質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一二五号

気候変動適応への地方の対応に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年六月六日

牧山 ひろえ   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   気候変動適応への地方の対応に関する質問主意書

 平成二十七年十一月に閣議決定された「気候変動の影響への適応計画」は、全国的な施策の方向性を定める内容が中心となっている。しかしながら、気候変動の影響と適応策は地域ごとに異なるため、地域に即した実効的な適応策を策定し、実施することが課題となる。
 以上の認識を前提に、以下質問する。

一 気候変動の影響への適応策の策定及び実施には、予算の裏付けが欠かせない。特に地方公共団体に対し国が予算をつけないと、適応策の実効性が担保されるのか疑念が残る。その一方で、国の財政赤字が続く中、今国会で成立した気候変動適応法が施行された場合、同法に基づく気候変動への適応策という名目で、必要性の高くない公共事業などの予算獲得が進められる懸念が指摘されている。
 こうした懸念を払拭するため、まずは我が国における適応策の策定及び実施に必要となるおおよそのコストを試算するべきではないか。現行の「気候変動の影響への適応計画」に基づく適応策を実施するための、平成三十年度予算額を併せて明らかにされたい。

二 気候変動適応法案の策定に向けた各省協議の資料では、経済産業省が環境省に対し、気候変動の影響への適応策にエネルギー対策特別会計の予算を使わないことを明確化させている。石油や石炭の燃焼による温室効果ガスの発生が気候変動の一因となっていると考えるならば、エネルギー対策特別会計の予算を適応策に使えるようにすべきではないか。政府の見解を問う。

三 新聞社が実施した都道府県と政令指定都市を対象とした調査では、地方公共団体の適応に関する計画を策定・実行する上で不足している要素を問う質問への回答として「マンパワーとしての人員」(三十四%)や「専門的な職員」(二十八%)が挙げられており、人材不足を露呈している。
 気候変動適応法では、都道府県及び市町村に地域気候変動適応計画を策定する努力義務を課しているが、地方公共団体では専門知識を持つ職員が不足しているため、地域気候変動適応計画の策定は困難を伴うことが想定される。地方公共団体が専門性ある人材を確保できるようにするため、政府はどのような施策を検討しているか。

四 前記の専門知識を持つ職員の不足への対策や、より効果的な適応策の実施のため、市町村単位ではなく、気候変動の影響が共通する地方公共団体が連携して地域気候変動適応計画を策定することを認める柔軟な対応も有効と思われるが、政府の認識如何。

五 地方公共団体における適応に関する計画の策定状況は、平成三十年五月現在、全四十七都道府県中四十三都府県、全二十政令指定都市中十九政令指定都市に上る。その他市町村や東京二十三区でも計画を策定している例がある。しかし、これらのほとんどは既存の行政計画に適応策の重要性を記載しているものに留まっている。
 気候変動適応法に基づく新制度においては、地域気候変動適応計画をより充実させる契機とするため、地域気候変動適応計画を定期的に評価する等の施策も必要ではないかと考えるが、政府の見解如何。

  右質問する。