質問主意書

第196回国会(常会)

質問主意書


質問第八九号

平成三十年四月三日に開会された参議院厚生労働委員会における加藤勝信厚生労働大臣の発言に関する質問主意書

右の質問主意書を国会法第七十四条によって提出する。

  平成三十年五月一日

川田 龍平   


       参議院議長 伊達 忠一 殿



   平成三十年四月三日に開会された参議院厚生労働委員会における加藤勝信厚生労働大臣の発言に関する質問主意書

 平成三十年四月三日に開会された参議院厚生労働委員会において、医師法施行規則第二十一条により定むる「処方せんの絶対的記載事項」に疾患名を追加するということについて、加藤勝信厚生労働大臣から「推進する」との印象を与うる発言があったと聞く。以下その真意についてお尋ねするので、政府としての見解を明らかにされたい。

一 医師法第二十二条によれば、医師が治療上薬剤を調剤して投与する必要があると認めた場合には、処方せんを交付しなければならないとしている。同条にいう処方せんの定義とその発行目的について政府の見解を明らかにされたい。

二 健康保険法施行規則及び保険医療機関及び保険医療養担当規則に明記されている処方せんについて、その発行から廃棄までの過程における所有権の所在を時系列で明らかにされたい。

三 医師法第二十二条によれば、処方せんの交付を忌避できる場合として、暗示的効果を期待する場合において、処方せんを交付することがその目的の達成を妨げるおそれがある場合や、処方せんを交付することが診療又は疾病の予後について患者に不安を与え、その疾病の治療を困難にするおそれがある場合などを挙げており、処方せんを交付し、処方薬剤の名称が明らかになることによって、患者の不安を喚起するおそれがあることを認めている。不安喚起等の心理的影響を患者に与えることが大なることを前提としている処方せんの交付に際して、さらに処方せんに疾患名を明記することを医師法施行規則第二十一条に定むる絶対的記載事項として求めることとなれば、不安を増大させ、心理的影響による薬物治療への影響なども少なからず増大するものと考えられる。政府は、処方せんの絶対的記載事項への疾患名の追加を推進するとしているが、不安喚起等の心理的影響を患者に与えることについて、また、患者自身が疾患名の告知を望まない場合について、どのような対策を考えているのか明らかにされたい。

四 処方せんへの疾患名の明記が患者に与える心理的影響が無視できないものと、医師が判断するとなれば、処方せんの交付を忌避するような事例も増大するのではないかと危惧するところであるが、処方せんの絶対的記載事項への疾患名の追加が医薬分業政策に与える影響について政府の展望はどのようなものであるかを明らかにされたい。

五 保険医療機関及び保険医療養担当規則第二十三条に定むる様式第二号又はこれに準ずる様式の処方せんについて、たとえば、疾患名を記載するとして、どの部分に記載すると想定されているのか政府の見解を明らかにされたい。

六 前記五の両様式の処方せんに、たとえば、処方した医師が疾患名を記載することによって、将来的に診療報酬上の評価を与えることは可能なのか、また、両様式の処方せんに限って疾患名の記載を義務づけることは可能なのか政府の見解を明らかにされたい。

七 薬剤師による処方せんの取扱いについては、「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによつて調剤してはならない」と薬剤師法第二十四条に規定している。そもそも薬剤師が疾患名を必要と判断する場合には、医師等に問い合わせることが可能であると理解するが、その理解は正しいのか政府の見解を明らかにされたい。また、可能であるとするならば、医師等は、薬剤師からの問合せに対して真摯かつ丁寧に対応し、疾患名を明らかにすることを正当な理由なく拒否することはできないという理解でよいのか明らかにされたい。

八 薬剤師が、薬剤師法第二十四条の規定により、医師等に疾患名を問い合わせた場合に、医師等が個人情報保護等を理由にして疾患名を明らかにしないことが多数あると聞くところである。処方せんに疾患名の記載を求めることよりも前に、こうした医療専門職間の情報共有の在り方について抜本的な改革が必要ではないかと考える。薬剤師への情報開示について医師等の積極的な姿勢が保証されるようになれば、処方せんを活用するまでもなく、必要であれば医療専門職間で情報共有ができるのであり、前記三で示した患者に心理的影響を与えることへの懸念は払しょくされると思われる。以上について医療専門職間での医療情報の共有化という観点から政府の見解を明らかにされたい。

九 そもそも処方せんは、医師法及び薬剤師法の規定を読む限りにおいては、医薬品交付のための指示書であり、当該指示書に、疾患名や臨床検査値といった個人情報を併載することは想定されていないと思われる。疾患名等の付加的な情報は、医薬品交付のための指示書である処方せんではなく、患者自身の所有するお薬手帳やかかりつけ連携手帳などに患者の同意を得て掲載するか、必要であれば、薬剤師が疑義照会をすればよいものと考える。このように、疾患名等の付加的な情報をお薬手帳などに掲載したり薬剤師が疑義照会したりすることについて政府の見解を明らかにされたい。

  右質問する。