質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第一〇五号

医療経済研究機構が厚生労働省より受託した「薬剤使用状況等に関する調査研究」によって指摘されたバイオシミラーの諸外国の使用状況に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年五月九日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   医療経済研究機構が厚生労働省より受託した「薬剤使用状況等に関する調査研究」によって指摘されたバイオシミラーの諸外国の使用状況に関する質問主意書

 厚生労働省は、例年、諸外国の薬剤使用状況を調査し、医薬品に係る制度改革の実態・取り組み、医療経済的評価手法の導入状況、適応外薬の使用実態及び保険適用の状況を把握し、わが国の今後の薬剤使用の一層の適正化に向けた価格システムのあり方等を検討するとともに、薬局の役割、その評価の在り方等について検討・考察するための基礎資料を収集していると理解し、この調査の意義について高く評価しているところである。また、二〇一七年度における調査研究(以下「本調査研究」という。)では、とくに後発医薬品使用促進に係る的確な検討のための基礎資料という位置付けで、バイオシミラーについても調査を行ったと聞く。本調査研究が厚生労働省からの受託研究として実施されたことに鑑み、政府の見解について以下に質問するものである。

一 本調査研究は、調査対象となった諸外国の状況を総括し、当該各国の市場動向やステークホルダーの意識などを考察し、「まだバイオシミラーに対して大きく信用を置いていない」と分析している。本調査研究は、後発医薬品使用促進に係る的確な検討のための基礎資料と位置付けられているのであるから、バイオシミラー使用先進国においても未だにバイオシミラーに対する信用が確立していない事実が確認されたことになる。したがって、バイオシミラーについて、我が国における昨今の使用促進政策を反芻し、まずは、国民の信頼構築に力をいれた施策を検討するべきと考えるが、政府の見解如何。

二 そもそも論として、バイオシミラー使用先進国においてすら信用の確立がままならないような製品を、理由もなく強硬に使用促進しようとする我が国の政策は拙速に過ぎる。何故に、バイオシミラーの使用促進を拙速に進めるのかについて政府の見解如何。

三 政府は、こうしたバイオシミラーの使用促進を拙速に進める政策を改めて、バイオシミラーの使用について慎重な判断をされるべきと考える。たとえば、国民一般にバイオシミラーへの信用が高まるまでは、バイオシミラーへの変更と低分子な化学合成品である後発医薬品への変更とは明確に区別し、バイオシミラーへの変更については国民の信頼を得るよう努力するなどの慎重な手順を含む対応をするように医師等に通達するなどの措置が求められると感ずるが政府の見解如何。

四 本調査研究では、国別調査の部分報告ではあるが、医師などの医療従事者においても、バイオ先行品とバイオシミラーとの間で品質に差があると思っているものがいると報告しており、バイオシミラーの品質に対する懸念が払しょくされない現状があらわにされている。政府は、ただ単に、バイオシミラーの使用促進を声高に主張するものの、こうした医療従事者の抱く懸念への顧慮を欠いていると指摘せざるをえない。医療従事者においてバイオシミラーの品質に対する懸念が依然として存在することについて、政府は把握し、また、この懸念を払しょくするための施策を検討しているのか、政府の見解如何。

五 米国FDAは、世界最大のバイオシミラー製造企業である韓国のセルトリオン社に対して警告状(Warning Letter)を発行したと聞く。また、FDAは、この警告状との関係性については不明であるが、同社のリツキシマブ及びトラスツズマブに対するバイオシミラー製剤の製造承認申請を許可しなかったという話も聞いている。同社は、我が国で販売されるバイオシミラーの多くを製造していることも鑑みるに、政府もこの事実は把握し、対応策などは検討されているものと信ずる。政府に問うが、FDAが同社の製造プロセスについて警告状を発行したことについて、その事実を把握し、その詳細についてすでに調査を終えた上で、現在、我が国で上市されている同社からの導出品である薬剤について品質上の問題がまったくないと確認しているのかについて明らかにされたい。仮に調査を実施していないのであれば、その理由について明らかにされたい。

六 政府は、バイオシミラーの使用促進をもって我が国の経済成長に利すると考えているとみゆる。しかし、バイオシミラーの開発・製造については、そのほとんどを韓国企業が担っており、我が国の市場においても、韓国等の外国企業からの導出品ばかりである。国産品がないことを鑑みるに、バイオシミラーを使用促進したからといっても、我が国の企業が直接的に利することはないと考える。また、我が国の保険医療には多くの税金が投入されていることを考えれば、バイオシミラーを多用することは、我が国の税金が外国企業の収入として他国に流失することを意味している。バイオシミラーの製造をバイオ産業の中核の一つと位置付けて、経済成長戦略に活用するというのであれば、まずは、国内企業におけるバイオシミラーの開発・製造のためのインフラ整備に多額の投資を呼び込む必要があると考える。バイオシミラーの製造が国内で実施されていない実態を把握し、これに対して「成長戦略」という観点から何らかの施策があるや否やにつき政府の見解如何。

  右質問する。