質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第九六号

憲法第二十五条及び労働基準法第一条と適合するための「高度プロフェッショナル制度」の立法事実の有無等に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年五月一日

小西 洋之   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   憲法第二十五条及び労働基準法第一条と適合するための「高度プロフェッショナル制度」の立法事実の有無等に関する質問主意書

一 労働基準法第一条に定める「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」の趣旨について、同条が「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定める憲法第二十五条とどのような関係にあるかを明らかにしつつ、具体的に説明されたい。

二 安倍総理は本年三月二日の参議院予算委員会において「今回の裁量労働制の議論に関連して、厚生労働省のデータに疑義があるとの指摘を受け、精査せざるを得ない事態となったことは重く受け止めております。(中略)裁量労働制については今回の改正から全面削除し、実態について厚生労働省においてしっかりと把握し直すこととし、その上で議論をし直すという判断を行ったところであります。」と答弁しているところであるが、調査データに疑義がある以上、政府が企図していた企画業務型裁量労働制の対象業務の拡大と、労働基準法第一条に定める「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。」及び憲法第二十五条に定める「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」の趣旨との適合性については、政府としては判断し得ない状態にあると理解してよいか。現時点においても当該対象業務の拡大が労働基準法第一条や憲法第二十五条の趣旨に適合しうるものであると判断する場合はその根拠を示されたい。

三 政府はいわゆる働き方改革法案において「高度プロフェッショナル制度」の創設を盛り込んでいるところであるが、当該制度の対象業務となる労働者における、①過労死基準を超える長時間の残業、②所定の退勤時刻より早期に仕事が終了した日数、③残業時間に応じた残業代を得ているかどうかなどの労働条件の実態について、有意な統計に基づく等の制度の合理性を裏付けるための調査を行っているのか。行っている場合は、その調査の事業名、調査手法、調査結果等について説明されたい。また、その調査について、先にデータに疑義があるとされた裁量労働制に関する調査との異同についても説明されたい。

四 前記三について、仮に政府が「高度プロフェッショナル制度」に関して制度の合理性を裏付けるに足る調査を行っていない、あるいは、その調査データに疑義があるのであれば、当該制度が労働基準法第一条に定める「労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきもの」か否かを判断する根拠を政府は有していないこととなり、当該制度は同法第一条に違反し得るものであるとともに、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」と定める憲法第二十五条を潜脱するものとなるのではないか。政府の見解を示されたい。

  右質問する。