質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一三七号

ニホンウナギの生息地保全、資源回復のための河川環境保全と再生に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年六月十四日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   ニホンウナギの生息地保全、資源回復のための河川環境保全と再生に関する質問主意書

 昨今、シラスウナギの歴史的不漁がたびたびニュースで報道されるなど、ニホンウナギの資源減少が懸念されている。二〇一九年五月にはワシントン条約の締約国会議がスリランカで開催される予定であり、ニホンウナギがワシントン条約による保護の対象とされ、国際取引が制限されることが危惧されている。ニホンウナギの生息地保全、資源回復は喫緊の課題であるので、以下質問する。

一 二〇一七年三月に環境省が取りまとめた「ニホンウナギの生息地保全の考え方」において、ニホンウナギの生息地保全に係る国土交通省の取り組みが紹介されているが、二〇一八年度の国土交通省の予算では、具体的にどのような事業により、ニホンウナギの生息地の保全・再生を行うこととしているのか。

二 国土交通省に設置された「河川法改正二〇年 多自然川づくり推進委員会」が二〇一七年六月に「持続性ある実践的な多自然川づくりに向けて」という提言を出しているが、この提言及び同委員会における議論の過程において、環境省の「ニホンウナギの生息地保全の考え方」が全く言及されていないのは不適切ではないか。

三 前記二の提言では、多自然型川づくりの課題への対応方針として、目標の設定、技術の向上・一連の取り組み過程の徹底、人材の育成・普及啓発などが挙げられている。ニホンウナギの生息地保全の取り組みにも同様の課題と対応方針があれば、それぞれ具体的に挙げられたい。

四 「ニホンウナギの生息地保全の考え方」の中では、取水堰や落差工等のように小規模であっても、河川横断構造物の中にはニホンウナギの遡上に影響を与えているものがあるため、水位差が四十センチ程度以上ある状態が恒常化しているものについては、落差の緩和や効果的な魚道の設置等を行うことが望ましいとされている。河川横断構造物については、防災・減災の視点が最優先ではあるが、トータルコストの削減のためにも、集約化や不要な箇所の撤去に長期的な視野をもって対応していくことが必要である。国土交通省水管理・国土保全局の二〇一七年度予算では、「公共施設のストック管理・適正化」として千九百七十九億円が計上されていたが、このうち、ニホンウナギの遡上に影響を与えている河川横断構造物について集約化や不要な箇所の撤去を行う取り組みとして、どの程度の予算がどのような内容に使われたのか具体的に示されたい。

五 国土交通省水管理・国土保全局の二〇一八年度予算では、「公共施設のストック管理・適正化」として二千二十一億円が計上されているが、このうち、ニホンウナギの遡上に影響を与えている河川横断構造物について集約化や不要な箇所の撤去を行う取り組みについて、新たにどのような内容のものが計画されているか。

六 河川における不要な堰等の抽出には、水利権の現状についての実態把握が不可欠である。慣行水利権のうち、利用の実態のない水利権の把握は、全国でどの程度進んでいるのか。また、今後どのように慣行水利権の実態を把握し、対処していく予定なのか。

七 「ニホンウナギの生息地保全の考え方」に基づく取り組みを実効性あるものとするために、関係省庁の担当部署、国土交通省の地方整備局、地方自治体に対して、同考え方で示されたニホンウナギの生息地保全のための考え方と技術的な手法を周知徹底するほかに、「ニホンウナギの暮らせる川づくりという視点」を国が補助金等を交付する際の要件とすることが必要ではないか。例えば、河川の整備に関する事業を行うために社会資本整備総合交付金の交付を受けるためには、当該事業の内容にニホンウナギを含む自然や環境に配慮した川づくりに係る取り組みが含まれることを要件とするという制度へと変更することは考えられるか。

八 独立行政法人水資源機構は、水資源開発水系として指定されている七水系(利根川、荒川、豊川、木曽川、淀川、吉野川、筑後川)において、ダム、用水路等の建設及び管理等を行っているが、同機構が事業や業務を行う際には、ニホンウナギを含む自然や環境に配慮した川づくりに係る取り組みを併せて行うことを義務付けることが必要ではないか。

  右質問する。