質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一九五号

ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月十九日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する質問主意書

 昨年提出した、「ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する質問主意書」(第百九十三回国会質問第一二一号)に対する答弁書(内閣参質一九三第一二一号)が閣議決定されてから、約一年が経過している。この間のワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策に関する取組みを踏まえ、以下のとおり質問する。

一 総実労働時間短縮のための取組みについて

1 長時間労働の是正
(1) 働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(以下「働き方改革推進法」という。)による改正後の労働基準法に定める時間外労働の上限規制については、全ての労働者を対象とし、新技術や新商品等の研究開発の業務については、一般則を適用するものとし、自動車運転の業務と工作物の建設等については、早期に一般則の適用を実現するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) 働き方改革推進法による改正後の労働基準法に定める七百二十時間の年間上限については、休日労働を含むものとするべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(3) 昨年三月に一般社団法人日本経済団体連合会と日本労働組合総連合会との間で合意に達した「時間外労働の上限規制等に関する労使合意」において、「「特別条項」を適用する場合でも、上限時間水準までの協定を安易に締結するのではなく、月四十五時間、年三百六十時間の原則的上限に近づける努力が重要」とされた趣旨を周知徹底し、また、新たに定められる、「特別条項付三六協定を締結する際の様式等を定める指針」は、当該趣旨の実現に資する内容とするべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(4) 労働時間の実態を確実に把握することが重要であることに鑑み、昨年一月に厚生労働省が策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」や今国会で成立した働き方改革推進法による改正後の労働安全衛生法に定める労働時間の状況把握義務を事業主に対して周知するとともに、労働時間の実態を把握していない事業主に対する指導を徹底するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(5) 取引慣行の見直しについては、企業間のみならず国全体の取組みとするべきで、官公庁からの発注を含む取引プロセスなどの取引慣行の見直しを徹底するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(6) 診療報酬改定に係る厚生労働省告示及び疑義解釈通知の前倒しや新診療報酬適用時期の繰り延べ等、診療報酬改定のプロセス及びスケジュールの見直しについて、喫緊の課題として真摯な対応・検討を行うべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(7) 月六十時間を超える法定時間外労働に対する法定割増賃金率の五十パーセント引上げ措置については、中小企業への適用を早期に実現するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(8) 年次有給休暇の最低付与日数を少なくとも十五日以上とするとともに、年次有給休暇を十日取得することで希望する誰もが二週間連続して休むことができるよう、使用者の責任で、職場ごとに各人の年次有給休暇の取得日程を調整させることを義務付けるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 勤務間インターバル
 勤務間インターバルについては、健康確保の観点から全ての労働者に導入するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
3 裁量労働制・高度プロフェッショナル制度等
(1) 高度プロフェッショナル制度は、長時間労働につながる懸念が濃厚であり、また、裁量労働制以外に新たな制度は必要ないと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) 労働者の健康管理の観点から、柔軟な働き方が過重労働につながらないよう、一定時間の休息の確保や深夜労働の回数制限等、健康確保措置の拡充を行うべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

二 生活との調和がより可能となる柔軟な働き方の促進について

1 介護支援の充実
(1) 法定の介護休業期間は、現行の通算九十三日から一年以上へと延長するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) 介護休業中の社会保険料について、育児休業中の社会保険料と同様に、労使ともに免除するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 育児支援の充実
(1) 育児短時間勤務制度の対象となる子の年齢を小学校低学年まで引き上げるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) 交替制勤務による製造業務については育児短時間勤務制度の適用除外となり得るが、企業が様々な職場事情に応じて育児短時間勤務制度を導入・運用することができるよう、育児短時間勤務制度の対象となる従業員の要件を緩和するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(3) 病児・病後児保育事業について、医療機関併設型施設への助成の拡充、保育所等における安静室、看護師、担当保育士の確保、訪問型病児保育の拡充等の支援体制を早急に整備し、また、病児・病後児保育のより一層の充実に向けて、利用者の視点に立った利便性の飛躍的向上を図るべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
3 障がい児・障がい者の保護者の仕事と家庭の両立支援
(1) 障がい児・障がい者を支えながら働き続けられる、充実した社会支援体制を整備するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) 障がい児の通学等に関する移動支援について、居住地にかかわらず支援を利用できる体制を整備する観点から、個別給付化するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(3) 医療的ケア児について、その保護者や児童が保育園の利用や学校への通学を希望する場合は、受入可能となる体制を整備し、また、家族介護者の一時的な休息のための支援(レスパイトケア)を推進するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(4) 医療的ケア児が保育園や学校で受ける訪問看護について、公的医療保険の給付対象とするべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
4 柔軟な働き方・雇用型テレワーク
(1) 雇用型テレワーク(在宅勤務、サテライトオフィス等)の促進において、柔軟な働き方が労働者の長時間労働や健康被害等につながらないよう、今年二月に厚生労働省が策定した「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」に基づき、安全衛生管理、適正な労働時間管理及びセキュリティ保護を徹底するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(2) 前記二の4の(1)のガイドラインにある「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備の留意」について、事業主が実際の住宅事情に沿った対応ができるよう、作業環境の確保に関して、具体的な留意点を同ガイドラインに明記するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
(3) 自営型テレワークについて、現在でも取引や働き方に問題が少なくないことから、取引の適正化に向けた措置を講ずるとともに、家内労働法の適用拡大もしくは新法の制定について検討するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

  右質問する。