質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一八一号

改正農薬取締法の運用に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月十七日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   改正農薬取締法の運用に関する質問主意書

 本年六月八日、農薬取締法の一部を改正する法律が成立し、同月十五日に公布された。同法による改正後の農薬取締法(以下「改正農薬取締法」という。)の目的には農薬の安全性の確保が新たに掲げられ、国際的動向等を踏まえ、定期的に安全性等の再評価を行う制度も導入されることとなった。
 農薬は、環境や人の健康に大きな影響を与えることから、使用やばく露を減らすことや、農薬に依存しない農業の推進が国際的に推奨されている。その顕著な例として、二〇一二年十一月、米国の小児科学会は、子どもたちが日常的に農薬にさらされており悪影響を受けるおそれがあるため、子どもたちの農薬へのばく露を減らすように求める声明を公表したことが挙げられる。
 日本も「気候変動に関する国際連合枠組条約」や、「生物多様性条約」、「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」など予防原則を基本とする条約を批准しており、環境影響が懸念される農薬の規制においても、予防原則は重要な柱の一つと位置づけられるべきである。
 以上の観点から、改正農薬取締法の運用に関して、以下、質問する。

一 第四次環境基本計画(二〇一二年四月二十七日閣議決定)は、「環境影響が懸念される問題については、科学的証拠が欠如していることをもって対策を遅らせる理由とはせず、科学的知見の充実に努めながら、予防的な対策を講じるという「予防的な取組方法」の考え方に基づいて対策を講じていくべきである」としている。改正農薬取締法第四条に定める農薬の登録拒否事由として、「被害が生じるおそれがあるとき」、「被害が著しいものとなるおそれがあるとき」等が挙げられているが、これらの「おそれ」の有無は前記第四次環境基本計画にいう「予防的な取組方法」によって判断されるのか。

二 EUでは、予防原則に基づき、浸透性があるネオニコチノイド系農薬について暫定的に使用を禁止し、科学的な評価を行った結果ネオニコチノイド系農薬の使用を全廃(温室内を除く。)することとした。改正農薬取締法では、法の目的に、農薬の品質の適正化だけでなく、安全性の確保も含まれた。有害性の評価により有害性が明らかになるまで農薬の使用を認めるのではなく、「予防的な取組方法」として、有害性の評価が終わるまで暫定的に農薬の使用を制限できるよう省令や少なくとも指針で定めるなど、改正農薬取締法の運用のしくみを検討するべきではないか。

三 ネオニコチノイド系農薬は、すでにEU以外の多くの国でも使用が規制されているにも関わらず、日本ではいまだに使用が規制されていない。日本と欧州の農法の違いは以前から指摘されていたが、ネオニコチノイド系農薬についてのリスク評価をこれまで行ってこなかった理由を、EU以外のネオニコチノイド系農薬の使用を規制した国々との比較から明らかにされたい。

四 政府が承知している、国内におけるネオニコチノイド系農薬についてのリスク評価に資する調査や研究について、その内容の概要を明らかにされたい。

五 最新の国際的な科学的知見では、農薬に発達神経毒性や、発達免疫毒性、内分泌かく乱作用があることが指摘されていると承知している。具体的にはEUにおいて、内分泌かく乱作用がある物質を含む農薬の有効成分は、閉鎖された系やヒトとの接触を排除した条件で使用され、かつ食品及び飼料中の残留物が〇・〇一㎎/㎏を超えない場合に限って、承認がなされる。
 平成三十年六月七日の参議院農林水産委員会において農林水産省から「試験要求として発達性神経毒性試験を追加する検討を始めている」旨の答弁があったところだが、発達免疫毒性、内分泌かく乱も含め、試験成績を提出するよう製造業者に対して求めていくことについて、現在の検討状況を明らかにされたい。また、試験成績からどのように規制対象の農薬を特定するかについても、現時点での検討状況を明らかにされたい。

六 改正農薬取締法に定められた農薬の安全性等の再評価の実施にあたっては、EUにおいて規制対象となっているネオニコチノイド系の三農薬(イミダクロプリド、クロチアニジン、チアメトキサム)については使用量が比較的多いことから、優先的に再評価を行うということが、前記参議院農林水産委員会における農林水産大臣の答弁や、本年七月六日の農林水産大臣の記者会見で言及された。再評価については、おなじネオニコチノイド系農薬で前記三農薬よりも使用量がはるかに多く、かつ有用生物への影響等が懸念されるジノテフランも優先的に再評価を行うと理解してよいか。

七 農林水産省消費・安全局長及び環境省水・大気環境局長通知「住宅地等における農薬使用について」は、前記参議院農林水産委員会において私が指摘したように、地方公共団体やその委託を受けて農薬を使用する自治会や事業者にその存在が十分周知されておらず、まだまだ農薬の危険な使用方法が絶えない。同通知内容の実施を徹底するために、同通知内容を省令化するべきではないか。

  右質問する。