質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第九五号

総務省による「政治的公平の解釈について(政府統一見解)」に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年五月一日

小西 洋之   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   総務省による「政治的公平の解釈について(政府統一見解)」に関する質問主意書

一 放送法第四条第一項においては、放送事業者は放送番組の編集に当たって「政治的に公平であること」を確保しなければならないとされているところ、政府にあっては「政治的に公平であること」への適合性の判断に当たっては、一つの番組ではなく、放送事業者の「番組全体を見て判断する」としてきているが、こうした判断に当たっての考え方と憲法第二十一条が定める言論報道の自由との関係について政府の見解を示されたい。

二 政府は、総務省による平成二十八年二月十二日の「政治的公平の解釈について(政府統一見解)」において、「総務大臣の見解は、一つの番組のみでも、例えば、(中略)といった極端な場合においては、一般論として「政治的に公平であること」を確保しているとは認められないとの考え方を示し、その旨、回答したところである。」としているが、仮に、放送事業者の番組の一つが当該政府統一見解にいう「といった極端な場合」であっても、当該放送事業者の番組全体に関する総合的な判断としては放送番組の編集に当たって「政治的に公平であること」を確保していると認められることもあり得るのではないか。
 すなわち、仮に、当該政府統一見解で示されているように、総務大臣が放送事業者の一つの番組が「選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合」、あるいは、「当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合」と考える場合であっても、総務大臣が当該放送事業者の「番組全体を見て判断」を行った場合は、「政治的に公平であること」の確保に違反しないと判断することはあり得るのではないか。こうした判断があり得ないと考える場合はその理由についても示されたい。

三 政府においては、放送事業者による放送番組の編集が放送法第四条第一項に定める「政治的に公平であること」が確保されているかどうかについては、一つの番組ではなく、放送事業者の「番組全体を見て判断する」としてきていたところ、「政治的公平の解釈について(政府統一見解)」において総務大臣の見解として「一つの番組のみでも(中略)一般論として「政治的に公平であること」を確保しているとは認められないとの考え方を示し」ているのであるから、これは「「番組全体を見て判断する」というこれまでの解釈を補充的に説明し、より明確にしたもの」ではなく、放送法第四条第一項の法規範の内容を変更する解釈変更ではないか。

四 「政治的公平の解釈について(政府統一見解)」にあるように、政府が放送事業者の一つの番組のみで放送法第四条第一項に定める「政治的に公平であること」が確保されているかどうかについて判断する場合において、放送事業者に対する行政指導及び電波法第七十六条に定める無線局の運用停止命令並びに放送法第百七十四条に定める放送の業務停止命令の運用に係る要件は、放送事業者の「番組全体を見て判断する」場合と何か違いがあるのか、これらの行政指導や行政行為の具体的な運用の要件を明らかにしつつ、政府の見解を示されたい。

五 前記一から四について、「政治的公平の解釈について(政府統一見解)」にあるように政府が放送事業者の一つの番組のみで放送法第四条第一項に定める「政治的に公平であること」が確保されているかどうかについて判断できるとする考え方は、憲法第二十一条に違反するのではないのか。憲法第二十一条に違反することは一切あり得ないと考える場合はその理由も示されたい。

  右質問する。