質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一九四号

児童虐待防止対策に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月十八日

藤末 健三   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   児童虐待防止対策に関する質問主意書

 児童相談所への児童虐待相談件数は、平成二十八年度で十二万件超、児童虐待による死亡事件数は、平成二十七年度で心中を除き四十八例五十二人となっている。これらの状況に対応するため、政府は、平成二十八年に児童福祉法等を改正して児童の権利擁護を明確化するとともに、児童虐待の発生予防から自立支援まで一連の対策強化のための措置を講じた。さらに平成二十九年には児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律を改正し、児童等の保護についての司法関与を強化する等の措置を講じた。
 しかしながら児童虐待は依然として多発しており、本年三月には目黒区で虐待による女児死亡事案(以下「本事案」という。)が発生した。本事案は、本年一月に家族が香川県から目黒区へ転居したことに伴い、香川県の児童相談所から目黒区を管轄する品川児童相談所へと移管されたものの、品川児童相談所は、家庭訪問及び小学校入学説明会においても女児の姿を確認するに至らなかった。両児童相談所間で危機意識の共有がされておらず、転居に伴う児童相談所間の情報共有の在り方が問題視されているところである。
 このような事件を防ぎ、子どもの心身の健全な育成を図る観点から、以下質問する。

一 厚生労働省は、平成二十八年四月一日に通知「児童虐待への対応における警察との情報共有等の徹底について」を発出し、警察と児童相談所間での迅速かつ確実な情報共有を求めている。また、平成二十九年の衆議院厚生労働委員会における児童福祉法及び児童虐待の防止等に関する法律案に対する附帯決議の十では、「児童虐待対応が必要な家庭に関する情報について、児童相談所と警察や医療機関等が全件共有できるよう必要な検討を行うとともに、転居時の対応や今後の政策立案にも活用すること」とされた。全件共有を実施している茨城県、愛知県及び高知県の事例を参考に、速やかに全国の自治体で全件共有を進めるべきと考えるが、全件共有の現状に対する認識及び全国の自治体における全件共有の実施に向けた検討状況を示されたい。

二 児童虐待防止には、市町村、医療機関、学校、児童福祉施設、警察等関係諸機関の連携強化が不可欠である。その連絡調整を担い支援拠点となる要保護児童対策地域協議会は、平成二十九年二月時点でほぼ全ての市町村に設置された。本事案のような事態を回避するためにも、要保護児童対策地域協議会のより一層の活用及び関係機関の連携強化が必要と考えるが、政府の見解と今後の取組を示されたい。

三 本事案を受け、本年六月十三日、東京都は厚生労働省に対し、「児童の安全確保について(緊急要望)」を提出し、児童相談所が虐待による相談対応をしている児童が転居する際の自治体間の情報共有体制を強化することを求めた。政府は、本事案の情報共有の問題点についてどのように分析し、今後の自治体間の情報共有体制の強化をどのように進めていくか、見解を示されたい。

  右質問する。