質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一七七号

我が国製造業を担う人材の確保・育成と生産性の向上に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年七月十三日

石上 俊雄   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   我が国製造業を担う人材の確保・育成と生産性の向上に関する質問主意書

一 就業構造の変化への対応について

 第四次産業革命は、これまで別々と考えられてきた技術や産業の融合を加速させることで、「タコツボ」、「タテ割り型」で流動性の低い就業構造や産業構造を根底から変革する可能性があり、その変化に個々人が対応するため、生涯にわたる学び直しや企業内における能力再開発が、我が国の産業競争力強化の観点から極めて重要になっている。しかし、現場では、業務多忙による時間不足や指導者不足のほか、職場風土等、能力再開発を進める上で、まず解決されるべき課題が多い。また、専門性発揮の希望は根強いものの、転職まで望む人は決して多くはないという現実もある。こうした実態を踏まえ、我が国製造業が国際競争力を抜本的に強化し、生産性を飛躍的に向上させるには、真の意味でどのような人材育成が必要かを明らかにすべく、以下のとおり質問する。
1 第四次産業革命に対応した人材育成について、新たに必要とされる資質や能力・スキル等を示すとともに、年齢や居住地に関わらず広く雇用の安定につながるような、実践的な育成システムを構築するために、産(労使)・官・学(高等教育機関、職業訓練機関等)による具体策の検討を加速させるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 初等中等教育における、プログラミング教育等のIT・データサイエンス教育について、二〇二〇年度からの完全実施を待つことなく、デジタル教材の開発や教育指導の支援体制構築を進めるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
3 独創的なソフトウェアを開発できる高い能力を有する人材の育成を国として強力に推進するとともに、ハードとソフトの両面の技術に通じる複合的な能力をもつ人材の育成を進めるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
4 自らの所属する組織・業界以外の技術者や専門家等、幅広い異分野交流が可能となる機会や場の整備に、国としても注力するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
5 我が国製造業における年齢構成の問題、特に中小企業における著しい高齢化の実態を踏まえ、高度な熟練技能・技術の保有者から若手への橋渡し(技能伝承)について議論を促進するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
6 我が国製造業における、いわゆる「匠の技」を自動化・デジタル化する人材、また、既存の技をブラッシュアップさせ、付加価値向上を探求する人材等の育成環境を、全国の工業高等学校や工業高等専門学校等を中心に整備していくべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

二 企業再編に関わる労働法制の整備について

 近年、企業再編に関する会社法や税制の整備が進められているが、簡易組織再編又は略式組織再編により企業再編手続きを行う場合、企業の再編内容や雇用、労働条件に関する情報が、適切なタイミングで労働組合や労働者に提供されないことが懸念される。また、企業再編時の労働者保護に関して、合併や会社分割の場合は会社法や労働契約承継法があり、労働条件は承継されるが、事業譲渡の場合では、譲渡会社と譲受会社との個別契約によって決定されるため、雇用や労働条件への影響が大きくなる場合があることが懸念される。これらの懸念を踏まえ、以下のとおり質問する。
1 企業再編手続きを行う際には、適切なタイミングで企業の再編内容や雇用、労働条件等に関する情報を労働組合もしくは労働者に提供することを事業主に義務付けるべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。
2 労働者保護の観点から、事業譲渡の際の雇用や労働条件の保護に関する法律を整備するべきと考えるが、政府の見解及び取組みを明らかにされたい。

  右質問する。