースの統計が公表されている。民間団体の自主基準に任せるのでは不十分であり、情報の公開方法を是正させるためにも、国として見解を示す必要があるのではないか。

十一 報道や研究機関自らの公表によって、動物実験計画書を提出せずに動物実験が行われた違反事例がこれまで複数あることが判明しているが、基本指針には違反した者に対する処罰等についての定めがない。近年、研究機関等によっては、機関内規程に処罰を盛り込んでいる事例が見受けられるが、今後、全国で処罰の程度に格差が生じていく恐れもある。違反者に対する処罰等に関し、国としてどう考えているのか。また、これまで文書等で見解を示したものは存在するか。

  右質問する。